キャリアコンサルティング協議会は国家資格「キャリアコンサルタント」の試験機関および指定登録機関と、国家検定「1級・2級キャリアコンサルティング技能検定」の指定試験機関です。

マンスリーコラム

2017年11月号

時代が変わっても、国が違っても、目標と希望が必要

「ひよっこ」時代のキャリア、現代のキャリア

今年9月で放送が終了した、NHK朝の連続ドラマ「ひよっこ」を楽しみに見ていました。日本の貧しくも生きるエネルギーにあふれた時代があったのだと昔を懐かしむ思いをした方もいるのではないでしょうか。今年還暦を迎えた私は、まさにその時代(設定は10歳年上)に生きていました。私が生まれ育った地方都市では、中学校を卒業すると集団就職で地元を離れ、遠く働きに出る人もいました。出発の朝は皆で駅に行って、汽車(日本で最後までSLが走っていた路線)に乗って新たな人生のスタートを切る級友を見送ったものです。

以前木村周先生が地方の職業安定所に勤務していた時、集団就職で働く人たちを列車に乗せ引率し、東京の駅で引き渡す担当をされていたと聞いたことがありました。都会に出てしっかり働いて行けるか不安を抱きながら、明るい未来を祈り背中を押す役割をしていたのだと。そんな事を思い出しながら、登場人物たちが明るく自らの人生を切り開いていくドラマを見て、ノスタルジアだけではなく、パワーをもらったような気がしました。彼女たちには、お互い支え合いながら未来に向かっていく力を感じました。生活の為には、好きな仕事だとか自分に合っているなどという選択肢はなかったのだと思います。

一方現代は、アベノミクスの好景気で、完全失業率は低下し、有効求人倍率が高位で維持しています。人材が不足しているので応募をすると採用される。深刻な人材難の職種は希望者が少なく、有効求人倍率を押し上げている。数字のマジックでしょうか。しかし、仕事に就けず生活を維持する事が困難な人たちもいます。希望の職種でなかったと離退職を繰り返す人や長期雇用の仕事に就けなかった人が、結果職業能力を身に付ける機会を逸し、将来のキャリアを描く事ができなくなってきます。

外国人技能実習生にみるキャリア

私は現在、監理団体として、外国人技能実習生が日本で働き、技能を身に付け帰国後に自国でその技能を活かす事により、自国の経済の発展の為に役立てると言うスキームの仕事をしています。実習生の皆さんは、遠く異国の慣れない環境で日本人が敬遠しがちな仕事に就いています。真面目で熱心な仕事ぶりは、他の日本人スタッフにも良い影響を与えています。彼ら彼女らは大きな目標を持って仕事に向かっています。自国では得られない金額の収入、日本語の習得や日本での社会を経験した事で帰国後にキャリアとして優位になること。そんな希望が明るく楽しそうに仕事に向かっている姿に結び付いているのかといつも感心してみています。

約50年前の日本人が生きて来た道を、一部のアジアの国の人達が今歩んでいる。そんな気がしてなりません。あの頃、キャリアコンサルタントの存在があったら、日本はどう変わって行ったのだろうと思いながら、外国人技能実習生に帰国後の自分のキャリアをどう描くかを考え、日本での生活を送っていくキャリアコンサルティングを実施しています。

ふりかえって私のキャリア

今までの人生を振り返り、自分自身のキャリアの転換期となったエピソードがあります。

私は3人兄姉の末っ子で、幼少期は病弱だったため親は私に対して一切過剰な期待をしませんでした。つまりわがまま放題で育ってきました。諦めの境地だったのでしょう。勉強もスポーツもできなくても仕方がない。一人では何も出来ない子どもとして育てられてきました。自分自身そのような存在でいる事が生きやすかったのかもしれません。高校生活は勉強をしない事の言い訳に部活で楽しみ、又就職を1年でも先送りするために短期大学に進学しました。卒業時は親のコネで就職先を決めてもらい、男性の多い職場では仕事に対して特に期待をされずに日々過ごしていました。いわゆる職場の花?的な存在です。

そんな私が今現在も仕事ができているのは、21歳で転機が訪れたからです。自分には気付かなかった能力があったと知った事が始まりです。社会人2年目に入った夏に病気で入退院を繰り返した結果、退職をして自宅療養をする事になりました。両親は働いているのに自分は家でフラフラしているのが申し訳なく、何か資格を取ってアルバイトをしようと思い始めたのが「医療事務」です。勉強嫌いの私が人生で初めて面白いと感じた勉強でした。資格取得後仕事に就いた時に、他の人より早く正確に処理できた事を誉めて頂き、それが自信につながって行きました。「私は出来るんだ!」。今まで親から何度も言われてきたのは「やればできるのにやらないからダメなんだ」って言葉。そうですやったからできたのです。

そこから人生が変わったように、周囲の方からのサポートを受け仕事の幅がひろがって行きました。多分大きな勘違いをしていたのだと思いますが、今まで何をしてもダメな人だった私が、期待される人になってきたのです。それ以来、「私が出来たのだから、あなたもやってみましょう。今までと違う世界が広がります。」と言って、多くの方に夢を語っていただきました。将来を考え目標を持ち、実現への希望を抱く事で、動き出す為のパワーが出てきます。それが今の仕事「キャリアコンサルタント」に興味を持つきっかけになったのではないかと思います。

これからも・・

自分自身では気づかない意識や能力を、私たちキャリアコンサルタントが関わることにより、気付きや自信に繋げ人生が変わる。仕事だけではなく生き方も含めたキャリア形成をサポートする役割をこれからも続けて行きたいと思います。そして、経済発展途上の国の人々にも、将来に希望を見いだせる一助となるキャリアコンサルタントでもありたいと思っています。

「歴史に学ぶ」「世界を見る」そこから何を見出すか。日々勉強の毎日です。

古島 典子(こじま のりこ)

古島 典子(こじま のりこ)

短期大学卒業後、地元企業に就職、1年半で病気療養の為退職
その後医療事務の資格を取得、アルバイトから始め26年間人材関連企業で営業、管理部門を中心に、研修・コンサルティング・マネジメント業務に携わる
キャリアカウンセラーの仕事を知ることにより、人と仕事のマッチングに興味を持ち総合人材会社に転職。その後職業訓練法人に転籍現在に至る
求職者向け職業訓練、コミュニケーションセミナー、キャリアコンサルタント養成講習講師、現在は外国人技能実習の監理団体として、実習先企業と外国人実習生のマネジメントを行う。50歳で大学通信教育課程に入学し卒業。

【資格】
国家資格 キャリアコンサルタント
CMCA認定キャリアカウンセラー
2級キャリアコンサルティング技能士

コラムの感想等はこちらまで(協議会 編集担当)

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