キャリアコンサルティング協議会は国家資格「キャリアコンサルタント」の試験機関および指定登録機関と、国家検定「1級・2級キャリアコンサルティング技能検定」の指定試験機関です。

マンスリーコラム

2014年8月号

企業内でキャリア・コンサルタント資格を活かすために

私は、IT企業においてSE経験後、約25年以上人材開発業務に携わっています。2007年には、社内に"キャリアデザインサポート室"を設立し、面談、キャリア研修、メンタルヘルス支援、組織介入などの実務をしています。

"キャリア・コンサルティング資格取得したが、社内で活かすことができない!"、"どこから取り入れればよいか!"という話を耳にすることもあります。そこで今回は、企業におけるキャリア支援の導入事例を紹介しながら企業領域のキャリア・コンサルタントの活動を皆様と一緒に考えていきたいと思います。

企業領域のキャリア・コンサルタントが求められている背景

現在キャリア・コンサルタント養成数は平成24年度末で約81,000人になっています。厚生労働省キャリア形成支援室は「キャリア・コンサルタント養成計画に係わる専門検討会」を開催し、平成36年度末までに10万人に増加、そのうち企業領域は63,000人という数を算出しています。

企業領域のキャリア・コンサルティング業務は広い

企業におけるキャリア・コンサルタントの業務は、面談業務だけではなく、キャリア研修を実施したり、職務能力研修や人事制度に係ることなど幅広い業務があります。メンタルヘルス支援、ダイバーシティ・マネジメントの観点、ハラスメント防止、マネジャー支援など多岐に渡っています。

【事例1】40代ミドル層のモチベーションUP

人事担当者がキャリア・コンサルタントの資格を取得し、キャリア支援の導入を企画していました。上司に進言はしていましたが、理解してもらえず2年が過ぎた頃、社長交代に伴い、『ミドル層の活躍』の課題があがり、"キャリアの導入"の号令がかかります。それまで温めていた企画を提案し、キャリア研修および面談を実施することになりました。一人のキャリア・コンサルタントの強い意思で諦めずに努力して準備をしてきたことで成功した事例です。

【事例2】女性の活躍を視野にいれたキャリア

全国に支社がある4000人規模の企業で、ダイバーシティ推進のワーキンググループを立ち上げ、『女性の活躍』を課題として取り組んできました。ワーキングクループのリーダーは「キャリアの視点」が必要だと認識し、女性と直属上司が一緒に"キャリアプラン研修"を受ける企画し開催しました。上司と部下との対話も促進でき、女性のキャリアを推進する土壌になってきました。

【事例3】若手社員から「自律」、そして企業への貢献

100人規模の企業で、経営者自らがカウンセラーの資格を取得して社員との面談を行っています。社員の仕事状況や生活や健康面まで配慮した面談を行なうことで素早い対応ができています。社員は"自分を大切にしてくれる会社"という思いを持ち、若手のうちから"会社の代表"という意識で仕事に取り組んでおり、企業としても利益を出し続けています。

企業内のキャリア・コンサルタントの役割

企業において、"キャリア支援"で重要なことは、経営方針や組織の戦略・戦術、人材育成戦略につながっていることだと思います。"キャリア支援"を導入する時には、経営層から「目的は?」「意味は?」「効果は?」「コストは?」ということが問われます。組織や管理者、社員の課題の解決や、今後の事業を推進する上で必要な方策になっていることが重要です。

人に発達課題があるように組織にも発達課題があると思います。企業の文化、風土、人事制度、職種、人員構成など、その企業独自の特徴があるので、"自分の企業では、どこから、何をどのように導入すれば、どのような結果がでるのか"を考えてスモールステップで施策をうつことがよいと思っています。個人にも組織にもWin-Winの関係になるように活動することが企業内キャリア・コンサルタントの役割だと思っています。

これからも皆様と一緒に活動させていただきたいと思います。

島村 泰子(シマムラ ヤスコ)

島村 泰子(シマムラ ヤスコ)

2級キャリア・コンサルティング技能士

(株)富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ キャリア開発部 専任部長

IT業界に入社、SE(システムエンジニア)を10年経験後、教育、採用、人材開発業務に従事。 2007年、社内に“キャリア支援”業務を体系化し現在に至る。 現在キャリア開発部の専任部長、エグゼクティブ・キャリア・コンサルタントとして社外でも活動。 「人は自分では気づかない素晴らしい能力を持っている。その宝モノを探すこと」を信念に仕事をしています。

コラムの感想等はこちらまで(協議会 編集担当)

キャリアコンサルタントのさまざまな活動を応援します!「ACCN」のご案内はこちら


マンスリーコラム一覧へ戻る