キャリアコンサルティング協議会は国家資格「キャリアコンサルタント」の試験機関および指定登録機関と、国家検定「1級・2級キャリアコンサルティング技能検定」の指定試験機関です。

マンスリーコラム

2018年1月号

2018年 年頭のご挨拶

明けましておめでとうございます。

キャリアコンサルタント、キャリアコンサルティング技能士の皆様、また養成講習、更新講習実施団体をはじめとする会員団体、先生方、関係諸機関の皆様には、日ごろより協議会の活動に一方ならぬご支援をいただいておりますこと、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

さて個人的な振り返りで恐縮ですが、昨年耳にする機会の多かった二大キーワードは「人生100年時代」と「セルフ・キャリアドック」でした。前者は、一つの会社でキャリアを全うするという働き方から、フリーランスやパラレル、多毛作のキャリアへと変化することが、圧倒的なリアリティを以って表現されたことが衝撃的でした。後者は、キャリアコンサルタントに求められる活動として、従来の一対一のキャリア面談に加えて、新たにキャリア研修や企業の経営・人事との密接な関わりが加わり、それが公式に表明されたことへのインパクトがありました。

この数年の間に世界全体あるいは地球規模で歴史的な変化が加速している実感をお持ちの方も多いかと思いますが、キャリアコンサルティングという専門技術を取り巻く環境にもこれまでとは質的に異なる変化が生じており、今後、キャリアコンサルタントのあり方、あり様に不連続な転換を余儀なくされる時代が到来したのかも知れないと思います。

1月4日付の日経新聞を読むと、「ポスト平成の未来学」の特集の中で、次世代IT技術が「ヒトの五感」に移行すること、記者個人の感想として「AIに人生は支配できないが、いつもそばにいて長年の友人のように助言してくれればそれで十分だ」とありました。AIスピーカーやAIロボットは既に「会話」ができるところまで進化していると聞きます。人間の感情の機序が解明されれば、ほとんどの場面で違和感のない自然な会話ができるロボットが実現するのでしょう。こういう話を耳にすると、すぐに「キャリアコンサルティング・ロボットが登場する日は来るのか?」と考えてしまいます。

その日が来るのか来ないのかは実のところよく分かりませんが、そうした想像と同時に、私はいつも「会話」と「対話」の違いを思い浮かべます。私の理解と実感によれば、「会話」に比べて「対話」は、より相互作用的、生成的であってしかも未来の選択を伴うところに成立要件があります。つまり、複数の話者の情報(思考、感情、意思)のやり取りによって内容は常に変化し、時間的にも空間的にも自在に展開して予測不能だが、話者同士の意思によってより良い未来へのストーリーが生成的に形成され、互いに腑に落ちる結論の合意に至る、それが私の対話イメージです。直感的に言えば、AIには「対話風の誘導や助言・指示」はできても「生成的対話」は困難なのではないかと思います。そう考えると、キャリアコンサルティング・ロボットに対抗する道は、「対話力」を磨き続けることのように思えてきます。

変化を仕掛けた側ではない立場にとって、変化はいつもその予想を上回るスピードでやってきます。そしてその技術や倫理を含む対応基準が定まるのは、変化が大方に浸透してしまった後になるのが常です。キャリアコンサルタントにとってみれば、自分より先の未来を生きているのは常にクライアントである、ということでしょう。一般に、旧パラダイムから抜け出せず環境変化を境に対応力を失っていくのは、旧環境で適応していた側であることは多くの史実が雄弁に語っているところです。もちろん浅薄な恐怖に駆られて右往左往すれば自滅することも自明ですから、結局は己と己を取り巻く環境をしっかり見据え、腹を固め、どこに一歩を踏み出すかを決めてやり抜くしかありません(無論、一度決めたことは決して変えない頑迷固陋とは違います)。

キャリアコンサルティング協議会は、指定登録機関、登録試験機関、技能検定指定試験機関として行政代行の役割責任を担い、クライアント、国、社会からの高い期待に応えて、一層信頼に足る機関として、今年も最大限の努力をしてまいります。一方、激変する環境の中で奮闘されているキャリアコンサルタント、キャリアコンサルティング技能士の皆様に対するご支援と、キャリアコンサルティングの一層の普及啓蒙に勤めてまいります。いずれも会員団体の皆様を初めとして、行政、諸先生方、関係各諸機関との「対話」を通して、一層のご支援、ご指導を賜れればこそ前進できますこと。どうか本年もよろしくお願い申し上げます。

キャリアコンサルティング協議会 会長 藤田 真也

キャリアコンサルティング協議会 会長 藤田 真也

キャリアコンサルティング協議会 会長
キャリアカウンセリング協会 理事長

1983年株式会社日本リクルートセンター入社。企業内研修の研究開発畑を歩み、(株)リクルートマネジメントソリューションズ執行役員(管理部門担当)、(株)リクルートエージェント(現リクルートキャリア)監査役等を経て、2014年キャリアカウンセリング協会理事長。2017年より現職。

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