マンスリーコラム
「生きていたくない」に寄り添う
~キャリアコンサルタントの役割~
☆自殺対策委員会の活動と現状
Table No.17 「自殺対策委員会」(注)は、職場や社会における自殺対策、メンタルヘルス支援、そしてゲートキーパーとしての役割などを話し合う場として活動しています。
日本の年間自殺者数は長期的には減少傾向にあり、2025年の自殺者数は19,188人と、1978年の統計開始以降で最少となる見込みとされています。一方で、依然として年間約2万人の自殺が発生している状況に変わりはなく、特に子どもや若者の自殺は深刻な課題となっています。
当委員会には、キャリアコンサルタントだけでなく精神保健福祉士の資格を併せ持つメンバーが多く在籍しているのも大きな特徴です。中には、自治体や専門機関の「直接的な自殺予防・相談窓口」の最前線で、日々当事者の方々と向き合っているメンバーもいます。
☆現場で耳にする「言葉にならないSOS」
ところで、みなさんは相談者から「死にたい」と言われた経験があるでしょうか。おそらく、多くのキャリアコンサルタントにとってはあまり馴染みのない言葉かもしれません。基本的に、クライエントは仕事やキャリアに関する相談にお越しになるからです。
私の元にも、「死にたい」と直接口にする方は滅多に訪れません。
しかし、私の専門領域が「中高年の長期失業者への就労支援」「グレーゾーンを含む障害をお持ちのかたへの定着支援」、そして「虐待やいじめなど生育歴に起因する生きづらさと働きづらさへの支援」であることから、「もう生きていたくない」「全部終わりにしたい」という、深く思い詰めた心の内を聴くことがあります。一見すると仕事の相談であっても、その背景には言葉にならない切実なSOSが隠れていることが少なくありません。
☆「阻害要因」を減らし、「促進要因」を増やす
国の「自殺総合対策大綱」では、「誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現」を目指すことが掲げられています。その中で自殺対策においては、社会における「生きることの阻害要因(自殺のリスク要因)」を減らし、「生きることの促進要因(自殺に対する保護要因)」を増やすことを通じて、社会全体の自殺リスクを低下させるという考え方が示されています。
具体的に、阻害要因としては失業や多重債務、生活苦などが挙げられ、促進要因としては自己肯定感や信頼できる人間関係、危機回避能力などが挙げられています。
☆キャリアコンサルタントだからこそできること
キャリアコンサルタントの役割は、直ちに自殺危機へ介入することそのものではないかもしれません。しかし、相談者が抱える「働きづらさ」や「生きづらさ」をしっかりと傾聴し、適切な支援や関係機関へとリファーすることはできます。
また、私たちが専門とする就職支援や定着支援、そしてそのための環境への働きかけそのものが、「生きることの促進要因」を増やすことにつながっていくはずです。少子高齢化が極端に進むこの日本では、「働く」と「生きる」を切り離すことは非常に難しいと感じます。
信頼できる人間関係と安心できる環境の中で、自分なりに意味の感じられる仕事に就き、生活の安定を得ることは、「生きることの促進要因」を増やす大きな一つの要素になるのではないでしょうか。
私は、キャリアコンサルタントはキャリア支援を通じて、生きることの促進要因を増やす最高のゲートキーパーになり得ると確信しています。
*テーブル17「自殺対策委員会」の活動詳細をお知りになりたい方は、ACCN会員マイページ「ACCNテーブル」をご覧ください(ACCN事務局)
(注)「自殺対策委員会」はテーブルにおける活動名称です。ACCN内に実際の委員会としては設置されていません。
*ACCNテーブル活動についてお知りになりたい方は こちら(ACCNサイト「ACCNの活動を知りたい:テーブルウェルカムフェスレポ)
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