キャリアコンサルティング協議会は国家資格「キャリアコンサルタント」の試験機関および指定登録機関と、国家検定「1級・2級キャリアコンサルティング技能検定」の指定試験機関です。

マンスリーコラム

2021年2月号

「コロナ禍での就職活動」 2020年を振り返って

2020年はあなたにとってどんな一年でしたでしょうか。「新型コロナウイルス」の世界的流行が生活や働き方、教育のあり方に大きく影響しました。2021年を迎えた今もコロナの猛威は収まらず、さまざまな報道を目にして憂鬱な気持ちになる方もいるかもしれません。

初回の「緊急事態宣言発令期間」が選考スタートの時期と重なり、4年生(2021年卒業予定者)の就職活動は混乱し、売り手市場だった学生有利な状況から一変しました。学生は求人が減ってなかなか内定に至らなかったり内定取り消しが発生したりと、不安と隣り合わせのなかで就職活動を進めてきました。

私は約5年大学のキャリアセンターに勤務した中で、キャリアコンサルタントとしてどんな風に学生を支えられるのか、学生にとってキャリアセンターとは何なのかを模索しながら行動した一年でした。

今回は2020年「コロナ禍での就職活動」を振り返り、それらを踏まえた上で2021年どのような支援をしていけばいいのか、ヒントとなるような事がお伝えできればと思っています。

1.「コロナ禍」での就職活動(学生)
2.「コロナ禍」での採用活動(企業)
3.大学キャリアセンターの取り組みと今後

1.「コロナ禍」での就職活動(学生)

4月の緊急事態宣言により「早期に活動した学生」と「活動が遅れた学生」で内定に至る時期が分かれたのが特徴的でした。私が勤める大学でも5月頃、電話などで現在の活動状況をヒアリングしたところ、おおよそ3つのタイプに分かれました。

①早期選考ですでに内定を得ていた学生
②活動中だが緊急事態宣言により中断した学生
③まだ活動しておらずこれから活動する学生

①は緊急事態宣言前に内定し、活動を終了している学生が多くいました。以前から"早期に動いた学生は早期に終わることが多い"傾向があり、2020年はより表面化したように思います。

この時期②の学生が一番不安を覚えていたことも印象的でした。学生の動きが鈍いことから採用活動をストップする企業もあり、解除される5月下旬頃まで次の選考の連絡が未定に。学生は「このまま採用がなくなってしまう不安」と「いつ終わるのか分からない焦燥感や無力感」に駆られました。

③の学生も合同企業説明会や対面の説明会が減り、②の学生も含めて活動が「長期化」した傾向にありました。あくまで体感ですが、6月中旬頃から企業の説明会などが少しずつ再開されてきたように思います。長期化したことや先の見えない焦りで、疲れや落ち込みが見られる学生もいました。

2.「コロナ禍」での採用活動(企業)

10年分を先取りしたかのように「オンライン化」が進みました。企業の採用担当者と話しているとコロナ禍で業務が煩雑になり、webでの説明会や面接、インターンシップも手探りの中で行ってきた印象があります。

緊急事態宣言で採用活動を一時中断し、内定のピークが後ろ倒しになりました。特に業界によっては売上などの先行きが見えず採用計画が変更になる企業もありました。例えば旅行業界は採用が少なくIT業界は採用意欲がある企業が多いなど業界ごとに差があり、旅行や航空、アパレル業界などを志望する学生には、他の業界も幅広く見ながら活動するようにと伝えています。

3.大学キャリアセンターの取り組みと今後

様々な取り組みをしてきましたが、特に『LINEチャット相談』の導入は良かったことの1つです。

以前から「学内イベントの告知用」としてLINEを利用していましたが、大学に来ることができない学生や、このような状況でも就職活動をしなければいけない学生の心配事や不安を少しでも解消できるよう、7月にチャットのシステムを導入しました。

特に夜、質問が思い浮かぶのではないかと予想し受付は24時間、職員やキャリアコンサルタントでシフトを組み、チャットの返信を9~19時の間で行っています。開始2か月で寄せられた相談はおよそ250件になりました。

