キャリアコンサルティング協議会は国家資格「キャリアコンサルタント」の試験機関および指定登録機関と、国家検定「1級・2級キャリアコンサルティング技能検定」の指定試験機関です。

マンスリーコラム

2022年8月号

時には寄り道して、不思議なルートでカタチづくられるキャリア

はじめに

「プランド・ハップンスタンス」という言葉を知った時、私は自身の経歴を丸ごと受け入れられるような安心感に包まれました。一見まとまりのない経歴書にタイトルがつけられず、20 代のころは言語化できず悩んでいたからです。社会情勢に翻弄されるように、揺さぶられたことで、私の可能性は拡がり挑戦の機会に恵まれました。ごく一般的な経歴とは言い難いキャリアを辿りましたが、今では気に入っています。

ビジネス専門学校在学中に OL へ

高校3年生の春、特にやりたいことも見つからず進路決定の現実に直面しました。当時、人事部門にいた家族の勧めからビジネス専門学校(ビジネス秘書学科)へ進学。毎週のように検定試験があり、生まれて初めて勉強しました。幼少期から持つ本番の強さが土台になり、いつしか目の前の課題を達成するための集中力・調整力が身についたと思います。2年次夏、秘書検定1級合格を機に、'頑張り切れない私'という自己イメージから少し解放されました。

当時はいわゆる就職氷河期。大手信販株式会社の求人が、この年は契約社員での採用しかないとのこと。結果、中途採用枠に入り 11 月 1 日入社となりました。同じ部署には同じ学科の先輩方が複数いて、担当業務は違えど人間関係に恵まれました。20 年経った今も、定期的にミニ集合をしています。

配属先は、弁護士介入・自己破産の債権管理部門。破産申立件数が右肩上がりで債権者として膨大な事務手続きに追われました。業界単位で法人・個人破産案件が拡がり、「大きな社会の波には敵わない」ということを学びました。

リストラ後は母校で指導、それもまた学科閉鎖へ

担当業務から人生勉強をしたとはいえ、自分に降りかかってくると厳しく感じられるものです。金融機関に吸収される流れがあり部署の統廃合を機に、3年ほどで退職へ。(この頃、ベテランの女性カウンセラーに出会い、産業カウンセラーという資格の存在を知ります。)

恩師に相談し、秘書検定 1 級をいかす形で母校の講師として勤務。非常に優秀な後輩らに背中を押される形で、必要に迫られ別な上位資格取得をしました。中には、留学生もいて日本語を丁寧に使う訓練になりました。恩師に拾ってもらったのも、筆まめで良かったのでしょう。何より上位資格保持が決め手の一つになることを実感しました。この講師業務も学科閉鎖という形で終わりを迎えます。「残念」という言葉の意味をほんとうの意味で知りました。次につなげるべく、2007 年度産業カウンセラー養成講座に通い始めました。

相談現場経験から大学編入、疲弊の結果転職へ

若者サポステ、よりそいホットラインの現場にご縁ができた頃、生活困窮者自立支援事業からオファーがありました。社会福祉分野の基盤がない自分を痛感し、大学編入を決めます。

この現場では、ホームレス・DV 被害者・刑余者などを含む TV ドラマ以上にドラマチックなクライアントの生活状況に触れました。経済的困窮というのは、時間的余裕がなく、時に緊急対応が求められます。業務に奔走する中、大学の単位は取れない時期もありました。気がつけば私自身がとことんくたびれていました。それまで外部要因での転機が多かったのですが、自分の意思で退職を決めました。

転職までの 3 ヶ月間は、とにかくスロウライフが贅沢に感じられ、丁寧に過ごすことを心掛けました。まさにセルフケアでした。併せて、溜めに溜めていた大学のレポート課題を日々やっつけました。再就職には「学業との両立」がカギでした。

専門職として再就職するも、専門性に悩み資格取得へ

2017 年夏、現職に就きます。「治療と仕事の両立支援事業」の担当者であり、週3日勤務の医療機関との連携、事業推進というものです。専門職としての採用とはいえ、30 代後半の自分にどのような専門性があるか言語化できない自信のなさがチラチラ顔を出しました。

この時、昔から面識のあるキャリアコンサルタント(以下、CC)の大先輩が 2 つの助言をくださいました。①5年は頑張って仕事を続けるように、②時代に合わせて CC 資格取得を目指すように。標準 CC は時間的に厳しく、相談現場経験を活かし2級技能士から挑戦しました。2019 年 9 月の合格をもって初めて CC と名乗れるようになりました。

資格登録の直後、ホームページで見つけた ACCN 北関東支部のイベントに行きました(感染症前でありがたいタイミングでした)。それ以来、現支部長らとの出逢いに恵まれ、学習機会・意欲の基盤になっています。

寄り道しながら社会福祉領域については、2019 年大学卒業、2022 年国家資格社会福祉士合格しています。2つの国家資格取得という以上に'やりきれた'自分への信頼度が上がったことが収穫です。

これからについて

本業は目標にしていた丸5年が経過しました。事業推進も地元のネットワークも一定程度成熟し、時に全国規模のフォーラムや学会発表の登壇依頼をいただくようになりました。組織内外の人びとに恵まれたことに尽きます。多職種連携の音頭を取りながら、プロたちと行うチームでの仕事です。法人支援の機会が増える中、社会学などの周辺領域を学ぶ必要性を感じています。私自身、この先に待っているであろう、寄り道にワクワクしています。

副業は、キャリア支援・産業保健の観点から高校生・学生支援、都内企業の新卒採用、在職者キャリアコンサルティングに従事しています。自分づくりと併せて、CC 全体の社会的地位向上につながるよう努力したいです。支部を超えた皆さんとともに、まずは年月をかけて社会における認知度・CC 機能を上げていきたいですね。

木村 明子(きむら あきこ)

木村 明子(きむら あきこ)

ACCN 北関東支部副支部長
社会福祉士 2 級キャリアコンサルティング技能士 産業カウンセラー 秘書技能検定1級

新潟市生まれ。専門学校(ビジネス秘書学科)に在学中、日本信販株式会社(弁護士介入債権担当)に入社。母校での指導歴を経て、2008 年産業カウンセラー資格を取得。若者サポステ、生活困窮者自立支援事業に携わる。
2017 年(独法)機構に労働衛生専門職として入職。「治療と仕事の両立支援事業」を担当するかたわら高校生キャリア支援、都内企業高卒新卒採用、在職者キャリアコンサルティングなどに従事

コラムの感想等はこちらまで(協議会 編集担当)

キャリアコンサルタントのさまざまな活動を応援します!「ACCN」のご案内はこちら


マンスリーコラム一覧へ戻る