キャリアコンサルティング協議会は国家資格「キャリアコンサルタント」の試験機関および指定登録機関と、国家検定「1級・2級キャリアコンサルティング技能検定」の指定試験機関です。

マンスリーコラム

2014年11月号

キャリア・コンサルタントの職業的発達

私は、自分自身がキャリア支援者であり、それに加えキャリア支援を行う方々の教育・支援とキャリア支援者の職業的発達に関する研究も行っています。仕事を通し大勢のキャリア支援者やその予備軍の方々とお会いする中で、専門職としてのやりがいや葛藤を分かち合うことも多い現状です。私たちの行っているキャリア支援はどのような特徴なのか、どのように職業的に発達(成長)していくのだろうかと、考え始めたことが今の自分や研究に繫がっています。今回は、キャリア支援者の職業的発達プロセスに関して、調査に基づいた結果や考察を一部紹介させていただきます。

なお、キャリア支援者とは「クライエントの人生上の様々な役割の中で、主には職業生活に焦点をあてたキャリア支援を多様な活動領域で行っている者」と研究内では定義しておりますが、キャリア・コンサルタント有資格者も含まれたキャリア支援の実践者としてご理解ください。

キャリア支援者の職業的発達プロセスとは

キャリア支援者の職業的発達は、まず具体的な行動面のプロセスとして役割認識や職務遂行から実践がはじまり、徐々に職務拡大や職務充実につながっていました。また、学習としてはカウンセリングやキャリア支援に関する基礎訓練から始まり、状況や環境に応じた専門的な訓練へと移行していました。この実践と学習の両面に対して、職場における経験学習と客観視を促す仕組みの両面が、促進要因として機能していました。

こうした具体的な行動と関連しながらキャリア支援者としての意識や技能の変化が起こり、個別性のある将来に向けた展望に結びつくという一連の流れが、キャリア支援者の職業的発達プロセスであると整理されました。なお、具体的な行動および意識と技能の変化の両面に対して、人間関係と自己の人間性、土台となる職業人としての成長が支えとして影響を及ぼしていました。

キャリア支援者としての特徴的な部分とは

では、キャリア支援者の意識や技能の変化とは、どのようなプロセスでしょうか。それは、支援業務を必死にこなしながら徐々に一通りの対応ができ、専門職として熟達していく対人援助職として基本的な部分と、キャリア支援職として特徴的な部分との二側面があり、相互に関連しあうプロセスでした。特徴的な部分とは、「自身の経験と向かい合う」ことを通して、個人と組織の両方への「キャリア支援の推進」を行ううえでの意識や技能が深まり、支援者「自身のキャリア形成」も深まっていくという3つの要因からなり、これらは相互に影響を及ぼし循環的に進むプロセスとして認められました。

3つの要因について、もう少し述べてみます。まず、自身の経験とはなかなか複雑なもので、これまでの経験が支援に活きることもあれば、経験の有無が支援の疎外になることもあるなど、支援者として自分自身の経験と向かい合っていくことは重要な課題であると考えられます。また同様に、自身のキャリア形成では支援者としてのありたい姿がある場合もあれば、まだ方向性が漠然としている場合もあり、キャリア支援を行いながら徐々に自らのキャリアの再構築を進めていくことが大切であると考えられます。この3つの要因には、自らのキャリアにかかわる当事者としての部分と他者のキャリアにかかわる支援者としての部分の両面が含まれているとも解釈できます。

キャリア支援者は、様々な職業人としての経験を経た後に入職することが多いと考えられますが、仕事や生活者としての経験が豊かに蓄積されているとも言えます。そのため、職業人や生活者としての多様な経験はキャリア支援者にとっては糧であり、その経験を自分の中に取り込みながら自らのキャリア形成に対する当事者としての意識を持ち続け、それと同時に他者への支援者となりえるかが、キャリア支援者の職業的発達には重要な視点であろうと解釈しています。

更なる職業的発達につながる視点とは

最後に、ここまでご紹介した内容を踏まえ、更なる職業的発達につながる視点を考察します。

第一に、学習行動を促進させることであり、そのためには学習行動の促進要因である職場における経験学習と客観視を促す仕組みがヒントになると考えます。職場における経験学習とは、実践の中で場数を踏みその経験から学ぶことであると整理されました。また、客観視を促す仕組みとは、職務を振り返り課題を見出すこと、支援を通し自己を見つめること、およびスーパービジョンによる気づき、と整理されました。つまり、自身の実践や学習における意識を高めていくことと仕組み作りを検討していくことの両面が必要であると考えられます。なお、学習におけるプロセスでは、資格取得を節目や自信にしている結果も別途認められました。具体的には、キャリア支援に関連する資格保有がない者よりも資格保有者の方がキャリア支援に関する複数の自己効力感が高いことが実証され、資格取得も学習行動を促進させる有効な手段や指標であると解釈されます。

第二に、キャリア支援者として特徴的な部分(「自身の経験と向かい合う」「キャリア支援の推進」「自身のキャリア形成」)を理解し、取り組んでいくことが重要であると考えます。それぞれを理解し取り組んでいくことに加え、「自身のキャリア形成」には自己の人間性と土台となる職業人としての成長が影響していることも認められ、これは新たなヒントであると言えます。自己の人間性とは、人生観を持つ/深めること、および支援での基本スタンスを持つこととして整理されたのですが、自己の人間性の深まりも支援者としての自分に影響するという意識を持ち、自分なりに取り組んでいくことが必要であると解釈されます。また、土台となる職業人としての成長とは、職業としての不安定さへの不安、キャリアにおける発展途上の感覚、ワークとライフの相乗効果、発達段階に応じた人生設計であると整理されました。個人差が大きい部分だと思われますが、職業としての不安定さや発展途上の感覚を持つ場合もあれば、ワークとライフの相乗効果を感じる場合もあり、そのような側面を含めて自身の人生設計をしていくことも重要であると解釈されます。なお、この自己の人間性、および土台となる職業人としての成長は「自身のキャリア形成」に直接影響を及ぼすだけではなく行動と意識の両面に対する支えでもあり、重要な要因であると考えられます。

第三に、行動と意識の両面への支えとなるものを大切にすることが重要であると考えます。支えの一つには人間関係があり、職場内メンバーとの試行錯誤、専門職としての先輩格の存在、専門職同士の相互研鑽、および家族の理解や応援の獲得であると整理されました。自身の内的な拠り所となるものを、仕事や生活など多様な領域に積極的に獲得していくことが重要であると考えられます。

以上となりますが、本コラムがキャリア・コンサルタントの職業的な特徴や発達(成長)を考える際の一助になれば幸いです。

原 恵子(はら けいこ)

原 恵子(はら けいこ)

筑波大学大学院人間総合科学研究科非常勤研究員
Career Seed代表

株式会社ベネッセコーポレーション、およびグループ派遣会社にて外部スタッフ教育・管理や人材サービス、拠点マネジメント等を経験後、独立。現在は、キャリア支援者の職業的発達に関する研究と、キャリア開発をテーマとした実践との、両面を継続して進めている。標準レベルキャリア・コンサルタントの資格者養成講師も長年担当。筑波大学大学院人間総合科学研究科生涯発達科学修了。専門はキャリア心理学、キャリア・カウンセリング。博士(カウンセリング科学)。

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