キャリアコンサルティング協議会は国家資格「キャリアコンサルタント」の試験機関および指定登録機関と、国家検定「1級・2級キャリアコンサルティング技能検定」の指定試験機関です。

マンスリーコラム

2018年5月号

~キャリアコンサルタントとしての現場で日々感じていること~

「働き方改革」や「人生100年時代構想」が進められる現在、実際の現場でも仕事と病気治療の両立や、子育て・介護等と仕事の両立に関する支援、中高年・高齢者のキャリア支援についての知識や技能が更に求められるようになりました。そこで、私たちキャリアコンサルタントが「専門家として期待される機能・役割」について考えてみたいと思います。

これからのキャリアコンサルタントは、どうあるべきか

現在、登録キャリアコンサルタントは3万人以上。(平成30年2月末時点で33,394人※キャリアコンサルティング技能士1級・2級の登録者も含む)また、ご存知のように、平成20年度から国家資格キャリアコンサルティング技能検定2級(熟練レベル)、平成23年度から技能検定1級(指導レベル)試験が開始され、能力向上への整備も進められてきました。さらに昨今では、社会環境、産業構造・労働構造の変化や労働政策上のキャリア支援の重要度の高まりを背景に、キャリアコンサルタントに求められる社会的役割が拡大、深化しています。

「従来の就職支援の観点に留まらず、一人ひとりのキャリア自立の観点から職業生活設計の支援を行うもの」。平成30年3月26日、厚生労働省により発表された「キャリアコンサルタントの能力要件の見直し等に関する報告書」にも、キャリアコンサルタントに期待される役割について、そう明示されています。

職業生涯が長期化し、60歳定年後も年金が満額受け取れない高齢化が進む現代社会では、働き方も多様化しています。「働き方改革」や「人生100年時代構想」という言葉も日常的に耳にするようになり、ますます私たちの活動を促進するべき時期だと感じています。

以前は企業主導で行われていた個人のキャリア形成が、「個人が主体的に自分の役割を理解し、周囲との関わりの中で自分自身の活動を調整しながら、個人の成長を通して企業の発展を目指していく」という方向性に変化しています。つまり、個人の主体的なキャリア形成に対する支援がより重要となっているのです。また、キャリア実現の場である企業との関わり方などにも、一層着目する必要があります。

そこで重要となるのが、私たちの指針である、キャリアコンサルタント倫理綱領(平成28年4月1日)の第一章 基本的姿勢・態度の【自己研鑚】第4条の徹底です。

1. キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングに関する知識・技能を深める、上位者からの指導を受けるなど、常に資質向上に向けて絶えざる自己研鑚に努めなければならない。

2.キャリアコンサルタントは、組織をとりまく社会、経済、環境の動向や、教育、生活の場にも常に関心をはらい、専門家としての専門性の維持向上に努めなければならない。

3.キャリアコンサルタントは、より質の高いキャリアコンサルティングの実現に向け、他の専門家とのネットワークの構築に努めなければならない。

最近では、私の周囲にもキャリアコンサルタントの国家資格をめざす人が増え、「資格取得後は、どう活動したらいいか」とアドバイスを求められることも少なくありません。資格取得はあくまでもスタートライン。その後の、継続的な自己研鑽こそが相談者をサポートする大きな力となります。実務経験の少ないキャリアコンサルタント(ペーパードライバー)問題も念頭に置きながら、「質の維持」は常に意識するべきテーマです。登録キャリアコンサルタントを継続するための5年毎の更新講習(知識講習8時間以上・技能講習30時間以上)はもちろん、他にも自発的に学びの場を作り、意欲的に学んでいきたいものです。

現在、私は未就業の学生、在職中の転職希望者、職業訓練を経て就業をめざす方、育休中の方へのコンサルティング、企業内従業員のキャリア支援など多岐にわたった活動をしています。そのため、能動的に知識を増せる機会にできるだけ多く触れるよう意識しています。一昨年私は1級キャリアコンサルティング技能士試験のために、改めてキャリア理論と論述、面談スキルを学び直し致しました。技能試験の試験科目やその範囲並びに細目に目を通すことで、自分の強み・弱みの分析となりましたし、力不足を再確認することでそれを補うための実行計画を立て、学びに繋げることができています。

