キャリアコンサルティング協議会は国家資格「キャリアコンサルタント」の試験機関および指定登録機関と、国家検定「1級・2級キャリアコンサルティング技能検定」の指定試験機関です。

マンスリーコラム

2021年9月号

想定外変化の時代と当事者意識

VUCAの時代と言われます。「激動」(Volatility)「不確実性」(Uncertainty)「複雑性」(Complexity)「不透明性」(Ambiguity)という意味だそうです。

難しい説明は置いておいて、確かに新型コロナウィルスの影響をはじめ周囲の環境は激しく急速に変化していることを感じます。

キャリアコンサルタントとして持つべき視点のひとつとして、この「想定外変化」は注目に値するのではないかと思います。環境との相互作用で人は悩み成長するわけですので、環境変化への意識はある意味支援の王道ともいえます。

ここでサニー・ハンセンの言葉を紹介します。

「多くの分野のリーダーが、21世紀の重要な特徴は「変化」であろうという予測で一致している。変化はすでに起こっており、それがあまりにも速く、あまりにも多くの領域で起こっているため、遅れずについていくことは難しい。変化は、仕事、家族、教育、余暇、人口動態、テクノロジー、政治など、あらゆる分野に及んでいる。人々の人生における変化する文脈は、興味、関心、能力、適性など人々の内面への影響という点だけでなく、それ以上に、人々のキャリア上の機会と意思決定に重大な影響を及ぼすものとして、ますます広く認識されるようになっている。」(「キャリア開発と統合的ライフ・プランニング」より)

「想定外変化」に注目すると、様々な事象から将来の環境変化のトレンドを予測することができます。私は、すべての人が環境変化に関心を持ち、この先わが身にどのようなことが起こりうるのかについて考えておく必要があるのではないかと考えます。

その上で将来の人生設計を行い、自身のプランの実現に向けた地道な努力や準備を進めていくことが必要であり、キャリアコンサルタントはその支援を行う存在であるといえます。例えば、ジョブ・カードのつくり込みをみても、「キャリア・プラン」が成果物として存在しますが、一人ひとりが自らの興味や価値観を手がかりに社会変化に適応すべく人生をプランニングし、そのプランの実現に向けた行動がとれるよう支援することが私たちキャリアコンサルタントの役割と言えます。

しかしながら、将来の予測はおそらく当たらないでしょう。サニー・ハンセンはこのようにも言っています。

「ライフ・プランを創り出すことと、人生を計画するということは違う。そこには計画があり、それと同時に人が計画することのできないランダムな要因がある。そしてそれらは、人々の人生のなかで、予期した通りの結果とそうでない結果を生み出しながら代わる代わる現れる。それにもかかわらず、計画することは重要である。なぜなら、人はそのことによって、自分自身の人生をコントロールしているという感覚を得ることができ、それこそが人々をメンタルヘルスの健康へと導くエンパワーメントの感覚なのである。」(「キャリア開発と統合的ライフ・プランニング」より)

つまり、プランニングしただけでは実現可能性は高まらず、「計画」が大事だと言っているのです。そして、想定外の事態に際しても「自分自身の人生をコントロールする」ことの必要性を説いています。「人生をコントロールする」というのは「当事者意識を持つ」といいかえることができます。

変化に際しても、自分の軸を明確にしつつ適応していくことができれば、自由に幸せに生きていくことができるのではないでしょうか。変化の激しい時代においては「自律」「当事者意識」がキーワードです。そう考えると、いよいよキャリアコンサルタントの出番であると思うのですが皆様はどのように思われますか?

以上のような視点で、例えばキャリア理論を思い出してみると結構興味を持つことができます。今日紹介したサニー・ハンセン以外にも以下のような理論を改めて思い出していただきたいと思います。

・ハップンスタンス・ラーニングセオリー(ジョン・クルンボルツ)

・プロティアンキャリア(ダグラス・ホール)

・キャリアアダプタビリティ(マーク・サビカス)

・キャリアカオス理論(ジム・ブライト他)      等々

いかがでしたでしょうか。他の理論も「想定外変化」を念頭に学び直してみると面白いかもしれません。

想定外変化の時代がどのような時代になるかを予測すると、様々なキーワードを思い浮かべることができるのではないでしょうか。皆様も考えてみてください。

例)学びの視点・構造の変化/環境問題/テクノロジーの進化/倫理/戦争・暴力の影響/家族のあり方/ジェンダー/ダイバーシティ 等々

ランダムに書きました。まさに予測不可能。しかしながら自分は厳然とその時代を生きるわけです。当事者として、自らの人生の責任者として、自分らしく逞しく生きていくにはどうすればいいのでしょうか。当然のこと私たちキャリアコンサルタント自身も、変化に際して主体的に当事者意識を持ち生きることが求められています。

最後に、ジョン・クルンボルツ博士が生前NCDA(全米キャリア開発協会)のフェニックス大会(2018年)でキャリア支援者に向けて語った言葉を紹介いたします。皆様はどのように受け取られますか。

「 人生をエキサイティングな冒険と考えなさい。人生の瞬間瞬間を楽しむのです。日々の人生を楽しむのです。それがあなた(キャリア支援者)の仕事なのです。 」

田中 道博(たなか みちひろ)

田中 道博(たなか みちひろ)

略歴
大学卒業後、大手旅行会社の社員として11年間勤務後、人材派遣会社に転職し、14年間勤務。2014年、より幅広く中小企業の業務承継、人材育成、キャリア形成支援に携わるため独立し、2017年に株式会社あしあとみらい研究所を設立。代表取締役として企業領域を中心に支援実績多数。キャリアコンサルタント更新講習の講師としても多様なメニューを実施。
現在、ACCN中国四国支部運営パートナー/ACCN法人会員

資格
1級キャリアコンサルティング技能士/国家資格キャリアコンサルタント
社会保険労務士
軍師®認定コンサルタントS級
メンタルヘルスマネジメント検定Ⅰ種

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