キャリアコンサルティング協議会は国家資格「キャリアコンサルタント」の試験機関および指定登録機関と、国家検定「1級・2級キャリアコンサルティング技能検定」の指定試験機関です。

マンスリーコラム

2022年6月号

私のプランド・ハップンスタンス

私のキャリアに影響を与えたのは何かということを考えた時に人との出会い、ご縁というものを非常に感じます。また、その時はそうなることを予想せずにしていたことが、後になって転機につながるなど、私の人生がプランド・ハップンスタンスの連続だったという気がしています。

1 私のキャリアストーリー

(1) 和歌山時代(~1988)
私の亡くなった父が資格取得に熱心で、大人になってから勉強して資格を取ることが普通の家庭でした。それもあって、私自身も学生時代から資格を取得することには興味があり、いろいろな資格にチャレンジしてきました。

英語の教員になるつもりで教育学部に進学したのですが、青年心理学の講義で初めてカウンセリングとはどういうものかを学んで衝撃を受けました。その時の教科書「新訂カウンセリング」伊東博著 誠心書房)は今でも手元にあります。

(2) 東京時代(1989~2007)
大学を卒業後、東京労働局に採用され、ハローワークの職員として働き始めました。数年後資格取得に熱心なことを知っていたハローワークの同期から産業カウンセラー養成講座に誘われ、参加することになりました。その時は大学時代に学んだ心理学が役に立っていると思われる場面もありました。

産業カウンセラーの資格取得後、当時は会員名簿もあったので、産業カウンセラー千葉グループから参加案内が届き、それまで異業種の方と関わる機会がなかったので、自分が参加していいものかどうかと思いながら、恐る恐る参加しました。結果的にはそこでの活動が楽しかったので、他の勉強会に出ることにも積極的になれるようになりました。千葉グループで知り合った方から、キャリア研究会を紹介していただき入会し、また、産業カウンセラーの資格があれば心理相談員研修に参加資格があるということも教えていただき、心理相談員会にも入会しました。

キャリア研究会では、故木村周先生、本間啓二先生、下村英雄先生とそうそうたるメンバーがいらして、とても刺激を受け、いろいろ勉強させていただきました。社会人大学院の卒業生の方が作った会でしたので、社会人になってから大学院に行った方に何人もお会いしました。そして、自分もいつか大学院で勉強したいと思うようになりました。余談ですが、現在の夫と知り合ったのも、このキャリア研究会でのことでした。

心理相談員会では河野慶三先生からメンタルヘルスの基礎から教えていただきました。当時はハローワークの職員だったので、メンタルヘルスの勉強をしても活かす場がないと思っていましたが、結果的に臨床心理士となってからはメンタルヘルスの仕事もしており、その時に勉強したことが今でも非常に役に立っています。

(3)山形にて(2007~現在)
2007年に東京労働局を退職し、山形に移りました。最初の2年間はハローワークで非常勤職員として働きましたが、今後のことを考えるとこのままではいけないと考えるようになりました。

そこで、大学院を受験することにしました。私は大学院受験の際、大学で過去問がもらえることも自分が研究したいテーマの先生の研究室訪問をするものだというようなことも何も全く知らず、今から思うと無謀だったと思うのですが、例年なら10月の受験日が12月に遅れていたため、その年の受験申し込みに間に合い、筆記試験も心理学はあまりできなかったのですが、大学時代から学んでいた英語のおかげで合格できたのだと、入学後に先生から伺いました。

2009年に山形大学大学院に入学し、臨床心理士の資格を取得することにしました。20歳下の同級生と学ぶのは楽しくもあり、非常に大変でしたが何とか修了し、臨床心理士の資格も取得しました。大学院進学と臨床心理士の取得は東京時代から夢としてずっと手帳には書いていましたが、実現するとは思っていませんでしたので、夢を可視化することはやはり大切なんだと思います。

東京時代からネットワークの重要性は理解しており、山形に来てからもインターネットで勉強会を探して参加したり、キャリアコンサルティング技能士会時代から入会しているACCN東北支部では現在副支部長をしています。

山形に来てからになりますが、キャリア研究会で知り合った方から声をかけていただき、「産業心理臨床実践」(金井篤子編著 ナカニシヤ出版 2016)と「キャリア・カウンセリングエッセンシャルズ400」(日本キャリア・カウンセリング学会監修 金剛出版 2022)にそれぞれごくわずかなページではありますが、原稿も執筆させていただき、ご縁に感謝しています。

現在はキャリアコンサルタントと臨床心理士としてフリーランスで活動していますが、仕事はやはり人からのご縁で来ることが多いです。

2 プランド・ハップンスタンスを活かすには

クランボルツらのプランド・ハップンスタンス理論では、偶然の出来事をキャリアに取り込むための5つの資質として、好奇心、粘り強さ、柔軟さ、楽観性、リスクテイキングとしている。従来の研究では、人のキャリアに影響を与える偶然の出来事とはほとんどの場合、人との出会いである。(「6訂版キャリアコンサルティング理論と実際p.90」)

自分にどの資質が備わっているかということを考えると、好奇心が一番ではないかと思います。リスクテイキングは好きではないのですが、結果的には公務員を辞めて山形に転居したり、かなりのリスクもとってきました。

人との出会い、人からの影響はもちろん大きく、人とのご縁は大切にしてきたつもりです。これは私個人の見解ではありますが、人間は自分が直接知っている人が何かをしたと知ると自分もできるのではと思う可能性が高く、マスコミや本などで見た場合はどちらかと言えば違う世界の人と考えがちである気がします。

実際私が40代で大学院に進学したのは、社会人になってから大学院に行った人に何人も会ったことに影響を受けており、また、私が大学院に進学したのを見て、放送大学など通信制の大学等に入学した友人、知人も数人いて、お互いに影響し合っていることを感じます。

だからこそ、広くいろいろな場所でいろいろな人に出会うことは自分のキャリア形成にとって非常に重要であると思います。今はコロナの影響でなかなかリアルで人と知り合うことが難しく、オンラインではある程度補えるとは思うものの、不十分だと感じることも多いです。

これからも私は人とのご縁を大切にしながら、プランド・ハップンスタンスと付き合っていきたいと思います。

【参考文献】
木村周・下村英雄著「6訂版キャリアコンサルティング理論と実際」雇用問題研究会 2022
J.D.クランボルツ他著「その幸運は偶然ではないんです」ダイヤモンド社 2005

大泉 多美子(おおいずみ たみこ)

大泉 多美子(おおいずみ たみこ)

ACCN東北支部副支部長
2級キャリアコンサルティング技能士 国家資格キャリアコンサルタント
臨床心理士 公認心理師 産業カウンセラー
高等学校教諭(英語・情報)教員免許

和歌山市生まれ。東京労働局及び都内ハローワークで国家公務員として18年勤務。
2007年に山形県へ転居。ハローワークプラザやまがた勤務を経て、2011年に山形大学大学院地域教育文化専攻科(臨床心理学専攻)を修了。現在はキャリアコンサルタントと臨床心理士として、新卒応援ハローワーク、ジョブカフェ、サポートステーション、大学、高校などでカウンセリングを行うかたわら、就職支援、メンタルヘルス、大人の発達障害などのセミナー講師も務めている。

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