マンスリーコラム
私のPlanned Happenstance――子育てはキャリア・あそびはキャリアの原点
自分が何をしたいのか、何が好きなのか、結婚しても出産してもわからないままだった私が、どうやって今に至ったか・・について、振り返ってみることにした。
キャリア理論との出会い
2004年に標準レベルのキャリア・コンサルタント資格を取得してから12年。
専業主婦の時の私からは今の仕事をしている姿は全く想像だにできなかったが、今振り返ってみると、まさにキャリア理論で学んだ「Planned Happenstance」そのものだと感じている。
私は大学卒業後、なんとなく教育現場に入り、そこに居心地の悪さを感じて2年で退職、結婚。子どもに関わる仕事は向いていないから今後絶対しない!と決心して専業主婦の道を選んだ。
そして3人の息子に恵まれ、子育てに悪戦苦闘しながらも生活を楽しみ、PTAや子供会の役員などの経験を通じて、子どもが好き!というか人が好き!な自分を再発見、子育てや地域の活動を通して、今までの自分ではない自分を発見して新鮮な驚きを感じた。3人の息子たちが紡ぎだす人間模様や、子どもたちの世界のおもしろさにもはまってしまったのだ。同時に、子育ては自分の思い通りにいかないことの連続で、それが吹っ切れた時から、とても楽に自分の子どもたちと向き合うことができてきた。
子どもが起こす問題を一つ一つ片づけていく間に、肝がすわり、物事の対処能力も鍛えられていったと思う。(母は強し!)また、息子の入院で知り合った友人の幼児教室を手伝ったことで、起業するという選択肢が生まれ、2年後そこを辞めた後、仲間と一緒に幼児のグループ活動を始めた。この活動と同時に、個人的に学習塾も始め、「自営」「コミュニティビジネス」という形で仕事を始めるようになったのだ。
子育て支援のグループ活動を続ける中で、必要に迫られてカウンセリングを学び始め、そこで「キャリアコンサルタント養成講座」にであった。
当初は、いわゆる企業での経験が全くないことに、かなりのコンプレックスを持っており、色々な交流会や大会に出かけても分科会で自分の行くところがないし、「子育て」「女性」などのキーワードもほとんどない、「キャリア教育」も大学生のものであり、主流派にいない自分がひしひしと感じられ、この学びを続けていていいのかと、真剣に悩む時期が続いた。キャリアコンサルタントとしての自信は全くなく、他の人たちが輝いて見えた。
それからは、自分のできる仕事は手当たり次第やってみた。初めての分野でもあれこれチャレンジしてみた。それらがどのように統合されていくのか考えられないままやってみた。大学生、高校生、女性、中高年、そして矯正施設での仕事・・・・等。
大きな影響を受けた理論
そんな中、学びの中で、キャリアとは人生そのものであるということ、偶然のように見える出来事にも必ずその前に何らかのアクションをしているものだ、ということなど、バラバラだと思っていた自分の人生が、キャリアの理論を学ぶことによって、面白いほど集約されて、道筋がついてくるのが嬉しくて、キャリアの学びにのめりこんでいった。以下は、私の心に留まった理論の一部である。
①クランボルツ
Planned Happenstance(計画された偶発性)・ライフキャリア
・人は生涯学習し続けるものであり、キャリアはこうした生涯にわたる学習によって形成される
・予期せぬ出来事はむしろ意図的に作り出すこと
・キャリアの選択肢はいつでもオープンにしておくこと
・失敗も学習の一つであり、そこから学ぶことも多い
・引退はまた同時に別の形で他人のための支援を行うスタートでもある
②サニー・ハンセン
ライフとキャリアの統合「ライフキャリア」(統合的人生設計)
・「自分にも社会にも共に役立つ意義ある仕事」を行う視点に常に立ちキャリア選択を行う
・人生の4つの要素「仕事・学習・余暇・愛」(labor、Learning、Leisure、Love)がバランスよく統合されてこそ「意味ある全体」に
・「どんな生き方がしたいのか」生き方(ライフ)の視点をキャリア概念の根底に
・それぞれの人生役割を組み合わせ、統合することで人生の"パッチワーク"を創造する
・男女の共同・共生を目指すーよいパートナーシップを形成し、相互のキャリアを開発
・グローバル社会において、多様性を認め、相違を大切にし、生かしあい統合する努力
・創造性は違いのある中から生まれる
・仕事を通して社会に貢献し、精神的意味(スピリチュアリティ)を見出すこと
私なりの理論づけ
私は、子どもと関わる活動では、子どもの育ちについて考えさせられ、学習塾では児童期、青年期の発達課題について考えさせられ、キャリアの学びの中で、人間関係力すなわち自我の脆弱性からくる課題を知り、ハンセンの人生の4つの要素を人間の発達段階から捉えてみて、自分なりにキャリア発達の様子を表してみた。
赤ちゃんは生まれてきたら様々な「愛」に育まれて成長していく。幼児の時は未分化な状態であり、生活すべてが「あそび」である。あそびを通して様々なことを学んでいく。成長するにつれて、その時々の状況によってバランスをとれるようになってくる。この場合、「余暇」はむしろ「家庭」「仕事以外のプライベート」と考えてもよいだろう。
これら3つの要素を、バランスよく動かしていけるのが、統合された大人であると考える。
それらは切り離すことができず、お互いが関連を持つものであり、その真ん中に位置するものは、まさに「あそび」(あそび心)であると考えている。ハンドルにあそびが必要なように、人間には大人になっても、あそび【心】が必要だ。そのエネルギーが意欲となり集中力となる。これらの要素のどこかバランスが崩れたら、人は課題にぶち当たる。
活動のベース
この考えに至ってからは自分の中の主軸となるものがようやく明確になった。「あそびはキャリアの原点」。
そして、子どもを産み、育て、子どもからたくさんのことを教えられたこと、その間できた多くの人脈は、現在の私を形作る源だと思う。子育てはキャリアの中断と考えられている面もあるが、私は自身がその中で今までと違う自分になれたことを嬉しく思えるので、「子育てはキャリア」だと考えて活動を展開してきた。そして、最近では、介護の経験もキャリアの面談でとても役立っているので「介護はキャリアである」とも考えるようになってきた。
クランボルツのいうように、これから残りの人生、貪欲に学びを続け、多くの人と出会っていきたいと思っている。
コラムの感想等はこちらまで(協議会 編集担当)
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