キャリアコンサルティング協議会は国家資格「キャリアコンサルタント」の試験機関および指定登録機関と、国家検定「1級・2級キャリアコンサルティング技能検定」の指定試験機関です。

マンスリーコラム

2021年6月号

今こそ互いに響き合う「キャリア支援」を 〜気づきを促すことができたら〜

コロナウイルスは、「新型」という正体不明な未知のウイルスとなり、人々をごく狭い範囲に閉じ込め、そして世界を苦境のどん底に陥れ、大混乱の非常事態となっています。

このたびの新型コロナウイルス感染症拡大にあたり、感染された方々の一日も早い回復をお祈り申し上げるとともに、感染症の流行が一刻も早く収束することを節に祈っております。

最近では、感染症の影響で、人々のライフスタイルが大きく変化しています。
会議や飲み会までオンライン化され、一定の物足りなさを感じている反面、効率的な働き方など、各企業ともに新たな価値を模索しています。私自身も採用担当者として、これまでの常識を見つめ直しています。特に企業説明会においては「オンラインではなく、対面」にこだわり続けた者の一人として会社の魅力発信も今まで以上に進化が必要だと身をもって感じています。

・コロナ禍で見つけた「キャリアコンサルタント」という資格!!

大学卒業後、銀行に入行し、現場で一定の業務経験を積み、2017年より人事部にて職員採用を担当しています。採用後は、研修期間を経た職員の特性を踏まえ、適材適所に配置できるよう心掛けています。最近では、配置後に悩みを抱える若手社員が増加傾向にあり、そのほとんどが「職員間でのコミュニケーション不足」にあるように感じています。

銀行は職業柄、一人前になるには時間を要します。その間、若手社員のやる気を失わせるような言動をしたりすることは問題外であり、やる気と能力を引き出すことが上司の仕事であると考えています。とはいえ、手取り足取り教えるということではなく、さまざまな面でサポートをする必要があります。

私は、現場を臨店し、カウンセリングを実施してきた中で、若手社員は上司の育成意欲(現場で育てようとする気持ち)に非常に敏感であるため、期待に応えるにはどうしたらいいか、という課題解決に目を向けがちでした。その反面、若手社員の気持ちに寄り添うための「傾聴力」不足があるのではないか、ということを常日頃から感じていました。

そして、ちょうどその頃、採用活動も新型コロナウイルス感染症の影響で状況が一変。全ての就活イベントが中止となり、スケジュールは白紙となりました。この機会をチャンスと捉え、キャリアコンサルタント養成講座を受講。短期間で自分自身の課題である「傾聴力」を磨くといった貴重な時間に繋がり、「キャリアコンサルタント」資格を取得しました。

・新型コロナウイルス感染症の影響を受けての就職活動

コロナ禍の中で、安定志向の学生が多く、公務員も人気の一つとなっています。そのため、公務員試験を受けながら何となく企業の採用試験を受験するといった「ながら就活」の傾向が見られ、企業研究不足が露呈しています。

また、自分に合う企業選びから内々定の獲得まで全てオンライン上で完結させる「リモート就活」を強いられる中で、対面による志望企業の情報収集ができず、どう就活すればいいのか混乱している人も多いはずです。

企業側も企業説明会やインターンシップをリアルな場で行うことができず、オンライン上に置き換える必要があります。まずは、Web会議システムの導入、環境整備、実際にシステムを使った際には有効活用できるための創意工夫、内容の充実性を図るための努力が求められます。

一方、オンラインでの選考活動が一般化していくことで移動費や宿泊費が負担にならずにさまざまな企業の選考活動に挑戦できるといった喜ぶ声もあります。最近では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で飲食店の時短営業や外出自粛のあおりによる学生のアルバイト収入が減少している現状を考慮する等、学生目線で丁寧な採用手法を実行することが企業側には求められていると実感しております。

・ 趣向を凝らしたインターンシップの実践(職業理解)

