マンスリーコラム
キャリア形成支援の難しさと新たな挑戦
現在、私は主に矯正施設で仕事をしています。非行や犯罪によって施設に収容された人たちが社会復帰する際の就労支援です。「大変な仕事だよね。」と言われることがありますが、キャリアコンサルティングの大変さはどの分野にも付き物だと思いますので、矯正施設だからといって特別大変な仕事であるとは感じていません。しかし、今まで学んできたキャリアコンセルティングの知識や手法がそのままでは通用しないことが多々あります。そのようなことから、仕事と並行して矯正施設内でのキャリア形成支援を効果的にするための研究も行っています。
<キャリア形成支援の難しさ>
クライエントには、学校教育を十分に受ける機会がなかった人たちが多くいます。学校教育を受けていないということは、学科教育だけではなく、キャリア教育を受ける機会も逸しているということになります。そのために、自分自身のキャリア形成について無関心であり、その日その日さえ良ければ問題ないと、目の前のことにしか意識が向かない人たちが目立ちます。一旦は職業に就いても、その後の生活上で起こりうるリスクを考えないまま、仕事を辞めてしまう人が多数いますが、このような背景が原因の一つであると思われます。
現状の支援では、雇用環境を整えたり、地域社会に働きかけを行ったりする福祉的な側面は充実してきており、社会復帰前に就職内定を受けている人は沢山います。しかし、何度も述べますが、一旦は就職してもすぐに離職してしまう人たちの割合はかなり高いものになっています。就労支援は出来ても、キャリア形成支援は出来ていないと言えるでしょう。そのような状況に応えるべく、キャリアコンサルティングに臨んでいるのですが、今まで学んできたキャリア理論や手法をどのように活用すれば有効なのかが、本当に見えてこないのです。
<効果的な支援方法を目指して>
犯罪者等の人たちにはキャリアの概念は通用しないと言う人もいます。しかし、人にはそれぞれのキャリアが必ずあるものだと思っています。誰しも在りたい自分の姿はあると信じます。そのような背景から、彼らの生活観や職業的発達に興味を抱くようになりました。そして、それを明らかにすることで、支援方法の手掛かりが見つかるのではないかと考えました。冒頭に研究活動を行なっているといったのもこのような経験があったからです。
キャリア形成支援を行なっているといつも何らかの課題が見えてきます。既存の理論や手法を活かせる場合もあれば、まだ解明出来ていないケースもあります。支援がうまく進むときもあれば、行き詰まることもあります。いつも未知の世界に接しているといっても良いかもしれません。だからこそ、問題の理論的解明とそれに伴う支援スキルの向上が必要だと思います。目の前のクライエントだけでなく、将来巡り会うかもしれないクライエントのためにも学びの歩みは止められないと思っています。
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