キャリアコンサルティング協議会は国家資格「キャリアコンサルタント」の試験機関および指定登録機関と、国家検定「1級・2級キャリアコンサルティング技能検定」の指定試験機関です。

マンスリーコラム

2017年12月号

学生の就職支援に携わって 仕事を通じて幸せになる支援

「仕事を通じて幸せになる支援をする」その思いがキャリアコンサルタントとして突き動かしてきた原動力です。大学を卒業後、4年間の民間企業に勤めた後に大学職員となり、奉職後、幾つかの部署を経験後、2000年に念願の就職部に配属になりました。就職部に配属になって、私は学生に自分の今までの社会経験を活かして、思う存分学生を指導できると、今思えば全く勘違いした考えでした。何故、勘違いの考えが間違いで、本当のキャリアカウンセリングが何故必要だったかをこれからの述べさせていただきます。

日本の新卒一括採用というシステム

ご存知のように殆どの大学生にとって大きな関心と心配は卒業後の就職です。それはまさしくシュロスバーグのいう転機ですが、シュロスバーグは、その転機は年齢や発達段階によって誰もが平等に経験するものではなく、個々の人生の様々な時期で固有に発生するものだと定義しています。しかし、学生は3、4年生になると平等に転機を経験するのですから大変です。

日本の学生採用は、一括採用と言って4月に新入社員として大量に採用するのが特徴です。勿論、中途採用も多くの企業が行っていますが、採用基準が違っており、圧倒的に4月の一括採用として入社する数が多く、学生にとっても専門の経験が問われず新卒カードを切り内定を得やすいというメリットがあります。企業側も、同時に優秀な人材を囲い込みが出来る事や、何より手垢の付いてない人材、言い換えれば、忠誠心をより持てる人材確保でき企業カラーに染めやすいメリットがあります。外国では一括採用は珍しく、日本独自の文化と言えるでしょう。

学生たちの苦悩 その1・・ブランド

その反対にデメリットも多くあります。

一つめは、短期間に内定先を決めなくてはならないという大きなプレッシャーで、地に足を付けた就職活動が出来ないという問題です。このことにより、自分自身を見失しない、ネガティブ思考となる学生が数多くいます。

どういうことかと言いますと、多くの学生は、親の希望もあり、安定志向や大手志向及び有名企業志向・ブランド志向に陥り、地方ですと金融ブランドが根強く、そのような企業だけにチャレンジして結果が出ず悩む学生です。ちなみにリクルートワークス研究所調査によると、2018年卒の求人倍率は1.78倍で2012年以降上昇しています。計算上は学生一人に1.78人の求人が有るわけですから、誰もが就職できる状況です。しかし、詳細な内容を見ると、如何に現実との乖離が大きいか分かります。規模別では従業員数が5.000名以上の企業の求人倍率は0.39倍で、1.000人~4.999人でも1.02倍です。それが300人未満ですと6.45倍もあります。業種別に見ても、地方で特に人気が高い金融業は0.19倍しかありません。対して、製造業は9.41倍、流通業に至っては11.32倍もあります。

もうお分かりと思いますが、学生はハードルの高い、大手企業や金融業にトライをするわけですから、希望通りには進まないのが殆どです。私は、そのような学生に冗談半分に「初恋の人とは結婚できないね」と言ってあげますが、学生にとってはやはりショックです。まさにキャリアカウンセリングが必要となる所以です。

学生たちの苦悩 その2・・金太郎飴

二つめは、インターネットの普及で学生、企業双方とも情報の収集や情報の提供が瞬時に簡単にできることになったことは私の時代と隔世の感があります。しかし、その弊害も多くあります。「光が強ければ影が濃くなる」と言いますが、まさにこの問題です。学生は企業のホームページを見て、業界、企業究を行い、書店で販売されている就活本を見て志望動機等を作成します。

そうすることにより、真の企業研究ができていないので、金太郎飴のような志望動機が並びます。また、学生の傾向としてエントリーシート等の作成や面接対策に見本となるテンプレートを求めます。これも金太郎飴です。