就職活動においては、「何のために」、「誰のために」、「自身の個性は活かせるか」、「この企業で輝けるか」といった働く意義を見定める必要があります。その機会がリアルインターンシップです。

私の勤務する銀行では、オンラインでありながら「よりリアル」をモットーに、通常の業務体験に加え、内定者と触れ合ったり、職場内や取引先企業を実況中継で繋ぎ、社員と交流を図るなかで、雰囲気を感じて頂き、金融のプロとして、そして社会人としての厳しい側面もリアルに伝えるようにしています。

それこそがミスマッチ防止、お互いの幸せに繋がるものと確信しています。

・"伝えた"と"伝わった"は全く違う

キャリアコンサルタントの資格取得をして特に痛感していることです。

採用担当者として就活生が企業研究を行う上で知りたい情報をキャッチし、必要な情報を提供することができればリアル感は必ず響きますし、伝わります。私は形式的な企業説明に留まらず、これまでの実体験を例に挙げながら就活生に対して自己開示も含め、真摯に向き合い、信頼関係を構築しています。

何より企業側として大事なことは、就活生を気にかけ、名前を覚え、求めているセミナーをタイムリーに実行する行動力です。

いつも学生がきて当たり前の概念はありません。常に感謝と謙虚な気持ちを持ち続け、就活生以上の行動力で広報活動をしなければならないと感じています。

その成果もあってか、私の所属する銀行は「就職志望企業人気ランキング調査」において一定層の支持を頂き、県内トップの座を堅持しています。

また、私は採用面接には同席していないため、面接終了後、就活生の回答内容など一言一句、面接官と情報共有する時間を大切にしています。実際には、就活生が面接官に答えてくれた生の声が当銀行の理解度であり、伝わった程度だと把握し、私自身のフィードバックとしています。

それを受け、各年度の採用活動を振り返りながら反省し、毎年、変化あるセミナーやインターンシップの企画をしようと心を新たにしています。

・採用時、人材の見極めが難しい

私は、採用担当者として学生の就職活動を「自育期間」と捉えています。人の能力は一瞬では見極められないため、就活期間を通して就活生の変化に注目しています。就活開始時は表情に乏しく質問も積極的でなかった学生が、自己分析で自身と向き合い、大切なことに気づき、能動的に意思表示できるまでに変化していく様子は感動的で、採用担当者としての醍醐味でもあります。私は、そんな成長の「伸びしろ」を確認しています。

・銀行員としても必要な資格ではないか!?

私の銀行員生活はまだまだ未熟で多くを語ることはできませんが、これまで「銀行員とは何か」を教えてくれたお客さまがたくさん存在します。銀行の看板を背負って、数多くの著名人とお会いし、何気ない会話に「学び」を、しかも無償で頂きました。また、同時にお客さまは、自分自身を写し出してくれる最高の「鏡」でもありました。そんな銀行の業務は究極の接客業であり、相当の人間力が必要であると日々感じています。

今後は、これまでの型にはまった固いイメージの銀行員ではなく、雑談力を交えた聞き上手な人柄が求められます。その取っ掛かりとして受講した「キャリアコンサルタント養成講座」で傾聴や相手の真意を捉える関わり方など、多くのことを学びました。

私は、資格取得後も就活生に対する「キャリア支援」を行っています。その中で傾聴や共感的理解といった基本的態度で接し、就活生の潜在的に持っている思いを見逃さず、吸い上げることで自己理解を深めてもらい、「気づき」を促すことを意識しています。

今後は就活生に限らず、最適な環境で自分らしく輝ける「キャリア支援」を実践するためにも、職場内で「キャリアコンサルタント」資格を普及させる必要性があると感じています。

辺土名 博吉(へんとな ひろよし)

辺土名 博吉(へんとな ひろよし)

国家資格キャリアコンサルタント
精神保健福祉士
准看護師

沖縄県北谷町出身
2006年株式会社沖縄銀行入行
現在は、人事部所属 新卒採用、中途採用を担当

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