キャリアコンサルティング協議会は国家資格「キャリアコンサルタント」の試験機関および指定登録機関と、国家検定「1級・2級キャリアコンサルティング技能検定」の指定試験機関です。

マンスリーコラム

2022年7月号

実践!「親子でキャリア教育」のススメ 

3年前から、小学校4~6年生とその保護者を対象にした親子のキャリア教育イベントで講師を務めています。このイベントは「親子みらい×ワーク研究室」といったキャッチコピーで開催されていますが、年々イベントの依頼が増えて大人気になってきました。昨年は図書館や職業大学校、技術学校からも依頼があり、あちらこちらから引っ張りダコの状態になっています。特に夏休みはキャンセル待ちが出るほどの人気ぶり!キャリア教育への関心は街角のイベントから広がり、参加者の口コミから更に広がりつつあります。「キャリアコンサルタントって何をする人?」と、まだまだ知名度が低い国家資格ではありますが、家庭の中からジワジワとキャリア教育に関心が向けられるきっかけとなるイベントになっています。

【働く未来の研究】

このイベントは、前向きに将来のことを親子で考える機会にすることを目的にして、ホランドコードを活用しながら、カードとワークシートを使って自己分析を行っていきます。自分は何が楽しくて、どんなことが得意で、何が強みで、今後は何を頑張りたいのか、そして、世の中にはどんな仕事があって、どんな資格があるのかなど、子供たちの好奇心や興味を大事にしながら、自分の未来を肯定的に感じて、早期に様々な職業を知るきっかけになるような内容と構成になっています。

子供たちはカードを使って、自分の興味や関心に沿って職業を分類しながら、気づいたことや考えたことを研究結果としてワークシートに記録していきます。お父さんお母さんはその作業を見守る形で進めていきますが、その際の親子のやり取りがとても微笑ましいです。

そうやって仕事の適性や、働く未来を親子で一緒に研究しながら、社会人になった自分の未来、子供達の姿に思いを馳せ、遠からぬ現実を親子で認識していきます。

【親子で互いにキャリアデザインを考える】

自分の未来の姿を、スポンサーであり応援団でもあるお父さん、お母さんと一緒に横並びで想像しながらキャリア・プランを考えるという作業をします。ワークシートには、目標に向かってできることを考えて記入します。

スモールステップによる自己制御体験、成功体験によって、自己効力感を高める経験を積むことや、主体的に考えた方策を実行に移していくセルフマネジメント能力を身に付けることもキャリア教育の一環です。親はこの作業を通して初めて子供達が発達課題に取り組みながら"はばたく日"に向かって成長していることに気がついて「こんな風に自分の将来について考えていたんだ!」「こんな夢があるんだ!」と驚くと同時に、その成長に感動されます。また、子供達が親をしっかりと観察していて、ロールモデルにしていることにも気がつきます。

このイベントの特徴は、お父さんやお母さん自身が、子供達のワークを通して、自分がこれまで積んできたキャリアをもう一度振り返り、キャリア・アンカーやキャリア・プランについて考えるきっかけにもなるということです。私は職業訓練機関のキャリアコンサルタントなので、日頃は親の年代の方々のキャリアコンサルティングに携わっています。働く上でのエンプロイアビリティー、人生100年時代のキャリア・アダプタビリティ―など、多角的な視点でイベントの意味を捉えているので「子供の頃になりたかった職業は何か、それは今の職業選択にどのように影響しているか」など、お父さん、お母さんにもこれまでのキャリアについて発表してもらいます。子供たちは親の発表を聞いて、それぞれに何を思うのでしょうか?身近でリアルなキャリア教育といえますね。

【メッセージでエンパワーメント】

そして、イベントの最後には、親から見た子供の「強み・良いところ」を直接、言葉で伝えて、スポンサーでもある親から子への「応援メッセージ」を贈ります。イベントは最高潮!とても感動的です!

そして、最後にここで考えた職業や目標は、この先変化していくことを伝えて、時々今の自分と、キャリアデザインを見つめなおす機会を設けてほしいことをお伝えしてイベントを終了します。

このキャリア教育のイベントを通して、学ぶことへの動機づけや、早期のキャリア教育の必要性を理解していただければ成功だと思っています。

【駄菓子屋キャリアカウンセリング"はばたけ相談室"開設】

余談ですが、8月より月1回、小・中・高校生対象の無料キャリア相談「はばたけ相談室」を、地域のコミュニティセンターで始めます。これは、昔、地域にあった駄菓子屋のおばさんが、「子供達がいろんなことを相談していくのよ、大人になってからも相談にくるから年金を注ぎ込んででも店を閉めるわけにはいかんのよ。」と言っていたので、駄菓子屋さんの意思を継いで開設することにしました(駄菓子はありません)。銭天堂ではありませんが、地域の子ども達の心の居場所になれればと思います。

門脇 由紀子(かどわき ゆきこ)

門脇 由紀子(かどわき ゆきこ)

ACCN中国四国支部
2級キャリアコンサルティング技能士 国家資格キャリアコンサルタント

現在、職業能力開発促進機関や高知県就職支援相談センターにおいてキャリアコンサルタントとして勤務。求職者、在職者、企業のキャリア形成セミナーや、小学校から大学、専門学校、特別支援学校のキャリア教育、親子のキャリア教育イベントの講師を務め、多世代のキャリア形成支援とキャリアコンサルティングの普及啓発に努めている。また、高知県と徳島大学が共同開発した教育プログラム「若者はばたけプログラム」の指導者、地域学校協働本部事業の地域コーディネーター、コミュニティースクール・ディレクターとして教育現場でも活動している

コラムの感想等はこちらまで(協議会 編集担当)

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