質問内容と言えば、選考についてやコロナ禍での不安、学内イベントについての質問など様々です。チャットを接点として面談を予約してくれる学生もおり、キャリアセンターを知ってもらうきっかけにもなったのではないかと思います。

またキャリアコンサルタントによる取り組みとしては、「テーマごとの就活講座」をオンラインで行っています。大学ではガイダンスなど講師へ外注依頼することも多く、本学ではそれとは別にキャリアコンサルタントが学生の傾向やニーズにあった講座資料作成と講師を務めることで、きめ細やかなサポートを行っています。

「学生へどのように情報を届けるか?」という課題については、今でも模索中です。上記で書いたように色々な支援を行っていても、学生が存在を知らなければ意味がありません。

今まででしたら対面で友達と授業終わりに立ち寄ってくれた学生、先生が連れてきてくれた学生など「偶然の積み重ねでの出会い」がありました。オンライン授業になり大学内だけでもメールや情報が増え、受け取る学生はすべての情報を見きれない状況です。

また友達や教員などと会う機会が減り、周りがどういった状況なのか情報を掴むのが難しくなっています。情報を届ける仕組みを作るなど、学生の二極化が進まないよう、特に「行動することに時間がかかる学生」のサポートが必要です。

さらにコロナ禍で学生のメンタル面のケアやリファーも必要であることも痛感しました。本学では学生相談室の先生方と連携しており、定期的に情報交換を行うことで学生の状況を把握し、アドバイスをいただくなど大変勉強になっています。

大学の部署同士で連携できれば「包括的な支援」ができ、学生にあった支援や対策がよりできるはず。キャリアコンサルタント自身が知識を身に付けることも重要ですが、周りに働きかけ物事を進めていくスキルを発揮していくことで、より良い支援ができると思っています。

2020年に気づいたことは「どんな変化がきても日々変化に対応しようと努力し、一人ではなく皆で力を合わせることが大きな力となり、新たな知恵を産む」ということです。

何が最善か、何が正しいかその時には分からなくても、その時々で試行錯誤を繰り返しベストを尽くしていくことで新たな視点が見えてきます。

キャリアコンサルタントとしてどんな状況でも「学生の味方」となり、納得がいくファーストキャリアを築くための"伴走"をすることが大切だと思っています。どんな学生であろうと、日々幸せに生きるためのキャリアを描いてほしいと願ってやみません。

そのために私達にできることは業務の向き合い方や在り方を振り返り、研鑽を積むこと。部署内だけでなく、他部署や先生、地域、保護者、企業と連携することで包括的な支援を行うこと。

少子化が進む中、産業界からも保護者からも大学の就職支援にますますの期待が寄せられています。キャリアセンターの役割の重要性は今後も高まるはずです。

このままコロナの影響が長引けば、3年生の採用もより厳しくなることが予想されます。「コロナ禍の就職活動」についての情報を届けながら、早期から準備を進められるよう大学と社会をつなぐ「門番」の役割を果たしつつ、彼らのそばで成長を楽しみに伴走していきたいと思っています。

石津 万歩(いしづ まほ)

石津 万歩(いしづ まほ)

大阪の総合大学でキャリアカウンセラー約5年勤務。20代は自分探しで、図書館員から外資系生保セールスまで様々な仕事に転職。大阪府の工科高校で生徒のインターンシップや進路指導に携わった際に、キャリアコンサルタントの仕事と出会い、資格を取得。自身もキャリアに悩んだ経験から、相手に寄り添い、気づきから行動へ一歩を踏み出せるサポートをしている。自身の経歴やキャリアセンターについて、全国の大学1000キャンパス以上の就職支援課などに配布されている『就活応援Webマガジン ジョブマンガ』にも掲載中。

【資格】
公益財団法人 関西カウンセリングセンター キャリア・コンサルタント
国家資格キャリアコンサルタント

コラムの感想等はこちらまで(協議会 編集担当)

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