キャリアコンサルティング協議会は国家資格「キャリアコンサルタント」の試験機関および指定登録機関と、国家検定「1級・2級キャリアコンサルティング技能検定」の指定試験機関です。

マンスリーコラム

2015年3月号

学生に向き合うキャリア・コンサルタントとして

私は現在、フリーのキャリア・コンサルタントとして、沖縄県内の複数の大学において就活支援、及び低年次からのキャリア教育に携わっています。日頃、大学生と接するなかで、彼らの気質の変化や基礎学力の低下を実感することが増えてきました。そこで今回は、教育現場で活動するキャリア・コンサルタントとして、若者の職業的自律の支援に際して求められる資質や能力について考えてみたいと思います。

既にご存知かもしれませんが、2016年卒 新規学卒者(現大学3年生)の就活解禁を12月から3月へと繰り下げることが決定されました。このスケジュールの変更に伴って、これまで動きが鈍かった学生達も、2月に入ってようやくキャリアセンターを利用するようになってきました。就活生の主な相談には"自己分析のしかた"や"履歴書の書き方"等、いわゆる内定獲得に向けた対策のものが多く、実際、私が受ける相談件数でも8割を占めます。このような状況は他のキャリアセンターにおいても同じ傾向にあるのではないでしょうか。そのため、大学に関わるキャリア・コンサルタントは、「一人でも多くの内定者を出す」という気持ちで日々、個別指導やガイダンス等を行っていると思います。これらは大切な支援のひとつですが、昨今の大学生の就職事情を鑑みると、私自身、それだけでは限界を感じています。

若者の現状と課題

入社後間もない卒業生から相談を受けることがこの2~3 年で増加傾向にあります。彼らの訴えには上司や先輩との人間関係や職場環境への不満等がありますが、キャリア・コンサルタントの立場から言わせてもらうと、本人の仕事に対する基本的姿勢の欠如から生じていることが多いと感じています。それらは、大学時代に社会に向き合う機会が絶対量として不足していること、また、就活を、自身を成長させる機会と捉えることができなかったことから、入社後になって、様々な課題を自身のものとして向き合えていないことが原因となっています。

教育的な狙いとして、私たちキャリア・コンサルタントは彼らの根本的な部分の解決に向けて方策を練る必要があるのではないでしょうか。

枠組みを超えて、プログラムの設計段階から携わる

先に述べたように、大学キャリアセンターでは、就活対策が主となりやすいため、「学生支援=対症療法的な支援」という誤認に陥りやすいと思っています。また、学生の相談はたいてい自分の裁量で対応できてしまうことも事実としてありますので、キャリア・コンサルタントは油断をすると自己研鑽を怠り、学生に対して単に自分の価値観を押し付けてしまう支援になりかねません。指導・助言はあくまでも手段であって、学生の職業的自律支援が本来の目的であることをキャリア・コンサルタントは忘れず、積極的に大学組織や環境に働きかける立場にあることを理解する必要があります。

そういう私もまだまだですが、大学の講義とキャリアセンター、地域企業の有機的な連携をもってカリキュラムの開発に努めています。現在は大学2年生へ就業観の醸成を到達目標に、OB・OG への取材や企業人を招いたポスターセッション等、フィールドワークを中心とした活動の場を提供しています。カリキュラムには社会人が仕事をする上でついて回るプレッシャーや緊張感、プレゼン力、対人関係といった数々の要素を取り入れています。学生達は、実社会に類似した場面でメンバーと協同作業をすることで著しい成長を見せ、その後においても自分の置かれている状況や課題にしっかりと向き合えるようになります。

本コラムがこれからキャリア・コンサルタントを目指す方、大学のキャリアセンターにお勤めの方にとって参考になれば幸いです。

松堂 美和子(まつどう みわこ)

松堂 美和子(まつどう みわこ)

キャリアデザイン研究所 代表
2級キャリア・コンサルティング技能士

沖縄県出身。現在は、大学を中心に中学・高校等で若者のキャリア形成を支援。琉球大学、沖縄国際大学、沖縄キリスト教短期大学、沖縄職業能力開発大学校 非常勤講師。標準レベルキャリア・コンサルタント資格者養成講師、スーパーヴィジョンを担当

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