マンスリーコラム
所感 学んだことに意味はあったのか?
私がキャリアコンサルタントの資格を取得したのは2004年2月のことでした。当時は民間資格で、おそらく、同時代の方は、もはやとても少ないと思います。そもそも、当時、キャリアという言葉自体、今のそれとは異なる意味で使われていました。ましてやキャリアコンサルタント、キャリアカウンセラーの存在やその役割などを、一般の方で知っている人は、ほとんど皆無だったと推測されます。現に、当時の上司で役員の方に勉強している内容を話したら「お前、何か特殊な宗教にでも入ったのか?」と真顔で心配され、閉口したほどです。
さて、この稿で、自分を振り返ることで、この間、学んだことが実際に、どんな意味があった(無かった)のか、検証をしてみたいと思います。そのことで今後の学習に対しての動機づけの一助になればと思います。もちろん、皆様に幾ばくかでもお役に立てば幸甚です。
まず、資格取得の勉強を始めたきっかけですが、学生との面談を行った後の何とも言えない虚しさから、面談のスキルを上げたいという気持ちからでした。実際、私は、彼・彼女になんの価値提供もできていない。そもそも面談の構成自体が明確ではありません。極端に言えば、こちらから一方的に問題点を指摘、「わかりました。努力します」と言ってもらい「頑張ってね」で終われば成功、という暗黙の了解があったのでないかと思う位です。
ここでキャリア理論・カウンセリング理論を学び、中でも「システマチックアプローチ」によって、構成は大幅に見直され、且つこちらの責任の範囲、面談の目的が明確になったということは、とても大きかったことだと思います。
さて、このシステマチックアプローチは面談のみならず、仕事のあらゆる場面で応用できるモデルだということもお伝えしたいと思います。例えば営業。消費財ではなく生産財のようなものを対象とした、いわゆるコンサルティング営業をご想像ください。生産財の営業で、初心者に有り勝ちなのが、いきなり、自社製品が優れていることの一方的なプレゼンをすることです。顧客にはどう映るでしょう。
多くの経験の浅い担当者は、他社比較から浮かぶ自社の強みをこれまた、一方的に訴えることを第一義に考え、事前準備や客先本番で、相当なエネルギーを使います。ここまででお分かりのことと思います。多くの顧客はどう感じるでしょうか、システマチックアプローチで捉えなおすと一目瞭然かと思います。
また、「会議は長いだけで何も決まらない」という法則も、やはりシステマチックアプローチで予め、問題点は何か、差し当たっての今日の会議での達成すべき目標は?などについて共通認識をはかることで、相当程度解決できると思っております。
次に受容・共感についても触れてみたいと思います。
暫く、私の身体の状況の話が続きますが、後からの看護師とのやり取りをご理解頂くには、必要なので、少々ご辛抱ください。
昨年の年末(2021年12月末)私は倦怠感と発熱から、発熱外来で病院に予約の上、検査に行きました。新型コロナウィルスの感染第6波の兆候を伝える報道が盛んになった頃です。陰性反応が出るも、診察によって大事を取って、結局、緊急入院することに。その後の検査でコロナではないことが確定したのですが、同等以上に厳しい症状が訪れるのは、少々先のことでした。
看護師は、1日数回、体温、血圧測定などで病室に来ます。ローテーションが組まれ、ほぼ毎回、人が変わります。なお、下記事例は、実際の場面での応答や触れられた項目に加工してあります。また、看護師のAさん、Bさんを批判する意図は全くありません。私たちの面談でも起こりがちな例として、挙げたものです。
さらに、ここにはあげませんが、この先の自己の命について真剣に考えるほどの事態に陥った際に、多くの看護師の方々は、私の心に触れて、本当にやさしく聴いて頂き、救って頂いたことを強調しておきます。
【 場面1】
※入院後、1週間経つが症状は改善していない。いわゆる、ハイテク医療の裏腹で、先生はほとんど訪れず、不安のピークに差し掛かっている。
Aさん:「もともと、どういう症状で来られたのですか?」
