マンスリーコラム
学生に寄り添う支援とは
「自分が入れる会社はどこですか?」
こんな相談を受けることが時々ある。進学率の向上に伴って、高校・大学入試も多様化し、推薦入試(現推薦型選抜)やAO入試(現総合型選抜)などで確実性を担保された上で進学する学生が多くなっている昨今、就職先も「確実に」と考える学生が増えるのは仕方のないことなのかもしれない。
私自身、大学卒業後塾・予備校での経験を積む中で、いかに合格実績を向上させるかという方法論を常に考えてきた。そのために徹底したデータ収集や試験分析を行い、受講生に対して的確な指導を行うべく、常に理論武装をする日々であった。自分が在職する会社はもちろん、大切なご子息・ご息女を預ける保護者、取引先の各学校機関、満足する結果を出せるよう取り組んできた。そんな中、学生を支援していくにあたり、「なぜ公務員になりたいのか」という質問に答えられない学生が多いことに気付くようになってきた。
「良い会社に入る」、「公務員になりたい」、このこと自体は学生が今後描いていくライフプランにおいて決して悪いことではない。実際、東日本大震災や現在のコロナ禍において多くの企業が経営の危機を迎える中で、このような想いを持つ学生は増えている。しかし、多くの学生は自身の外的キャリアしか理解していないものが多く、内的キャリアに気づけていないことが多い。そのことを感じ始めたとき、自分自身何ができるかと考え始め、キャリアコンサルタントという資格に出会った。
2016年にCDA、2019年に2級技能士を取得することで自分のスキルに自信を持てるようになるとともに、学生一人一人の声に耳を傾けることができるようになった。取得当初は学生が自分の心の内を話してくれることに不思議な感覚を覚えていたが、積み重ねることでそのことが支援者としてあるべき姿だという使命感を感じるようになってきた。多くの学生に出会い、様々な形で支援し、感謝されることでこの職業に対して今まで以上のやりがいを覚え、より良い支援とは何かを考えるようになり、その後も自己研鑽を重ね取り組んできた。
現在私は短期大学に在職しているが、その学生の様子は様々だ。その中で感じることは1日でも早く社会に出てどんな形でも社会に貢献したいという学生が多いことだ。大学4年間は長すぎる、でも高校卒業で社会に出るのは不安...、そんなニーズに対応できるのが短期大学や専門学校といえる。その中で短期大学は短期大学士の学位が得られるとともに、教養を幅広く学びながら、専門性を得ることができる。学生はそんな中で日々勉学に励みながら、社会貢献活動やアルバイトなど様々な形で日々成長し、社会に出ていく。
当然、課題も多い。進路においては本学の場合、大半が就職となるが、2年間の中で4大生同様の流れで就職活動を進めていかなければならず、インターンシップや説明会への参加もままならない状態で企業選びを行っていく。さらに昨今の社会情勢もあり、4大生の地元志向が強くなっていることから、もともと一般職への就職を希望する短大生にとって影響が大きく、その進路決定に向けては苦難の連続である。
そうした中で本学は学生との距離が近いというメリットを活かし、学生一人一人に教員、職員、相談員が一体となって関わり支援することを意識している。授業は教員、相談や企業開拓は職員や相談員、のような役割分担を極力無くし、教職員が一体となって進路のサポートを行っている。そうしたことで学生の特性に合った支援が可能になるとともに、支援する側も自分の得意、不得意を理解し学生に合った支援や情報提供ができるのである。
学生に寄り添う支援とは自分自身のキャリアコンサルタントとしてのスキルや経験はもちろん、いかに周りを巻き込んで、学生により良い支援を行う環境を整備するかだと考える。キャリアコンサルタントとして自身のスキルアップはもちろん、様々な角度からキャリアについて学び、より多くの学生が自律的にキャリア発達できるよう引き続き取り組んでいきたいと思う。
コラムの感想等はこちらまで(協議会 編集担当)
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