キャリアコンサルティング協議会は国家資格「キャリアコンサルタント」の試験機関および指定登録機関と、国家検定「1級・2級キャリアコンサルティング技能検定」の指定試験機関です。

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2018.02.07学習情報

論文のご紹介「キャリアコンサルタント国家資格の有無が相談満足度に与える影響」

日本産業カウンセリング学会機関誌「産業カウンセリング研究」(2017年 第19巻 第1号)にキャリアコンサルタント国家資格及びキャリアコンサルティング技能検定に関する論文が掲載されましたのでご紹介します。

キャリアコンサルタント国家資格の有無が相談満足度に与える影響
-大学キャリア・センターにおける就職相談場面に着目して-
The Effect of Career Counselors' Qualification on Students' Satisfaction in Counseling
-Focusing on the Counseling in the Career Center of the University-
古田 克利(関西外国語大学)Katsutoshi Furuta (Kansai Gaidai University)
辻 彰彦(京都学園中学高等学校)Akihiko Tsuji(Kyoto Gakuen Junior & Senior High School)
松尾 智晶(京都産業大学)Chiaki Matsuo(Kyoto Sangyo University)

【要約】
本研究の目的は,大学内のキャリア・センターにおける就職相談場面に焦点をあて,相談担当者が保有するキャリアコンサルタント国家資格の有無および水準(未保有-標準レベルのキャリアコンサルタント・技能検定レベルのキャリアコンサルタント)と,学生の相談満足度との関連を検討することであった。分析対象は,地方私立大学10校のキャリア・センターで実施したアンケート調査で得られたデータである。有効回答数は,学生=467部,相談担当者=90部であった。本研究では,キャリアコンサルタント国家資格の有無および水準が学生の相談満足度に与える影響が,相談担当者の相談中の態度(無条件受容,共感的理解,経験開示,および解決策提示)によって説明されるという仮説モデルを構築し,重回帰分析によって検証した。結果,標準レベルのキャリアコンサルタントが相談を担当した場合,学生の相談満足度が有意に高まることはなかったが,技能検定レベルのキャリアコンサルタントが相談を担当した場合,学生の相談満足度が有意に高まることが明らかになった。さらに,その効果は,学生に評価される相談担当者の態度(共感的理解および解決策提示)によって説明されることが示された。
キーワード:キャリアコンサルタント,キャリアカウンセリング,キャリア教育,就職支援

【論文全文はこちら(PDF)

日本産業カウンセリング学会および著者のご厚意により、論文の全文を掲載いたします。無断転用は禁止します。《日本産業カウンセリング学会リンク》

【著者メッセージ】
辻 彰彦(関西カウンセリングセンター兼任講師)
今回の研究によって「技能検定レベルのキャリアコンサルタントが相談を担当した場合、学生の相談満足度が有意に高まることが明らかになり、さらに、その効果は、学生に評価される相談担当者の態度(共感的理解および解決策提示)によって説明されること」が示されました。
このことは、「自己研鑽の成果を見える化する手段のひとつとして技能検定を活用することが可能である」ことが示唆されたと考えます。また同時に、実践家としての私の肌感覚と合致する結果であり、より一層の技能向上に向けた研鑽を積んでいきたい、と気持ちをあらたにしています。「キャリアコンサルティング実施のために必要な能力体系」における「キャリア形成支援者としての姿勢」には、「キャリアコンサルティングは個人の人生に関わる重要な役割、責任を担うものであることを自覚し、キャリア形成支援者としての自身のあるべき姿を明確にすることができるか。キャリア形成支援者として、自己理解を深め、自らのキャリア形成に必要な能力開発を行うことの必要性について、主体的に理解できるか。」とあります。是非、自己研鑽の成果を見える化し、自身の専門的技能の保有を証明する手段として技能検定を活用していただきたいと思います。
キャリアコンサルタント養成講習講師の立場としても、技能検定にチャレンジすることは、現場で役立つ力の涵養につながることだと本研究からも感じ取りました。国家資格を取得された後は、自身の「能力開発」として、技能検定に挑戦されることを念じてやみません。

【協議会メッセージ】
この度ご紹介する論文は、技能検定合格者の能力の優位性を示すものとして注目されるものです。論文のための調査が実施されたのは、キャリアコンサルタントが法制化される前ですが、キャリアコンサルタント制度における能力水準として、キャリアコンサルタントは相談実務の経験がなくても養成講習を受講すれば受験できる「入り口レベル」、2級キャリアコンサルティング技能士は受検に実務経験を有し、1対1の相談が的確にできる「熟練レベル」ということは当時と変わりありません。
キャリアコンサルタントに合格しただけでは実際の相談業務にあたることに不安を感じる方も多いのではないかと思います。そこで合格後も仲間同士で勉強を続けたり、更新講習を受講したりしながら、それぞれの方が出来るところから実務経験を積み、技能士を取得するというのがキャリアコンサルタント制度上の「キャリアパス」となっています。本論文の結果の背景には、2級技能士に合格された方のこのような地道な活動や努力があると言えるでしょう。さらに、学生の満足度は、相談担当者の態度により評価されたということは、相談者一人一人を尊重し、真摯に対応することの重要性を教えてくれるものです。
キャリアコンサルタントは、倫理綱領にもあるとおり、常に資質向上に向けて自己研鑽に努めることが求められています。その一つとして、さらに上位の資格取得を目指していただければと思います。


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