<今回のキャリアコンサルタントの能力要件見直し概要のうち「拡充強化」に関する内容>

〇セルフ・キャリアドック等の企業におけるキャリア支援の実施に関する知識・技能

〇リカレント教育等による個人の生涯にわたる主体的な学び直しの促進に関する知識・技能

〇クライアントや相談場面の多様化への対応に関する知識・技能

〇職業生涯の長期化、仕事と治療、子育て・介護と仕事の両立等の課題に対する支援に関する知識・技能

(その他、詳細は、厚生労働省のサイトをご覧ください)

「セルフ・キャリアドック制度」から考えること

上記のキャリアコンサルタントの能力見直し要件の一つにもある「セルフ・キャリアドック」によるキャリア支援とは、従業員が定期的にキャリアコンサルティングを受けられる機会を、企業が設定する総合的な取り組みです。企業の人材育成ビジョンを明確化し、入社時や役職任用時、育児休業からの復職時といったタイミングで提供するのが効果的です。狙いは、従業員のキャリア形成における「気づき」を支援すること。従業員自身の仕事に対するモチベーションがアップし、定着率向上や企業の生産性向上にもつながります。

平成28年からその推進が図られ、普及するにつれ、私自身にも企業や社会保険労務士事務所からの依頼が多くなりました。現在も数社の企業に訪問し、従業員の方々のキャリア面談をする中で思うことが2点あります。

1点目は、その企業の人事制度や組織についての知識を習得し、面談対象者の就いている仕事を理解することが大切だということ。スムーズな面談のためには、一般的な知識だけでなく、個別の状況を把握し、柔軟にアドバイスすることが求められます。わたしたちが、面談対象者に対しての上司からの要望や育成目標について把握していれば、より有意義な面談になるはずです。もちろん、そのためには経営者や人事との協働や事前準備などの活動も必要となります。

2点目は、面談対象者に今回の面談の目的や「今後ご自身の生活にどう活かせるか」などを丁寧に説明することが、よい結果につながるということ。「会社から期待されていること、それを実現するにはどんなキャリアをめざせばいいのか、そのためにはどんな力をつけるべきなのか」を理解、整理できれば、「明日からの自分」を想像することができ、具体的な行動変化を起こせるからです。

ときには、他企業への転職相談になったり、現状への不満をうかがうこともあります。外部のキャリアコンサルタントだからこそ話せることもあると思いますが、本来は社内におなじ役割を果たせる人材がいれば、従業員一人ひとりのキャリア形成や組織の生産性向上にもつながるのではないかと考えます。

実はそう思う背景には、多くの中小企業では上司との1対1の面談がほとんど行われていないという現状があります。半期に一度の人事評価面談など以外には、わざわざ時間をつくって対話をしているケースが非常に少ないのです。

私が前職で勤務していた会社は、日常的に上司と1対1で話す機会の多い環境でした。営業職でしたので業績の話や活動内容が中心ですが、自身がめざすキャリアや家族のことなども知ってもらえることで、安心して仕事ができました。

最近、世界的に注目されている「1on1ミーティング」。上司と部下が定期的に1対1で、仕事上の悩みやこれまでの経験を話すことにより、部下は「気づき」を得られ、内省できるよい機会となるものです。若手社員の成長だけでなく、社内のコミュニケーションの活性化にも貢献する可能性が高い、人材育成の手法と言われています。

私自身も、管理職に対してのコミュニケーション研修や、面談スキル向上のための研修に携わらせていただく機会が多くあります。今後、上司や先輩がキャリアコンサルティングの技術を習得できれば、会社全体の人材育成や業績拡大の大きな力になると思うのです。

いずれにしても個人の主体的なキャリア形成は、周囲の環境との相互作用によって培われるものです。それを認識し、面談対象者に対する支援だけでは解決できない問題(例えば学校や職場の環境など)の発見や改善提案など、環境への介入や働きかけも私たちの使命だと強く感じています。

