キャリアコンサルティング協議会は国家資格「キャリアコンサルタント」の試験機関および指定登録機関と、国家検定「1級・2級キャリアコンサルティング技能検定」の指定試験機関です。

マンスリーコラム

2019年4月号

『キャリアコンサルタントとしてずっと考えていたこと』

私は2003年にキャリアカウンセリング養成講座(当時の日本DBMマスターキャリアカウンセリングプログラム)を終了しキャリアコンサルタントの資格を取得しました。

当時は企業の人材開発部に所属していたことから企業内社員のキャリア支援の関りから私のキャリアコンサルタントとしての仕事は始まりました。その後は、より専門的にキャリアデザイン学を勉強したくて東京での単身赴任時を利用して、法政大学大学院経営学研究科キャリアデザイン学専攻で修士号を取り、定年前後のキャリアを生涯発達の観点から研究しました。定年退職後は地元の四日市に戻り、若者の就労支援(地域若者サポートステーション)と定年退職前後の方たちの定年前後のキャリア支援を行っています。企業内での中堅社員、働きにくさを抱えた若者、定年前後の高年齢者と、異なる世代のキャリア支援を行ってきました。

キャリア形成支援と文学

約16年にわたるそれぞれの世代のキャリア支援の場で感じたことは、企業内での中堅社員の支援には心理学の基本知識は当然ながら、経営学分野(特に人と組織に関する分野=人的資源管理・組織行動)の知識がないと支援はできません。若者の就労支援の場ではこれらに加えて教育学分野や社会学分野の知識が必要です。そして中高年齢者の支援には社会学分野、さらに老年学分野などの幅広い知識も必要となります。こう考えると、いずれの世代のキャリア支援においてもキャリアコンサルタントには、心理学分野の勉強・知識は必要ですが、経営学(特に人と組織=人的資源管理・組織行動)の勉強や知識は不可欠だと思います。そして、教育学、社会学などの幅広い分野の勉強・知識も必要となります。

そして、最近特に大切だと思うものが文学の分野(現代小説や現代ノンフィクション)です。小説等にはいろんな職業・職種の主人公が登場します。小説を読むことで何十種類もの職業や職種をあたかも経験したかのように学ぶことができます。それもかなり詳しくです。働き方もいろいろで、さらに主人公の世代や性別も異なります。職業理解・仕事理解にこれほど役立つものはありません。また主人公の仕事ぶりや姿勢、考え方、生き方等などから何十種類ものキャリアを考えることもできます。もちろん主人公を取り巻く人間関係などは複雑で、ここでも何十種類の人間関係の在り方を学ぶことができます。なによりその人の"キャリア"という視点からの事例には事欠かないからです。

私も40年近くサラリーマンを経験しましたが、二つの会社(転職を1回経験)しか経験がないので、その他の職業についてはよくわからないものです。キャリアコンサルタントとしての仕事の領域は実に幅広くなってきています。そうしたことからキャリアコンサルタントがクライエント一人一人により最適なキャリア支援をしていくには文学(小説等)から学んでいくことはとても重要だと痛感しています。

クライエントと未来を見る

もう一つ大切なことは、支援ではクライエントに未来を見せてあげる(クライエント側からは未来が見えた、あるいは見えかかった)ことだと考えます。自分に未来が見えた時、あるいは見えかかった時に人のキャリアはスタートします。未来が見えることは、企業内中堅社員や若者に限らず中高年支援においても何ら変わりません。未来が見えないから、悩み、迷い、わからなくなりキャリアが停滞します。メンタルの悩みの後ろにはキャリアの悩みがあるとも言われます。どうやって未来を見せてあげられるか(未来を見つけてくれるか)をいつも考えながら支援をしています。メンタル不調や発達障害を抱えたクライエントにも、より専門的な支援と合わせて、やはり未来を見せてあげることが大切だと考えます。

「今の部署で評価も低く悶々とした状態で仕事をしているから成果も上がらない、そこで興味のある新規事業分野の仕事を見つけ社内応募し、自ら異動の場を求め、能動的にやりがいを見つけた中堅社員」「コミュニケーションが極端に苦手で、人に話しかけることも苦痛、話しかけられてリアクションをとることも相手に迷惑をかけていないかと・・・そこで大型免許を取り一人で黙々と仕事のできる長距離トラックの運転手の仕事に道を見つけた若者」「一人暮らしをしたいという夢から、収入も考慮し障害を抱えながらも一般就労で製造系の正社員を見つけ一人暮らしに向けて一歩を踏み出した若者」「介護職で職場適応などに悩みながら仕事を続けるも、もう一つ別の角度から介護の仕事をすることで、変わる自分を見たいと看護師になるため看護学校への進学を決めた女性」「事務職仕事が上手くいかず、事務職を転々とする中で、一生働くのなら手に職を付けたいと家具組み立ての製造の仕事を見つけていった女性」「定年後に特にすることもなく不安を感じていたとき、学生時代に少しかじったエレキギター演奏をやってみたいと思ったことから、中高年グループのバンドに加わりイベントなどでのボランティア演奏を経て今はライブハウスでお金を取って演奏することもあるまでになり、先を見つめ練習に打ち込んでいる定年退職者」等々、これらの人たちは自分の未来が見えたのだ思います。未来を見つけた人のキャリアは強いと実感しました。

キャリアコンサルタントはキャリア支援の専門家ではあっても、キャリア分野の学者先生ではありません。専門的な勉強も必要ではありますが、現実に即した多くの引き出しをもってクライエントの支援をしていくには特に経営学、そして教育学、社会学分野の幅広い勉強と、文学(小説やノンフィクション)に数多く親しむことを私はしていきたいと思っています。

そして、クライエントとの信頼関係を基本に、あらゆる世代を超えてクライエントが未来を見つけてくれる支援を、そして社会に役立つキャリアコンサルタントを心がけけていきたいと思っています。

森 俊昭(もり としあき)

森 俊昭(もり としあき)

三重県四日市市在住
2013年6月KDDI㈱退任。営業、総務、人事、人材開発を経験、最期は関連会社の監査役で退任。人材開発部では社員のキャリアカウンセリング、キャリア支援、人材育成研修等も経験。また関連会社出向時には採用業務も経験。定年後は四日市のNPOに所属し「北勢地域若者サポートステーション」の責任者として働きにくさを抱えた若者の就職支援に携わる。一方で主に定年退職者を中心とした四日市市委託の地域活動と定年退職者のマッチング事業である「人財ポケット」の運営委員、また岐阜県大垣市で市民大学「岐阜コミュニティ創造大学・大垣キャンパス」で講師をしながら中高年者のキャリア支援にも携わっている。
資格:キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、MBA

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