もうお気づきかと思いますが、そこには自分の足で企業訪問をやらず、親・親戚・知人から情報を得ていないので、極めて個性の無いものが出来上がるのです。結果は推して知るべしで、そのような事を続け、内定を得ない学生は失意の状態でハードルの低い中堅企業や高求人倍率の業界にチャレンジするわけです。中堅企業ほど、学生に対しての期待は、元気で覇気があり素直な学生を求めているので、「覇気が無く、目が輝いていないと」と評価して採用を見送り中途採用に切り替えます。

こうなると負のスパイラル状態です。就職活動を始めた頃のモチベーションはすっかり失せ、自分は社会から必要とされていないと落ち込みます。このようになるのは、学生だけに責任は無いと思っています。自分の足で情報を集めなくてもよいツールを与え、就職活動はこうあるべきだとのマニュアル本を与えているのは大人ですから。

本当のキャリアカウンセリングへ

そこでいよいよ、キャリアコンサルタントの役割が重要となります。私が2000年の着任当時失敗したのは、自分の価値観の押しつけと根拠ない激励・アドバイスで学生一人一人の個性に合わせた支援ではなかったのです。つまり、私が力説すればするほど(自分は気持ちいいのですが)学生は引いていく状態です。勿論、価値観、考え方が合っていればツボにはまりお互い満足のいく結果もあったのですが、安定したカウンセリングが出来なかったのです。

着任後2年後にキャリアカウンセラーの資格を知り資格取得し、その後は、学生に寄り添いながら、じっくりと傾聴し、学生が語ることでチェンジトークによる自己変容や気づきを促すことに注力しています。何よりも嬉しいのは、マニュアル本に書いてある偽りの自己PRや志望動機を捨て、自分の経験を振り返り、価値観、自己PRを自分の言葉で語ることができ、それが内定に結びついたときです。

最後にこんなエピソードを紹介して終わりにします。

8年前頃でしょうか、一人の学生は5月早々に第一志望の金融業界に内定を得え、その後充実した学生時代を謳歌しました。もう一人の学生は、第一志望どころか、何社もトライしましたが内定を得ることは出来ませんでした。その後、就職活動の後半11月頃に私のところに来て支援が始まりました。数十回もの面談を続けながら就職活動を続け、最初はトラウマや自信の喪失で内定を得ることは無理でした。しかし、卒業式も終わり、3月下旬に内定を得て、4月入社に間に合いました。その後ですが、5月早々内定得た一人は、3年目に離職しています。もう一方の3月下旬の内定者は、8年後の現在も元気で責任のある仕事を任せられて頑張っていることを私に報告にきました。

私は学生に常日頃言っていることは、結婚がゴールではないように「内定を得るのが就職活動のゴールではない、働くスタート台についただけである」 そして、一番大事なのは組織の中で、「認められ、誉められ、人の役に立つことである」。そのことは、大企業、人気企業でなくとも成就できるはずだと。そのためには、イメージで仕事を選ばず、じっくり自分と向き合い、そして相手企業のビジネスモデル(お金儲けの方法)を直接会社訪問等して調べ、そのビジネスモデルに共感し自分ならやれるかもしれないということが仕事選びの大事さですと。そして何よりも「仕事を通じて自分も家族も幸せになることが」人生ですと。

そして、私自身も常にキャリアカウンセリングのスキル向上を目指すべきと言い聞かせています。

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このたび、技能士会東北支部長を務めさせて頂く事になり、いろいろな領域での実践経験が豊富な運営メンバーと共に活動を開始しました。皆さんそれぞれに問題意識を持っており、支部活動の原動力となっています。現在、様々な分野の方々との交流会や勉強会を企画中です!皆さんの参加をお待ちしています!

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土田 惠介(つちた けいすけ)

土田 惠介(つちた けいすけ)

略歴
大学を卒業後、飲料メーカーに4年間勤務後、仙台の東北学院大学職員として奉職。
幾つかの部署を経験後、2000年より16年間就職キャリア支援部で学生の就職支援に携わり、述べ10.000人以上の学生と面談を行う。現在は、東北学院大学学生部に勤務の傍ら技能士会東北支部長

資格
2級キャリアコンサルティング技能士
日本キャリア開発協会 CDA

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