会員の皆さまでつくりあげていく中部支部へ

ここでは技能士会と、私が所属する中部支部についてご紹介します。

キャリアコンサルティング技能士は、技能検定職種のひとつとして平成20年に追加され、特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会がキャリアコンサルティング職種の指定試験機関として厚生労働大臣から指定を受けました。

また、キャリアコンサルティング技能士会は、キャリアコンサルティング技能士が自らの資質の向上を図り、社会的な責任を果たし、キャリアコンサルタント全体の社会的信頼と認知を高めることを目的として設立されました。(会員規程 第2条より)

具体的には、

キャリアコンサルティング技能士としての拠り所・研鑚の場として社会的責任を共に果たしていく職能集団としてキャリアコンサルティングの社会への浸透と、キャリアコンサルタント全体の資質向上に資するべく設立されているとも言えます。

現在、技能士会は地域ごとに7支部に分かれ、中部支部は愛知・岐阜・三重・静岡・福井・石川・富山・長野の8県の技能士に会員登録いただいています。各支部で、勉強会・講座の開催や交流会を行い、会員の皆さまとネットワークを広げる活動を行っています。

私は、昨年9月よりキャリアコンサルティング技能士会中部支部の支部長を拝命致しました。中部支部は副支部長、会計担当、広報担当、研修担当、エリア担当、会計監査の7名のメンバーで運営しており、奇数月の第三日曜日に名古屋駅前の会場を中心に支部会を開催しております。

大切にしているのは、昨今のニーズに対応できるキャリアコンサルタントをめざし、「明日から使える知識・技能」を身につけること。昨年9月以降は、「解決志向アプローチ(ソリューションフォーカス)」、「1級技能士による相談事例検討会」、「がん患者の就労支援」、「産業ジェロントロジー(老年学)」についての勉強会を開催。

次回5月20日には、「人工知能時代の働き方」をテーマに学びます。石川県金沢市の会場と名古屋を2元中継で繋ぎ、石川、富山、福井の皆さまにもご参加いただきたいと考えています。

また、昨年夏に引き続き、株式会社マイナビ様主催の新卒合同会社説明会「マイナビ就職EXPO」の会場で、キャリアコンサルティング技能士会中部支部として相談ブースを開設。新卒学生の支援(就職活動の進め方、エントリーシートの添削、自己PRのアドバイス、面接練習など)を通して、「社会的責任を共に果たしていく職能団体として、キャリアコンサルティングの社会への浸透をめざす」というキャリアコンサルティング技能士会の設立主旨をアピールするよい機会となっています。

さらに、中部8県にわたる支部内の交流についても積極的に活動をする予定です。

これからもキャリアコンサルティング技能士の専門家集団として、広く深いネットワークで、社会に積極的に働きかけていきたい。そして、会員の皆さま全員でつくっていく中部支部へ。それが、私たちの「合言葉」なのです。

*************

キャリアコンサルティング技能士会のホームページはこちら

大森 冨士代(おおもり ふじよ)

大森 冨士代(おおもり ふじよ)

1997年 株式会社リクルート入社 
人材採用サービスの企画営業職として、中小企業向けの中途採用企画・提案営業を経験。営業チーフとして人材育成、業績構築などの業務に携わる。
2008年~ グループマネージャーとしてマネジメント業務 
グループ業績構築および、郊外エリアマーケット強化、新商品立ち上げプロジェクトなどを経験
2011年7月~ フリーランスとして(2014年株式会社キャリアル設立)
企業研修、就職希望者向けセミナー、大学生新卒イベント講演、厚生労働省高校生就職ガイダンス・ジョブカード講習講師、大学キャリアデザイン授業、企業人事部コンサルタントなど
●新卒採用、中途採用支援から、入社後の定着、育成の観点で企業内の人材育成まで関わることで、現場でのリアルな状況を把握。年間延べ800名のキャリアコンサルティング面談を実施中
 

【保有資格】
国家資格1級キャリアコンサルティング技能士
国家資格キャリアコンサルタント
米国CCE,Inc認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー

コラムの感想等はこちらまで(協議会 編集担当)


マンスリーコラム一覧へ戻る