キャリアコンサルティング協議会は国家資格「キャリアコンサルタント」の試験機関および指定登録機関と、国家検定「1級・2級キャリアコンサルティング技能検定」の指定試験機関です。

マンスリーコラム

2018年8月号

「問題志向よりも「解決志向」で行こう! 解決志向アプローチ(SFA)のススメ」

1. 土台となるアプローチ法は何ですか?

このコラムをお読みの皆様は、日常的にキャリアコンサルティングを実施されたり、なんらかキャリア支援に関心をお持ちの方が多いと思います。キャリアコンサルティングを実践していくときに、土台になる理論や技法はきっとお持ちではないでしょうか。

筆者の場合、実践の土台となるのが解決志向アプローチ(Solution Focused Approach)というアプローチで、解決志向ブリーフセラピー(Solution Focused Brief Therapy)とかブリーフセラピーと言われているものです。解決志向アプローチは、アメリカのミシガン湖のほとりにあるBFTC(Brief Family Therapy Center)で研究され、スティーブ・ド・シェイザー(Steve de Shazer)、インスー・キム・バーグ(Insoo Kim Berg)を中心に開発されたカウンセリング(心理療法)の理論で、家族療法をルーツを持つ短期療法(brief therapy)の1つです。SFAやSFBTと略されることも良くあります。

これまで、筆者は産業現場を中心とした訪問カウンセリングや休職者の復帰支援、組織内のキャリアコンサルティング、学生相談室など、さまざまな現場で活動してきた中で、解決志向アプローチ(以下、SFA)はどの領域でも活用できて「効果がある!」と太鼓判をおせる技法です(と、筆者は心から実感しています)。心理カウンセリングの中でも効果的ですが、キャリアコンサルティングの中では、より切れ味を実感できるのではないかと確信しています。すでに勉強しておられ、実践で使っておられる方もいらっしゃるかと思いますが、この技法と考え方・哲学、魅力について、紙面の許す範囲で皆さんにお伝えしてまいります。

これで皆さんも勉強したくなること間違いなし。(多分......笑)

2. SFAのどこが素晴らしいのか?

まず、SFAが優れていると思う大きな点として、クライエントを責めない、多くの負担をかけないことと言えるでしょう。多くのカウンセリング技法がある中で、この点では群をぬいて優れていると思います。多くのクライエントは(キャリアコンサルティングの場合も)、カウンセリングの場で「責められるのではないか」という恐れを持っている方は多いものです。

多くのカウンセリング理論では、クライエントの悩みや問題に注目し、その原因をカウンセラーと一緒に探り、その過程を通じて悩みを軽減し、問題を取り除いていくことが中心になることが多くなります。悩みやうまくいっていないことに着目するため、カウンセラーの技量やクライエントとの関係性によっては、「できないこと」を責められているような感覚に陥りやすいこともうなづけます。実際にお会いするクライエントの中でも、以前のカウンセリングでイヤな思いをしたことを語られるケースは多々あります。転職や求職がメインの相談でも、ダメな部分ばかりをフィーチャーされてモチベーションが下がって行動が進まないという訴えをお聞きすることもあります。

では、SFAでは何が違うのでしょう。

SFAは、クライエントの持つ問題よりも、元々持っているリソース(資源や資質、能力、など)に注目するアプローチです。リソースを活かして、求めているより良い状態や望ましい自分(ソリューションイメージ=解決像)を明確にし、そこに近づいていくために、とりあえずできることややれそうなこと(課題や行動化できること)に取り組んでいきます。まず、リソース(資源や資質)に着目して、「できていること」「頑張れている部分」「うまくいっている状況」「助けになるモノや人」などをリソース探しの質問を通じ明らかにしていくため、クライエントの自信やモチベーションのアップにつながります。行動として取り組む内容(課題)も、「とりあえずできること」や「できそうなこと」というスモールステップから取り組むため、クライエントの負担は小さくなります。また、短期療法と呼ばれているように終了までの回数が少ないことでも、負担軽減になるようです。

3. どこに着目するのか、道しるべにするものは?

ここまでお読みいただいて、ご自身のキャリアコンサルティングにも活用できるとピンときた方も多いのではないでしょうか。とある支援の中で、こんな例がありました。転職回数が多いAさん。その回数の多さに、「なぜ辞めてしまうのか」と度々指摘され、次の職探しに迷いが出て悩んでおられました。たしかに転職されたということは仕事を辞めているということです。「なぜ辞めたか」に着目するのももっともですが、そのアプローチが悩みを大きくし、モチベーションダウンさせていました。着目する点を「辞めたこと」から「次々に就職できたこと」に変えると、Aさんの好奇心の強さや抜群の行動力、通過する書面を作成する能力や面接を乗り切る力など、多くのリソースが見えてきます。Aさんはご自身の転職回数が多いことにはそれぞれ意味があったことを再発見し、次にめざす道筋も見つかり、力強く歩んでいかれました。どこに着目するかによって、その後の歩みや発揮できる力が大きく違った例の一つかと思います。

