キャリアコンサルティング協議会は国家資格「キャリアコンサルタント」の試験機関および指定登録機関と、国家検定「1級・2級キャリアコンサルティング技能検定」の指定試験機関です。

マンスリーコラム

2020年2月号

「新規学卒者の離職状況」から思うこと

毎年10月頃に、新規学卒者の離職状況が厚生労働省より発表されます。そのデータは一般的な認識として皆さんもよく耳にしている離職「七五三」です。それぞれ、学歴別に就職して3年以内の離職率を示しています。中学卒で、7割、高校卒で5割、大学卒で3割の人が、3年以内に離職しているという現実です。それをキャリアコンサルタントは、どう考えていけばよいのでしょうか。人材の流動化という視点で、欧米と比較して流動化が低い日本では流動化が進み、社会全体では良いことだと捉える視点をお持ちの方もいれば、一方で、企業側の視点で「新卒時の採用コストが無駄になる」、「人員構成の長期的計画が崩れてしまう」「中途採用を継続的に行わなければならない」といったデメリットとしてとらえている人も多くいます。毎年発表されるデータをメディアは、あまり好ましくないというニュアンスで報道しているように感じますが、社会全体の価値観は、この30年で大きく変化しているのは間違いなく、転職は当たり前で「石の上にも三年」という言葉は、若者にとっては、死語になっていると思いますし、早期離職は、決して後ろめたいことではないという価値観が主流になっていると言ってよいでしょう。一方で、高度成長期の日本経済を支えてきた「企業戦士」という表現が当たり前であった時代の働く人から見ると3年以内に会社を辞めて「転職」するなどというのはもってのほかだという価値観が今も残っていると感じることもあります。メディアの何となく早期離職は由々しき事態でもあるというニュアンスの報道は、若者の立場ではない観点にも配慮していて、それが報道に表れているのだと感じます。

ただ、ここで着目したいのは、この30年、早期離職者の流れは大きな変化はなく、バブル景気崩壊の後の就職氷河期と言われている時代の数年は、若干3割を下回っていますが、大きな流れとしては、早期離職者が一定の割合で存在していることに変わりはないという事実です。ここにキャリアコンサルタントも、業界全体も着目すべきことがあるように思います。時代や働く人の価値観が変化しているにも関わらず、一定の割合で、早期離職者が存在している。自身のキャリアを見つめ直し、軌道修正する人が少なからず存在しているということです。私たちは、逆に、この30年は、働く若者の価値観は、変わっていると思い込んでいて、実は変わっていないのかもしれないということも言えるかもしれませんし、人間の経済活動においては、30年くらいのタームでは働く人の意識の変化は起きていないとの解釈も可能なのかもしれません。いずれにしても、新卒の3年以内で離職する人が多く存在しているということは、キャリアコンサルティングを行う上でもその背景も含めて、知っておくべきことのように感じています。

この20年で終身雇用制の崩壊が進み、人生100年時代のキャリア形成においては、最初に就職した企業で、仕事人生を全うする人は少なく、働く人の価値観も変化し続けているのは間違いないと思われますが、早期離職の割合はあまり変わっていない。それをどう解釈すればよいのでしょうか。現象として、理解していても、その背景にあるものについて、キャリアコンサルティング業界全体で検討してもよいテーマであるのではないでしょうか。

実際のキャリアコンサルティングの場面で、3年以内の若者の転職相談を受けることも少なくありません。個人の長期的なキャリア形成という視点では、3年で離職してしまうのは、どうももったいないという感覚を、私自身が捨てさることはできませんが、相談の現場で、20年前の早期離職者と今の早期離職者で違いはあるのか見出そうとしてもなかなか違いは見えてきません。もしかすると、働く環境が変化したとしても働く人の中の意識構造は、普遍的なものがあり、就業環境がどのように変化しても一定数の人は、変化したいと考えてしまうのかもしれません。このように考えると、常に働く人の中で、キャリアコンサルティングを必要とする人が、少なからず存在し続けるように思われます。そういう観点からすれば、働く人がいる限り、キャリアコンサルタントの仕事はなくならないといえるかもしれません。

私自身、学卒後2年で転職しました。その後のキャリアは、次の会社が3年数カ月、その次が2年です。それまでの自身のキャリアを振り返っても、その当時は迷走していたのだと思います。3社目が人材ビジネスであったこともあり、キャリア形成に関心を持ち、自分の生きる道を探し求めて、今の仕事(キャリアコンサルティング)にたどり着いているのですが、実感として個人的には、早期離職は、個人のキャリア形成にとっては、あまり好ましくないケースが多いと感じています。

初めての社会人経験で最初の会社で自分にフィットしない場合にどうしたらよいのでしょうか。皆さんはどのようにキャリアコンサルティングされていますでしょうか。

今はキャリアコンサルタントの存在意義についての理解は深まり、以前にも増して必要性が問われていることは、間違いない事実ではありますが、キャリアコンサルティングの効果をキャリアコンサルタント自身が実践的に理解し、それを自身の言葉で、言語化できていますでしょうか。私自身を振り返っても、キャリアコンサルティングの効果を、すべて理路整然と伝えることはとても難しいと感じています。

特に若年層のキャリアコンサルティングは、その後のキャリア形成に大きな影響を及ぼすという視点では、キャリアコンサルティングの影響が長期間にわたる可能性があるかもしれないということを自覚しながらキャリアコンサルティングを進めることが重要ではないでしょうか。さらに言うならば、就職するまでのキャリア教育は、見方によっては、もっと長期的な影響が大きいのかもしれないとの前提で、相談者と対面しなければならないと思うのです。中高年のキャリアコンサルティングの場面においては、実感として、人生は何度でもやり直しがきくものだとも考えていますが、柔軟な心で、どんなかたちに社会が変容・変化したとしても、自分を取り巻く環境が変化したときにも対応できる能力を養うことがキャリア教育の初期の段階から必要なのではないかと強く感じています。

そして、私たちは、なぜ変化に対応できる能力が重要なのか、明確に学生や、早期離職者、再就職を目指している人に伝えることができなければならないと強く感じます。それを伝えられれば、個人のキャリア形成をサポートする視点で、まずは、キャリアコンサルタントとしての一歩を踏み出すことができて、キャリアコンサルティングの価値、意義を伝えることができるのだと考えてもよいのではないでしょうか。

ACCNが立ち上がって1年が経過しようとしていますが、今の時代背景とともに、皆さんは、どのようにお考えになりますでしょうか。

佐々木 新吾 (ささき しんご)

佐々木 新吾 (ささき しんご)

2級キャリアコンサルティング技能士
ACCN北関東支部支部長
NPO法人 日本キャリア・カウンセリング研究会 理事

大学卒業後、IT技術者派遣会社に就職。求人媒体発行出版社等を経て、民営職業紹介事業者のキャリアアドバイザーとしてキャリアコンサルティングに22年携わる。就職・転職・再就職には、相談者の自己理解がカギであるとの認識から、キャリア理論を自己理解の観点から研究。2019年に独立。現在、NPO法人日本キャリア・カウンセリング研究会のキャリアコンサルタント育成プログラムの企画開発事業に参画。大学生のキャリア教育、体育会系学生の就活支援プロジェクト等にかかわりながら、企業の外部契約コンサルタントとしても活動中。

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