キャリアコンサルティング協議会は国家資格「キャリアコンサルタント」の試験機関および指定登録機関と、国家検定「1級・2級キャリアコンサルティング技能検定」の指定試験機関です。

マンスリーコラム

2026年8月号

【 キャリなに? 】#12
キャリアコンサルタントって何をする人?

私が個別面談にこだわっているのは、それがキャリアコンサルタントの重要な基礎だからです。「話が聴けること」から離れてキャリアコンサルティングは成り立ちません。自分が話を聴けているかを問われると、まだまだ自信を持って肯定できません。多分一生かけて目指す目標、理想像なのだと思います。「キャリアコンサルタントという生き方」を選んだ宿命なのかもしれません。「目の前の人に近づきたい」「その人を理解したい」という気持ちが満たされることはないのでしょう。面談の中で、「わかりました」と言えないのは、もっと近づきたいという気持ちと「わかったからもういいや、これ以上分かろうとはしないから、もういいよ」という気持ちの芽生えへの恐れがあるからだと思います。

キャリアコンサルティングは、今、大きな転機に入りつつあります。AIに限らずすべての変化が、日本の社会そのものや個人の、生きること、幸せ、働くことなどを根底から揺さぶっています。これに呼応して、今後のキャリアコンサルティングにおいては、今以上に開発的支援の役割が強調され、個人から組織、環境への働きかけが重要視されるようになっていきます。それでもなお、キャリアコンサルタントが役割を果たすための一番の基礎は、「話が聴けること」に違いありません。もしも、それが不要であるならキャリアコンサルタントの仕事は、すぐにAIにとって代わられるように思います。今後どのような進化を遂げるかは、私にはわかりませんが、AIが主体性を持つようになるまでにはまだ余裕があるでしょう。主体性を持っている人のように会話をすることはすでにできているようです。しかし、私はAIが私のことを理解したいと思っているようには感じませんでした。

「こういう場合にはどう言ったらいいですか」「私はこういう言い方をしています。参考にしてみてください」。

こうやって言い方を習っていく過程は、AIが面談記録から応答を学んでいく過程を連想させます。「話が聴けるようになる」のではなくて、「話が聴ける人のまねをして、話が聴けるふりをする」ことにはならないでしょうか。

キャリアコンサルタントの能力は、相手に大きな影響を及ぼす、強力な武器になります。正しく使えば相手が幸せを見つけそれを実現していく手助けになりますが、下手に使えば相手の人生をめちゃめちゃにすることさえあり得ます。たとえ悪意がなくても、相談した人を傷つけてしまうことは珍しくはありません。相談してみて役に立たないから二度とキャリアコンサルタントに相談したくないと思わせてしまったら、その人の大切な機会を奪うことになります。

「キャリアコンサルタントはなるものではない。キャリアコンサルタントという生き方を選ぶことなんだ」と教えてくれた、私の尊敬するカウンセラーが、カウンセラー志望の学生さんへの指導の話の中で、「子どもがよく切れる刃物を手に入れて、むやみやたらに振り回されたら危なくてしようがない」という例え話をしていたことを思い出します。生物学が専門の同僚と尾瀬の自然の変化を話していた時に彼が口にした、「最近は行かなくてもいい奴まで押しかけるから、こういうことがおこるんだよね」も同じようなことを言っているように思います。

自分はその強力な力を手に入れるにふさわしいかという問いは常にわたしに向けられます。自分の気持ちや考えに気づいているか、自分で考えているか、多くの人に頼りにされて調子に乗っていないか、認めてほしくてやってはいないか、分からないのに分かったふりをしていないか、相手に近づきたいと思っているか、自分の知識やスキルを高めようとしているか...、挙げればきりがありません。

木村周先生が若いころに、集団就職のために引率した人たちを上野駅で引き渡した時、心の中で彼らの背中にそっと「幸せになれよ」と呼びかけた気持ちを、私も大切にしていきたいと思っています。少しでも力になれるように、「聴く」ことにこだわっていきたいと思っています。それらを基礎に自分のフィールドを中心に、時代のニーズに応えられるように研鑽と実践を重ねていきたいと思っています。そうして手に入れるであろう強力な力を持つにふさわしい、人間的に魅力ある自分になれるように成長していきたいと思っています。まだ歩みは始まったばかりです。

1年間おつきあいいただきありがとうございました。どこかでお目にかかれることがあれば、気軽にご意見、ご感想などお聞かせください。

#コラム「キャリアコンサルタントって何をする人?」#12

キャリアのことをいろいろなテーマで「ゆるやか」に考えたコラム「ゆるキャリ」(全12回)のバックナンバーも併せてお読みください こちら

石崎 一記(いしざき かずき)

石崎 一記(いしざき かずき)

1958年7月埼玉県生まれ

1級キャリアコンサルティング技能士
カウンセリングルーム「ウサギのはらっぱ」主宰
埼玉県スクールカウンセラー
前東京成徳大学応用心理学部教授

平成14年度より23年度まで、厚生労働省キャリアコンサルティング研究会委員、同研究会各種部会座長等を歴任。
発達心理学の視点から、働く人の伴走者として幸せづくりのお手伝いをすることに取り組んでいる。
What a Wonderful Worldの世界の実現がライフワーク。

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