キャリアコンサルティング協議会は国家資格「キャリアコンサルタント」の試験機関および指定登録機関と、国家検定「1級・2級キャリアコンサルティング技能検定」の指定試験機関です。

マンスリーコラム

2016年4月号

キャリアコンサルタント国家資格化に向けて ~キャリアコンサルティング技能士会第2回全国大会を振り返って思うこと~

1.キャリアコンサルティング技能士会第2回全国大会について

本年2月21日(日)に大阪府立大学様との協賛のもと、サテライトキャンパスi-siteなんばにおいて、関西発のキャリアコンサルティング技能士会第2回全国大会を開催しました。大会には、北は北海道から南は沖縄までの全国から、今後のキャリアコンサルティング界を支える技能士会会員並びに標準キャリアコンサルタントの方々総勢207名にお集まりいただきました。技能士会として初の総会を開催した後、引き続いて全国大会を開催しました。大会プログラムでは先ず、企業、大学、需給調整機関等、それぞれの活動領域でご活躍されている1級・2級技能士の皆さまによる延べ6つの事例発表会を開催いたしました。次に、厚生労働省職業能力開発局キャリア形成支援課の伊藤正史課長様をお招きし「キャリアコンサルタント国家資格・登録制度創設の意義と今後の展望・課題~キャリアコンサルタントとこれに関わる方々に期待すること~」と題して、基調講演を行っていただきました。

最後に、伊藤課長様の基調講演の内容を踏まえるかたちで、本大会のテーマである「日本におけるキャリアコンサルティングの現在、そして未来」と題して、シンポジウムを開催しました。シンポジストには、木村周先生(元筑波大学教授、キャリアコンサルティング協議会顧問)、芦田正明先生(㈱ウェルネス研究所所長、日本キャリア開発協会理事)、杉原保史先生(京都大学学生総合支援センター教授、教育学博士、臨床心理士)、山口満事務局長(キャリアコンサルティング協議会)、司会・ファシリテーターには、古今堂靖理事長(関西カウンセリングセンター)と、いずれも日本のキャリアコンサルティング界には欠かせない著名な先生方にご登壇をいただき、シンポジウムを進めていただきました。

伊藤課長様の基調講演は、今回のキャリアコンサルタント国家資格化の背景・意義・今後の展望について理解を深める大変貴重な場・機会となりました。シンポジウムでは、各先生方からの今後のキャリアコンサルタントのあり方について、非常に有意義なお話しをいただき、会場全体が一体となって、今後のキャリアコンサルティングを盛り上げていこうとする空気が醸成され、大盛況のうちに閉会することができました。大会当日にお集まりいただきました全ての皆さまに、この場をお借りして、厚くお礼申し上げます。

さて、私は長年、企業の人事部において人事労務管理に携わって参りました経験から、今、全国大会を振り返って考えますことは、日本における今後のキャリアコンサルティングの進展は、やはり企業内において、いかに活動領域を拡大していけるかが、一つの大きな課題ではないかということです。この観点から、今回のキャリアコンサルタント国家資格化と今後のキャリアコンサルタント、そして技能士の成長に向けて考えてみたいと思います。

2.キャリアコンサルタント国家資格化にあたっての趣旨・背景について

1989年のバブル崩壊から2008年9月のリーマンショックという日本経済の失われた20年間において、多くの企業がリストラを繰り返し、その中で、日本のキャリアコンサルティングは、どちらかといえば、アウトプレイスメントを中心にスタートし進められてきました。それと呼応するかたちで、失業者の再就職支援に向けたハローワーク、サポートステーションといった国による労働力需給調整機関の機能強化、同時に、当時就職難であった新卒採用への対応策として、大学のキャリアセンターの機能強化が図られてきたと考えられます。これらは、再就職、新卒採用にあたってのジョブマッチング(職業紹介)に焦点があてられた施策として展開されてきたといえるでしょう。

しかし現在、少子高齢化・人口減少社会が進行するなか、日本経済の成長を持続的に可能とするためには、従来のジョブ゙マッチングだけではなく、企業内での労働者の適職の選択と、労働者本人による主体的・自立的な職業能力開発を通じた生産性の向上が不可欠になっています。つまり、企業であれば「雇用する人材をいかに育成し、職業能力開発の自信・意欲の向上につながる機会を提供していくか?」が、まさに大きく問われる時代が到来しているのです。

3.今後のキャリアコンサルタント、そして技能士の成長に向けて

これらの環境変化を背景として、キャリアコンサルタントの国家資格化が実現したわけですが、今後は、先ず、国家資格キャリアコンサルタントとキャリアコンサルティング1級・2級技能士との明確な質的差別化が問題になると考えられます。とりわけ技能士は、更なる実践力の向上と自己研鑽によって、名実共に国家資格キャリアコンサルタントの一歩も二歩も先を行く存在として、より高いレベルでの資質向上と、社会での成果・貢献が問われることとなるでしょう。

また、国家資格キャリアコンサルタントは、実際は、まだキャリアコンサルティングの実践にあたってのスタートラインに着いたという位置づけになると思われます。あくまでもキャリアコンサルティングの理論とスキルの入り口付近を習得したレベルに過ぎないといえるかもしれません。理論とスキルの習得のみでは、実社会において、キャリアコンサルティングの実践・普及・技能向上という観点から実力を発揮し、成果・貢献を創出できるプロフェッショナルにはなれないでしょう。

プロのコンサルタントやカウンセラーは、自身が関る企業や学校などの各団体・組織に自己の役割や実践力をしっかりと伝え・理解を得られる質の高いプレゼンテーション力が求められます。また同時に、各団体・組織に対する強いリーダシップやマネジメント力が大きく問われます。これらは、決して理論やスキルの習得に留まらず、様々な社会・組織との健全かつ円滑なコミュニケーションを通じて育まれるものであり、豊富な実践経験を通じて培っていくものであると考えられます。

これらのことを十分に踏まえた上で、一人ひとりのキャリアコンサルタントが、そして技能士が、企業、学校、労働需給調整機関等、それぞれの活動領域において、今後、自身がいかに役割を果たして行くのかをしっかりと考え、その自覚をもって、実社会での実践と向き合っていくことが尚一層強く求められることと考えます。

中山 敬介(なかやま けいすけ)

中山 敬介(なかやま けいすけ)

株式会社JFRオフィスサポート経営企画・総務担当社長スタッフ(㈱大丸松坂屋百貨店から出向)、キャリアコンサルティング技能士会代表副幹事・関西支部幹事、2級キャリアコンサルティング技能士、産業カウンセラー、キャリアコンサルタント(産業カウンセラー協会)、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)、商学修士、日本労務学会会員、経営行動科学学会会員

主な著書・論文
日本経団連出版 「コミュニケーション重視の目標管理・人事考課シート集(P258~P264)」(2012.3)
労政時報別冊選書「最新人事考課制度(P227~P242)」(2011.10)
労政時報 「多面評価制度の活用事例(P29~P45)」(2011.8)
日本労務学会誌 「大丸における戦略と人的資源管理の整合的変化」(2010.10)

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