キャリアコンサルティング協議会は国家資格「キャリアコンサルタント」の試験機関および指定登録機関と、国家検定「1級・2級キャリアコンサルティング技能検定」の指定試験機関です。

マンスリーコラム

2024年2月号

『中小企業の支援現場より』~働きがいのある職場づくり~

私の経歴

私は長らく情報通信業の企業グループで働き、役員や代表取締役も務めました。キャリアコンサルタントの資格は、グループの採用・育成支援をしていた56歳の時に取得しました。
60歳になった時、あるグループ会社への異動を命じられました。最初はその内示に従うつもりだったのですが、たまたま同時期に公的機関の中小企業支援コンサルタントとしてオファーをいただきました。悩んだ結果、38年所属した企業グループを卒業し、キャリアコンサルタントとして独立することを決心しました。
その後2年が経ち、山陰地区(鳥取県、島根県)でキャリアコンサルタントの法人(協同組合山陰キャリア開発)を立ち上げるなど、精力的に活動をしています。
正直なところ、収入や安定性の面では、そのまま企業グループに残った方がよかったのかもしれませんが、若い頃からやりたかった中小企業(団体)の支援、キャリアコンサルタントとしての人や組織への支援が実現し、とてもやりがいを感じている毎日です。何より、同じ志を持つ地域のキャリアコンサルタント50数名と一緒に活動が行えていることが、このうえない幸せです。

中小企業の支援内容

私の行っている中小企業向けの支援内容は以下の通りです。
① 一般的な経営コンサルティング
② 組織づくり、人材育成に関するコンサルティング
③ 採用や定着などの支援
④ 人事労務に関する相談対応
⑤ エンゲージメント向上施策の助言
⑥ 上記に付随した研修、キャリア面談の実施
キャリアコンサルタントとしての知見だけでなく、資格は持っていませんが中小企業診断士や社会保険労務士の領域にも少し踏み込んでいます。これらは自身で学習し身に付けたものです。

現在の中小企業の困りごと

今一番大きな中小企業の課題は、皆さんご存じのように「人手不足」です。
10社訪問すれば、まず10社とも「人が足らない」「採用ができない」と言われます。私は採用担当をしていたこともあるため、採用に関する助言、提言もしていますが、これだけ少子化や都市部への人口集中が進むと、地方での人材採用は極めて困難な状況になっています。
あまり大きくは報じられていませんが、円安の進行と、海外の物価上昇(賃金も上昇)から日本に来る外国人労働者も激減しています。新型コロナの蔓延時は目立たなかったのですが、コロナが明けて一気にその影響が顕在化しました。政府は、2030年代半ばに最低賃金1,500円を目指すと言っていますが、それでも先進国では最低レベルです。このような円安状況の中、外国人が来てくれるためには2,000円くらい必要ではないかと私は思っています。

人手不足の解消には

そのような採用難の状況から、私は「育成と定着」「IT化などの生産性向上」を中小企業の皆さんに提言しています。私は30年以上IT企業にいたので、ITの知見もそういう意味で役に立っています。今回のコラムは、IT化のことをお話しする場ではないので、このあとは「育成と定着」について、お話をさせていただきます。

人材育成について

このコラムをお読みの方は、人に対する支援を行っている、または行いたいと思っておられる方だと思います。ですので、人材育成の重要性を改めて説明する必要はないでしょう。
ただ、地方の中小企業においては、人員体制、予算などの面から人材育成が進んでいないのが実態です。政府がリスキリング施策を大きく展開し始めていますが、なかなか浸透していません。どこも売上や利益の確保、目の前の課題への対応に追われ、手間のかかる人材育成は後回しにされているのが実状です。
なお、人材育成にもいくつかの領域があり、一般的にはテクニカルスキル(知識、技術、資格)をイメージすることが多いと思います。もちろんそれは大事ですが、私はコミュニケーションスキルやマネジメント力、チームビルディングなど、中小企業に足らない要素についても力を入れて啓発活動をしています。実際にそういう研修やセミナーも多く開催しています。

定着とエンゲージメントについて

人手不足と言われる中小企業では、少なからず「離職者」がいるという実態があります。理由は様々ですが、大企業を中心に大幅な賃上げ、労働条件の改善が進むと、それに引かれて転職する人が出るのもやむを得ないと思います。多くの方が、休みが多く給与が高い方になびいていくのもわかります。それに追随できない中小企業の総務人事担当者は大変もどかしい思いをされています。
それ以外にも、人間関係や職場環境などから離職されるケースがあります。そういった面での施策についても、企業様には様々な提言を行い、少しでも離職者が減るような方向になるよう支援しています。
最後に残る難関が「エンゲージメント」「働きがい」という部分です。給与、休日、人間関係、職場環境の改善をしても、それだけではエンゲージメントを100%の状態にすることはできません。

働きがいについて

キャリアコンサルタントとしての勉強をされた方は、もちろんご存じの内容ですが、いわゆる「内発的動機づけ」「動機付け要因」という部分が、エンゲージメントの向上、働きがいの創出には不可欠です。
中小企業の経営者から、どうしたら「やりがい」「働きがい」を高められるかという相談をよく受けるので、その際は「内発的動機づけ」や「動機付け要因」のお話をするようにしています。
具体的な内容としては、「承認欲求」「成長欲求」「仕事の自由裁量」「挑戦ができる環境」などを提案しています。私自身が、長らく組織で働いていた際に、そのような条件が揃った際にモチベーションが上がったからです。

これから私が目指すもの

私の設立した「協同組合山陰キャリア開発」では、「人と組織をウェルビーイングにする」をパーパスとしています。人と組織がウェルビーイング(幸福、満足、健康)であるということは、社員が「働きがい」を感じて仕事をできる状態だと考えます。
今年は法人設立から2年目となります。様々な活動を通じて、人と組織の両方をウェルビーイングにしていくのが目標です。それが、組織やそこで働く人、そして地域社会に貢献する活動になると考えています。

ここまでお読みいただきありがとうございました。皆様自身がウェルビーイングな状態であり続けられますように。

戸谷 弘明(とや ひろあき)

戸谷 弘明(とや ひろあき)

ACCN中国四国支部 運営スタッフ
国家資格キャリアコンサルタント
島根県よろず支援拠点コーディネーター
協同組合山陰キャリア開発 代表理事

大学卒業後、地元(島根県松江市)にUターンし、地方テレビ局のグループ企業で活動。IT企業の営業、管理職、社長を歴任。グループ会社全体の採用、育成支援も担当
60歳を契機に独立し、中小企業支援コンサルタントとして活動
61歳でキャリアコンサルタントの団体(法人)を設立。設立初年度から行政機関からの事業を受託。さらに活動領域を広げるべく戦略を策定中

コラムの感想等はこちらまで(協議会 編集担当)

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