キャリアコンサルティング協議会は国家資格「キャリアコンサルタント」の試験機関および指定登録機関と、国家検定「1級・2級キャリアコンサルティング技能検定」の指定試験機関です。

マンスリーコラム

2015年1月号

キャリア・コンサルティング資格取得学習の先にあるもの

「キャリア・コンサルティング技能検定の勉強は難しそう」

「資格を取得しても実務にはあまり役に立たなそう、本当にクライアントのためになるのか?」

「お金もかかるし、勉強する時間もない。今のままでも現場でクライアントの役に立てている」

実際のキャリア支援の現場で時々聞こえてくる声です。私自身も2002年10月に標準レベルキャリア・コンサルタント資格を取得後、人材派遣会社の営業、コーディネーター、登録面談担当者として働きながら同じように感じておりました。

今回は、キャリア支援に従事される皆様が、資格取得の学習をきっかけに得られる可能性について、私自身の事例を踏まえてご紹介したいと思います。このコラムがキャリア・コンサルタントの資格取得に興味を持たれている方々、標準レベルキャリア・コンサルタント資格者で今後の学習について迷われている皆様の参考になれば幸いです。

今までのビジネス経験がつながり始める

2010年3月に私自身が初めて熟練レベルキャリア・コンサルタントの講座に参加した時に、最も感銘を受けたのは、クライアントの思考、行動、感情が前向きに変化するために、今まで培ってきたビジネス経験や思考を使っても良いという考え方でした。それまではキャリア・コンサルティングは一つの学問。まずはクライアントに寄り添うための関係構築が大切で、その後はどうやって課題解決を行うのかはイメージできていませんでした。今までのビジネス経験とキャリア・コンサルティングが自分の中でつながり始めた瞬間でした。現在従事している若年者向けの就労支援事業では4年間で約200名のクライアントを担当しましたが、「今までのビジネス経験や考え方がクライアントの価値提供につながる」と意識し始めてからは、自分自身の挫折・成功体験、目標に対する考え方、ストレスコーピング、ロジカルシンキング、シチュエーショナル・リーダーシップ理論などを応用しながら、キャリア・コンサルティングを行えるようになりました。何より目の前のクライアントに真摯に接しながら、クライアントに問い、伝わり、教えてもらう言葉が自分自身に還元されることが、クライアントと共にキャリア・コンサルタントとしての成長につながることを実感できるようになりました。

ネットワークが広がり始める

次に、資格試験の学習を継続することで、ネットワークが広がった経験について述べたいと思います。2011年3月に熟練レベルキャリア・コンサルタントの資格を取得後、2012年以降は指導レベルキャリア・コンサルタントの勉強会に参加し、企業、行政、学校、NPO、起業されている方など、様々な場所や立場でキャリア支援に関わっているキャリア・コンサルタントの皆様と知り合う機会を得ました。当初は資格試験の学習が目的でしたが、高い志でキャリア・コンサルティングを実践されている方々と接するうちに、自らの活動を通じてどんなクライアントにどの自分の強みを活かして価値提供していくのか、キャリア・コンサルタントとしてどう社会に関わっていくのか、キャリア・コンサルタントしてどのように生きていくのかなど本質的な問いを迫られる機会が多くありました。現在でもお互いが切磋琢磨し、違う場所や立場で少しでも社会を良くしようとしていることが励みになるのはもちろん、仕事でも困った時には相談し合う関係が続いております。また昨年は、尊敬する先輩の紹介でキャリア・コンサルタントの世界大会にも参加し、他国のキャリア・コンサルタントたちと知り合い、異なる文化や価値観を持つ人々を、キャリア・コンサルティングでつなぐという国境を越えたビジョンを共有することができました。勉強会に参加しなければ、決して得られなかったネットワークだと実感しております。

学びと実践のサイクルが回り始める

また、キャリアに関する学びと実践を繰り返すことが、目の前のクライアントだけでなく自らのキャリア形成に役立つことも、資格取得の学習を継続する中での大きな気づきでした。2009年6月に12年間勤務した人材派遣会社を早期退職後、再就職支援会社で転職活動をしていた時には、自分にどんな選択肢が残されているのか、どんな壁にぶつかっているのか、何が問題なのかわからずに悩み、苦しみました。当時は自分がトランジション(転機)を迎えているのは自覚できても、その対処方法や転機を乗り越える術を知りませんでした。その後、資格取得の学習をきっかけにキャリア理論やアプローチについて学び直し、クライアントの支援を実践する中で、少しずつ学びと実践のサイクルが回り始めました。現職でも同じ就労支援事業の中で職務が大きく変化し、まさに転機の始まりの時期で混乱することもありますが、転機のプロセスを知り、対処のための資源を活用できる方法を一部でも実践することで、ストレスが少ない状態で新しい仕事に取り組めるようになりました。キャリア理論やアプローチには人生を生きていく上でのヒントがたくさんあります。きっかけは資格取得でも学んだ知識を少しずつでも実践すればするほど、クライアントや自分自身が豊かな人生を送ることにつながることを感じております。

以上になりますが、最後に今回マンスリーコラムの執筆者にご推薦いただいた田中さんに感謝の気持ちを伝えたいと思います。当初はなぜ私が?と様々な疑問を抱えながら書き始めましたが、どのようにキャリア・コンサルティング資格取得の学習を継続し、実践に活かそうとしてきたのかの棚卸しができ、キャリア支援に対する決意を新たにすることができました。ありがとうございました。今後も目の前のクライアントを大切にし、キャリア・コンサルティングの資格取得の先を見据えながら学びと実践のサイクルを回し続けたいと思っております。

加瀬 亮二(かせ りょうじ)

加瀬 亮二(かせ りょうじ)

大学卒業後、株式会社リクルートスタッフィングにて営業、コーディネーター、企画、登録面談業務に従事。研修会社での営業企画業務を経験後、実践的キャリアガイダンス事業のカウンセラーとして株式会社インテリジェンスに入社。その後若年者向け就労支援事業のコーディネーターリーダーを経て、現在、雇用開発本部公共事業部にて同事業の現場責任者として事業運営に携わる。保有資格は2級キャリア・コンサルティング技能士、GCDF-Japanキャリアカウンセラーなど。

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