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マンスリーコラム

2020年9月号

障がい者雇用に思うこと

現在、公的機関で障がい者雇用促進関係業務に従事している。

先日、「こちらが求める人材に出会えないと悩んでいる人事担当者は少なくない、障がい者雇用においても例外ではない」という新聞記事が目に留まる。

厚生労働省の「令和元年障害者雇用状況」によると、法定雇用義務のある企業の障がい者雇用数は過去最高の631、286人、法定雇用数の目標値からみると約650、000人分もの障がい者雇用枠が残っている計算になる。

一方、「ハローワークの障害者職業紹介状況」によると、300、518人の有効求職者に対し就職件数は102、318件と約200、000人もの求職者が職に就いていないことになる。

もちろん障がい者側の事情も否めないが、いずれにしても約650,000人分もの法定雇用枠が有るにも拘わらず、障がいのある求職者が約200、000人も職に就いていないこの実態は何故なのだろう。

先日も某企業の人事担当者から、障がい者の雇用が進んでおらず未だに障がい者ゼロ、採用したいがどこへ相談すればよいのか?と相談され、「ハローワーク」「地域障害者職業センター」などの窓口へ相談するよう促した。

普段の仕事柄、障がい者雇用について、大手・中小企業の人事担当者と話す機会が多く、異口同音に「うちに合う障がい者がなかなか採用できない」「障がい者を雇用したいがどこに」「障がい者雇用に不安」「障がい者が定着しない」「障がい者の高齢化で後継者が見つからない」などの声をよく耳にする。

民間企業で法定雇用率(2.2%)未達成企業は全体の52%、中でも労働者数「45.5人~100人未満」規模の障がい者雇用ゼロの企業はなんと93.7%にもなっているこの数値から、企業規模が小さいほど障がい者雇用に苦戦を強いられており、これらを鑑みても障がい者雇用で悩んでいる企業は決して少なくないとみる。

令和2年4月「障害者雇用促進法」の一部が改正され、「週10時間以上20時間未満の障害者も給付金対象とする」など一般企業の障がい者雇用の底上げと、公的機関のみずまし問題の信頼回復など、今後は法定雇用率の引き上げ予定もあるという。

ここにきて法定雇用率未達企業などは、障がい者雇用の解決策について積極的に模索する時期が既に来ているのかもしれない。

だからといって、小手先の義務感や無理な数字あわせの障がい者雇用では、結果として双方ともに上手くいかない、人材の定着も実現しないとみるがいかがだろう。

「仕事がある」ということは、単に収入を得るということだけではなく、「なりたい自分に近づく」「社会とのつながりを感じる」といった、仕事を通して行う自己実現でもあり、そこには障がいのあるなしは関係なく、人は皆、仕事を通して輝く力と可能性を持っているという。
一方、全ての企業は何らかの形で社会に貢献するために存在し、企業は常に社会の役に立てる機会を模索している。

我々キャリアコンサルタントとして、この「障がい者の自己実現」と「企業の社会貢献」を結びつけ、障がい者と企業のどちらもが輝き、幸せになれる橋渡し役ができればこの上ない未曾有の歓喜に浸れると思うが、いかがだろう。

山岸 茂樹(やまぎし しげき)

山岸 茂樹(やまぎし しげき)

ACCN北海道支部副支部長
2級キャリアコンサルティング技能士
国家資格キャリアコンサルタント
JCDA公認CDA

大学卒業後、航空会社系の旅行代理店に勤務、その後ハローワークで
「就職支援ナビゲーター」・「ジョブサポーター」として幅広い求職者に対し
職業相談/職業紹介を中心に、個別支援、大学等への出張相談、各種セミナー講師
等を担当、現在は公的機関にて障がい者雇用促進関係業務に携わる。

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