クライエントの負担の小ささについても、負担が小さいということは、効果も小さいのではないか? と思う方もいらっしゃるでしょう。

しかし、そんなことはありません。スモールステップに取り組み小さなゴールをクリアすることで、よりモチベーションが湧いてきて、次のステップに進むことができたり、一つがうまくいくと、ドミノ倒しのようにどんどん事態が良循環していく例も多くみられます。小さなゴールをクリアするうちに、いつの間にかご自身の解決像に到着していたという仕組みです。

解決像は、クライエントがどこに進んでいくのかを迷わないような道しるべであり、「北極星のようなもの」とお伝えすることもあります。実際に、どこかに向かって進んでいるけれど、それた方向にいかないように「あっちが北だよ、北の方向で大丈夫だよ」ということを見失わないように北極星を利用することはあるかと思います。ただ、北極星だけでは、どこまで進んでいるか実感しにくいので、とりあえずの目印となる電信柱を身近なゴールと考えると分かりやすいのではないでしょうか。

4. SFAの3つのステップ

SFAのステップとしては、1)「もしも...」を利用したミラクルクエスチョンやタイムマシンクエスチョンで解決像(ソリューションイメージ)を明らかにする。2)「リソース探し」と質問をすることで、クライエントの持っているリソースや強み、うまくいっている点を探していく。3)「とりあえず」という視点で、「できること」「やれそうなこと」を探して実践してみる。ステップとして示すと、このような仕組みになるかと思います。それぞれの段階で、モチベーションを高め、自信をつけていただくためにも、コンプリメントをお忘れなく(リソースという根拠にのっとって、ほめたり、労ったりしてみてくださいね)。

手順やステップとしては、とてもシンプルです。しかし、必ずしも簡単ではなく、修業は必要です。質問力を磨く修行、コンプリメント力を磨く修行が重要になります(筆者もずっと修業中です)。また、それ以上に大切なのは、何に着目するのかの眼鏡をかけ替えること、かもしれません。自然にしていれば、どちらかというと、「うまくいってないこと」や「できていないこと」に直目する方が多いものです。だからこそ、「どれだけリソースを見つけられるか」という目を持つこと、眼鏡の掛け替えが何よりも重要だと言えるでしょう。

5. 自身のキャリアチェンジでも効果を経験

これだけ、SFAに愛着があるのは、もちろん多くのクライエントに効果的であったという経験や事例があってこそですが、実は、筆者自身も自身のキャリアチェンジの過程で、その効果を体感しているからでもあります。カウンセリング修行の初期段階で、ロールプレイを「うまい!」と言ってくださる指導者がいたことで(コンプリメントがうまい指導者との出会い)、学習へのモチベーションがあがり、より学習にどん欲になりました。根拠としてのリソースはあったほうがいいですが、筆者にとっては「うまい!」という一言からどれだけ勇気をもらったことか。その後、SFAの研修を受ける中で、「もしもタイムマシンに乗って10年後に行ったら...」というタイムマシンクエスチョンを行った際、筆者の目の前には大勢の前で研修をしている自分のイメージをとても鮮やかに感じることができました。「この道だ、そちらに進むのだな」と自然に感じた瞬間です。その経験があったからこそ、カウンセラー・講師を業としていくことに舵を切ることができたな~と、今でも感じています。

最後に、私の師であった森俊夫先生に教えていただいた、SFAの三つの中心哲学をご紹介して秀を置きたいと思います。

ルール1 上手くいっているなら、変えようとするな

ルール2 一度でも上手くいったなら、またそれをせよ

ルール3 上手くいかないなら、何か違うことをせよ

とてもシンプルな哲学だと思いませんか。

ケースにあたっても、自身の人生の局面でも、複雑になりそうなときには、この哲学を思い出すようにしています。ぜひ、皆さんのキャリアコンサルティングの実践の中でも、SFAを活用してみませんか?筆者もまだまだ修行が必要です(一生、修行ですよね)。皆さんと一緒に学べる機会がありますことを願っています。

小山 美和(こやま みわ)

小山 美和(こやま みわ)

キャリアコンサルタント、精神保健福祉士、シニア産業カウンセラー、アンガーマネジメントファシリテーター
出版業界で働く中で、業種内で「うつ」に悩む人々に出会い、自身も30歳で自律神経失調症に苦しむ日々も過ごした。これらの経験から職場におけるサポートの必要性を強く感じ、メンタルヘルス支援の世界に転身。複数のEAP、支援機関において延べ1万件を超える対面相談を行い、メンタルヘルス支援とともにキャリアコンサルティングにも当たる。他に、大学でのキャリア支援講師や学生相談室の相談員、ハローワークでの若年者支援も経験。現在、都内でカウンセリングルームを運営している。10数年来にわたりSFAを学習し、カウンセラー養成機関でも長く講座を担当してきた。

コラムの感想等はこちらまで(協議会 編集担当)


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