マンスリーコラム
教えられている私
○私は現在企業内キャリアコンサルタントとして社員たちに対するキャリア相談を主な業務としていますが、それに加えて、国家資格キャリアコンサルタント試験のアドバイス業務を行っています。社内でキャリアコンサルティング経験は3年以上あるものの、養成講座に通う時間的な余裕のないメンバーに個別の支援を行っており、この2年間で20名以上の合格者を送り出すことが出来ました。今回はこのアドバイス業務から感じることをいくつか書き出してみます。
【人間の能力は限りがない】
勉強に向き不向きは当然あり、スタート時点では今までに受験経験などのある人のアドバンテージは非常に大きいものです。しかしながら試験本番になると、それまでの経験とは別に個々人の底力が発揮されます。私は常に、試験に合格する秘訣は「選択」と「集中」それに加えて「執念」ですと話しています。忙しい本業の中、限られた時間でやるべきことを絞ることはもちろんですが、それ以上に「どうしても受かりたい」という気持ちが持てるかどうかが合否の重要な要因となります。正直なかなか合格ラインは難しいかなと思ったメンバーでも、持ち前の「執念」で終盤驚くような力を発揮し、経験のある人を追い抜くような事例もたくさんあります。私の役割りは知識付与することというよりは、気持ちをモチベートし高めていくことが主であると感じており、改めて人間の能力の偉大さに日々驚くばかりです。
【実技能力は経験だけではない】
当然のことながら、経験の多さと実技のスキルとは比例しません。むしろ面談のやり方に独特の癖のついているメンバーは、やり方の矯正に時間がかかります。ロールプレイングを見ていると、ついつい悪い点の指摘をしたくなりますが、人に寄り添うこと・相手の気持ちを話して貰うことに徹して下さいというアドバイスを心がけています。頭で考える癖のある人は、相談者が心を開いてくれない時に、「どういう質問をすれば、相手は話をしてくれるようになるでしょうか」とか「相手の気持ちが明るくなるためのキラークエスチョンはありませんか」と聞いてきます。似たようなコンサルティング事例はあっても、相手は毎回異なる相談者であり考え方も経験も一人ひとり違うのですから、共通の便利なツールはなく、ハウツーでは真の対応は出来ません。このあたりの感覚や呼吸を体で会得されたメンバーは、こちらが見ていても惚れ惚れするような対応が徐々に出来てきます。当方が教えられるのは、この感覚や呼吸を身につけて頂くことだけです。
【試験に合格することだけが人生ではない】
12月のマンスリーコラムにも書かれていていたく共感しましたが、試験に合格することだけが目的ではありません。私が勤める企業では日頃からコンサルティング的な業務がたくさんありますが、合格した後に「本業にものすごく役立ちました」「今までの面談のやり方は何だったのかと思うくらい、目からうろこ状態です」などといった感想が届くのは、私にとってもこの上ない喜びです。アドバイスしながら確実に人間として成長しているな、と感じるメンバーに出会うと本当にやりがいを感じます。試験に合格して貰うことよりは、そのメンバーの人間力を高めて貰うこと、口はばったいようですがそんな気持ちを日々感じています。特に苦しい試験勉強中になんらかの気づきを感じたり、新鮮な発見があったメンバーは、資格取得後の変容が著しい気がします。日々発見のある人に進歩あり、といったところでしょうか。
こうしてみると、試験のアドバイス業務もキャリアコンサルティングそのものといえるのかも知れません。所詮は自分で考え、自分で気づかないと前進できない、いわば成功のキーは自分の中にあるということでしょう。このアドバイス業務を始めた頃は、ともかく多くの知識や技能を教えこんで合格者を1人でも増やしたい一心でひたすら頑張っていましたが、ある時からそうではない、皆さんの可能性を引き出すための鏡になるべきだと考えを改めました。また勉強中に心が折れそうになるメンバーの気持ちに寄り添うことが重要であると考え始めました。その頃から受講メンバーとの意思疎通が容易にできるようになってきたことを実感します。受講メンバーに教えられているのは逆に私なのかもしれません。
コラムの感想等はこちらまで(協議会 コラム担当)
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