マンスリーコラム
「生きる」をサポートすること、そしてACCNテーブル活動への誘い
日本におけるキャリアコンサルティングの実践家・理論家としてキャリコン創世期から活躍されてこられた木村周先生が旅立って、2年余りが過ぎました。木村先生とは生前、何度かご一緒する機会がありましたが、会うたびに「人はいつでも、いつからでも、そして何度でもやりなおせる。そのやり直しをサポートするのがキャリアコンサルタントの役割です。」ということを言っておられました。そして、同時に「やりなおしのエネルギーが足りなくなっているように感じている人はいてもエネルギーが無いという人はいない、キャリアコンサルタントには、クライエントに内在しているエネルギーへの気づきを促し、生きるために活用するためのやり方をともに考えていく、そういう役割があります。」といったことを付け加えることを忘れませんでした。
ACCNには、現在20を超えるテーブルグループがあり、それぞれ活発に活動しています。そこでは、セミナーや講習会と違い、講師と受講者という関係ではなく、互いにフラットな関係で、キャリアコンサルティング現場での実践事例をもとにした対話がなされています。参加者は、キャリアコンサルティングの様々な相談・支援場面での課題や気付きを共有します。そして、参加者一人一人が単なる知見や理論を超えた「実践場面のノウハウの具体的展開」や「理論の実践的応用」につなげています。
自分自身、3つのテーブルにスタッフとして、2つのテーブルにメンバーとして参加しています。内容はスタッフとして関わっているのが、①「中学校でのキャリア教育」、②「障害者の雇用支援」、③「1回限りもしくは制約のある環境下で行われる相談支援」の3つ、メンバーとして参加しているのが、④「自殺防止」、⑤「ハローワークを中心とした求職者支援」の2つです。一見すると内容が多岐にわたってはいるように見えますが、そのいずれもが「そこから先のキャリアを見据えて生きることをサポートする」ことを柱にしています。これは、自分が参加していない他のテーブルについても同様に言えることです。
そこで自分が参加しているテーブルでの気づきを、具体的に紹介したいと思います。
①の中学生に対しては「未来に向けてのエネルギーは実感しているけれども、何をどうしていけばよいのかわからない漠然とした思い」を形にすることが、②の障害者に対しては、「支援者ではなく伴走者としてともに考えともに生きること」をきちんと伝えともに輝けるありようを考えていくことが、③の期間や時間の制約のある相談場面では「その時、来談者が課題としていることを的確に把握し、できていることとすべきこと」を明確に形にし共有することが、④の自殺企図関連の支援場面(これは企図者のみならず既遂者の周囲の方についても)では「今の生に対する肯定的な気付きを共有し、そこから先に進んでいくこと」に対するなるべく具体的な示唆をすることが、⑤の求職者に対する相談支援の場面では「ごく当たり前の平凡な仕事を通して得られる実践スキルを形にし、知らず知らずに身に着けた職業能力」を実感してもらうことが、それぞれの支援場面の中で求められ、そのために「何をどうしていけばよいのか」をともに考えていくことができました。
こうしたことは、独学ではなかなか得ることができず、また、理論の学習や、第三者が行ったケースを紐解いての分析でもなかなか得られないものです。なぜならば、こうした「学習」は、体系的にキャリア支援の流れを把握し、場面ごとに必要な知識や技術を身に着けることが主な目的であり、クライエントの「生きる力」を引き出すためのマインドを身に着けることを目的としていないからです。学んだことを形にしていくのは、実践であり、それを繰り返す中で、キャリアコンサルタント自身のキャリアの轍が広がっていくのです。テーブル活動は、グループでの気づきを共有していくことで、自らが体験していなくても、その轍を広げることができるのです。
「なかなか実践の機会に恵まれない」「資格を取ったけれどもそれが十分に活かせていない」そう感じているキャリアコンサルタントの皆さん、さまざまなテーマ、世界をもったテーブルが待っています。とりあえず、ちょっと立ち寄って空いている椅子に腰かけてみませんか。そこからきっと何かが始まるはずです。あなたの生きる力のまだ見えていない部分が見えてくるかもしれませんよ。
(編集部注) 「テーブルって何?」
ACCNテーブル活動の詳しい説明は以下をご覧ください
https://www.allccn.org/activities/entry000263.html
コラムの感想等はこちらまで(協議会 編集担当)
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