私:(症状はWとXです。Yは入院のための検査をしているうちに、生じてきました)
Aさん:「えっ、そんなことあり得ないです。Yは前から兆候があったはず」
私:(でも、Yがあれば、ここに自分で運転して来れません。昨日はお宮参りに行っているし、その前の4日間は会食で関内や横浜にも・・・<ここで遮りが入り>
Aさん:「とにかくこのZという病気はYの兆候が必ずあるんです」
以前の私(私は聞かれたから私の体験をお話しした。あなたは、私でもないのになんで、私のことが分かるのか。私だって、何故こんなに突然、Yが出てきたかわからない、ということはZという病気ではないのではないか、そこを調べてほしい)。
【 場面2 】
Bさん:「トイレは1日何回ですか」
私:(この5日間,17回です、と毎回応えています)※点滴によって実際この位行っている。
Bさん:「私共も毎回聞かないといけないんですよ。その都度、まじめにお答えください」
どうも、Bさんは私の応答を「何回も同じことを聞くんじゃないよ」と言っているように受け取ったようだ。しかし、私が聞いてもらいたいのは、「この間、ほとんど寝れない状況がありとても辛い、そのつらい気持ちを聞いてほしい、記録して複数の人が見ているなら尚更、気づいてくれてもいいんじゃない」ということなのです。
さて、ここで学びとその効果をまとめてみると、
① 受容・共感の知識があるからこそ、相手との応答の中で生じる違和感の原因がわかる⇒冷静になれるので、相手に攻撃的になることはない。また、冷静になっているので内省が促され、自己の相手への応答の拙さに対する工夫の余地が見えてくる。
② クライエントとして体験した⇒経験学習の4つのステップとサイクルを回す⇒知識だけでなくスキルとして定着する可能性があがる。
③ そもそもAさん、Bさん自身に問題あり、とここでいうつもりはない。むしろ、現実的に、受容だ、共感だと言っているゆとりがあるのだろうか。多数の患者を同時に担当し時間内に終わらせる責任感、2年間の疲労の蓄積、感染するかもしれないという恐怖・・・。知恵を出すべき対象は、その環境を変えていくことではないのかという視点が広がり、再び、学びの深化につながるきっかけとなろう。
以上から学ぶことは、私のようなごく少時間であっても血肉となっていると言うことができます。そして実践することが最も身につく方法であること、一つ、身につくと更なるテーマが浮かび、更なる学ぶ動機付けになることを付け加えたいと思います。
いいことばかりでは信頼性も下がるので、敢えて2点追記します。
①「ひとり学習」で気を付けたいのは、解釈や意味を大きく捉え違いをしているのに、気付けないでいること。機会あるごとに、熟練者や先生方に確認しておきたい。
②また、日常生活で過敏に相手の言葉の正確さを求めたり、意味を執拗に問うということが習慣づけされるのは、人間関係を壊す危険大なので注意。
そろそろ、終わりとなります。最初に私がこの資格を取得したのはかなり前であることを冒頭に申し上げたのは、次の理由があったからです。
その頃と違って、キャリアについての認知度は相当程度、上がっているということ。つまり、種火はついているので、風を送り続けることで燃え上がる(世の中に普及する)段階だと言えます。送り続ける努力と送り方の工夫は必要だと思います。
もう一つ、その頃と比較にならないほどの学ぶ場や教材、書籍の充実が挙げられます。どうか、皆様におかれましては、これらを有効活用し自己研鑽を大いになさってください。そして、コロナだけでなく生活や生命を脅かす事案が飛び交い、暗くなりがちではありますが、人々の心の中の灯となるべく、是非とも、ご活躍されることをお祈りして、終わらせて頂きます。
<追伸>ACCNの活動にもご参加ください!「学ぶ」だけではなく、現場視点での問題点を共有したり、多くのキャリアコンサルタントが、動きやすい体制作りに向けてイベント企画や提案なども行っております。
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