キャリアコンサルティング協議会は国家資格「キャリアコンサルタント」の試験機関および指定登録機関と、国家検定「1級・2級キャリアコンサルティング技能検定」の指定試験機関です。

マンスリーコラム

2019年2月号

キャリアコンサルタントとして大切にしているクライエントとの関係性と私自身の在り方

私は現在、需給調整機関で発達障害のグレーゾーンの方の支援を主に行っています。彼らは環境やキャリアコンサルタントとの関係性に大きく影響をうけています。彼らの存在に受容的に関わり、共感的に理解し、彼らの拘り、価値観を尊重し、クライエントの視点にたって、彼らがどのように考え、理解し、感じているのか?思いを巡らせていき、彼らの困り感、心の揺らぎ、葛藤、ジレンマに寄り添っていくことにより関係性が深まっていきます。
反対に、経験が浅い頃の私の関わり方は、見たてをたてようとキャリアコンサルタント視点の意識が強くなり、何故そう捉えるのか?そんな理解になるのか?そんな風に感じるのか?とみていく傾向があり、関係性は深められず、表面的な関わりになっていました。

それは、関係機関との連携やチーム支援についても同じことを感じています。私自身も含め、連携を依頼するキャリアコンサルタントがクライエント支援のいきづまりを困った問題と捉えてクライエント自身を横に置いてしまい、キャリアコンサルタント主導で連携を依頼し、働きかけていくと、どこかギクシャクした支援になります。

反対にキャリアコンサルタントが支援の限界に気づき、その事もクライエントに伝え、支援を依頼する連携機関になぜ依頼するのか?依頼した時には、キャリアコンサルタント一人では対応できないどのような支援があるのか、きちんと伝え、クライエントと一緒に検討しながら意向を確認し連携を依頼すると、クライエントを中心にチーム支援の効果がでるように感じます。

その違いは何か?

私には、キャリアコンサルティングの面談にはいるときの心の在り方、またキャリアコンサルタント自身の態度(人間性)が大きく影響しているように考えられます。

カールロジャースの「セラピーによるパーソナティ変化の必要にして十分な条件」が満たしている状態にキャリアコンサルタントとクライエントがあるか?ではないだろうか?

(1)2人の人が心理的な接触をもっていること

(2)第1の人(クライエントと呼ぶことにする)は不一致の状態にあり、傷つきやすく、不安な状態にあること

(3)第2の人(セラピストと呼ぶことにする)は、その関係の中で一致しており、統合していること

(4)セラピストは、クライエントに対して無条件の肯定的配慮を経験していること

(5)セラピストは、クライエントの内的照合枠を共感的に理解しており、この経験をクライエントに伝えようと努めていること

(6)セラピストの共感的理解と無条件の肯定的配慮が最低限クライエントに伝わっていること

これらの6条件すべて重要ではありますが、6番目のセラピストの共感的理解と無条件の肯定的配慮が、最低限クライエントに伝っていること=お互いを信頼した関係性が芽生えていることがキャリアコンサルティングをシステマティックに展開していく最も重要な要素なのではないかと感じています。

まだまだ発達途上ではありますが、私自身が1級キャリアコンサルティング技能士を目指していく中でどのようにスキルを身につけてきたか振返ってみると、まず自分自身を知ること、そして人間性を高めることに努めてきました。様々な心理療法の講座を受講し、第1人者の先生から多くのことを学ぶことにより、私の中の準拠枠を少しずつ広げていく事が出来ました。その中でも、ハコミセラピーのセラピストがマインドフルネスの状態(防衛のない意識状態)での安全な関わりや、ラビングプレゼンス(心の満ち足りたお母さんが生まれたばかりのかわいらしいわが子を穏やかで愛にあふれ、大切そうに寄り添う様子)という在り方がクライエントに大きく影響を及ぼすということを、身をもって体験できました。

コミュニケーションの3つのレベル(1)言葉のコミュニケーション、(2)気持ちのコミュニケーション、(3)存在のコミュニケーションがありますが、そのうち(3)の存在のコミュニケーションの威力は、ただそばにいるだけで感じること(癒し)をもたらすことができます。そのような学びを継続して行く中で、面談に入る際、肩の力を緩めてクライエントと寄り添えるようになってきたと思います。

この人間性を高める学びも1級キャリアコンサルティング技能士を目指すプロセスの中での成長であり、1級キャリアコンサルティング技能士を目指していなければ、また発達障害の方の担当業務でなければ、今の学びの深さまではたどり着けていなかったかもしれません。

キャリアコンサルタントの自己研鑽は、日々の面談の中で日常的にクライエントに対して受容・共感的に安定して関われること、そのトレーニングが重要だと私は感じています。

1回、1回の面談をリセットし、自分自身の心の状態を整え、新たなクライアントとラビングプレゼンスの在り方で愛をもって関わっていく。また自身の面談内容もスーパービジョンを受け、きちんと振り返りながら改善していく。その結果、クライエントの障害という問題にも一緒に掘り下げて検討していける関係性が築けるようになったと感じています。

キャリアコンサルタントの自己研鑽は終わりがなくどこまでも続いていきます。クライエント支援においてより良い支援の追及をし、クライエントと共に私自身も成長させて頂けます。その結果が更なるスキルの向上に繋がっていくと思います。

私のキャリアコンサルタントとしてのニックネームは「ラブちゃん」です。偶然なのか?必然なのか?わかりませんが、私に毎回大きな気づきをあたえ、指導して頂いている中部地区の巨匠 藤田廣志先生につけて頂いた名前です。私自身すごく気にいっています。何かの本で氏名は使命と変換されると書かれていた記憶があります。
私はキャリアコンサルタントとして、ラビングプレゼンスの思いを言葉に乗せて、キャリア支援・キャリアコンサルタントの育成に携わっていくことが使命のように感じています。

地主 久美子 (じぬし くみこ)

地主 久美子 (じぬし くみこ)

三重県在住 接客販売業にて店長職に従事。その後、人材派遣会社に再就職し、派遣スタッフのマッチング業務に加え、職業訓練校で若年者から中高年の就職支援セミナー、キャリアコンサルティング、ビジネスマナー研修等を担当。現在は公的機関でキャリアコンサルタントとして活動し、年間延べ2,000人の相談業務を実施。需給調整分野のキャリアコンサルタントとして、「労働の人間化」に貢献していくことを目指し、クライエント支援と環境への働きかけを行っている。

【保有資格】1級キャリアコンサルティング技能士/国家資格キャリアコンサルタント/CDA(キャリアデベロップメント・アドバイザー)/産業カウンセラー

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