キャリアコンサルティング協議会は国家資格「キャリアコンサルタント」の試験機関および指定登録機関と、国家検定「1級・2級キャリアコンサルティング技能検定」の指定試験機関です。

マンスリーコラム

2025年1月号

2025年 年頭のご挨拶

あけましておめでとうございます。新たな年の初めを迎え、皆様には健やかにお過ごしのことと、お慶び申し上げます。また、キャリアコンサルタント、キャリアコンサルティング技能士の皆様、また養成講習、更新講習実施団体をはじめとする会員団体、先生方、行政および関係諸機関の皆様には、日ごろより協議会の活動に一方ならぬご支援をいただいておりますことを、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

新たな節目を迎えるにあたって

さて、個人的な話題で恐縮ですが、現在、私は65歳です。2025年3月には、18年間勤務しました筑波大学を定年退職いたします。本年は自分にとって大きな節目の年となります。セカンドキャリアを考える年齢になったかと思うと、感慨深いものがありますが、新たな節目にあたり、自分の人生を振り返りつつ、新年のご挨拶をさせていただきます。

企業から大学へ

大学卒業後、エンジニアとして製鉄会社に就職をしました。しかしながら、自分の適性に自信が持てず、エンジニアという仕事に対する迷いから、モノを扱う仕事ではなく、「人に関わる仕事がしたい」との思いに至ります。そこで、タイミングよく発表された社内公募に応募し、教育ビジネス、組織人事や人材育成、教育体系の構築や実施、また、調査・分析など、さまざまな職種を経験しました。その後は人材育成にキャリアカウンセリングを応用した実践的施策の企画・実施に携わることになります。そこで約650例の面談を実施したのち、キャリアに関する学びを深めるために、さらなる道へと踏み出します。平成10年、筑波大学大学院教育研究科カウンセリング専攻カウンセリングコース(修士課程)(現、人間総合科学学術院カウンセリング学位プログラム)、平成16年に名古屋大学大学院教育発達科学研究科(博士後期課程)に入学し、5年間、働きながら社会人大学院で学んだのち、平成18年には筑波大学に教員として転職をしました。

私の特性

これまで一様に、誰かの支援を続けてきた私ですが、自分自身の特性について問われると、なかなか答えが浮かばないものです。ある時、一人の学生さんから「岡田先生の原動力は劣等感なんですね」と言われてハッとしたことがあります。たしかに私は、大学受験に失敗し、浪人をしていますし、社会人になってから受験した大学院も二度落ちています。思えば、企業にいた頃も現在の職場でも、つねに不安を抱えながら生きているように思います。しかし、そうした私の内奥にある自信のなさや葛藤が、なんとかその不安を解消しようとして、もがきながらも一歩ずつ前進しようとドライブをかけていたのかもしれません。また、そうした自分の弱い側面を自覚している一方で、私の強みをあえていうならば、「複合・融合する力」ということになりそうです。例えば、私は何かを実現するために、さまざまな手段を考え、方向性を検討し、時間をかけてじっくりと「妄想する」ことが好きです。そうすると不思議なことに、たくさんの人が力を貸してくださいます。私は常に、人の助けは感謝しながら遠慮なく借りることにしているのですが、そうするとまた何倍もの力が寄り集まって、多角的な視点から実現可能性が高まってゆくのです。私自身、こうした強みや弱みを確かめながら、65歳になった今も、日々、内省を続けている気がします。

人への感謝

このように考えると、私があたため続ける妄想を実現するために私に関わり、私のような存在を社会の中で活かしてくださっている多くの皆さんには、感謝の言葉しかありません。また、図らずも道がひとつに繋がっていることを実感するたびに、「人は人生から問われている存在である」というフランクルの言葉が思い浮かびます。私たち一人ひとりには、「なすべきこと」「果たすべき使命」が与えられているという考え方です。これまでの仕事を思い返すと、私にとって働くことの意味は、劣等感や自信のなさと向き合い、おこがましいと思いつつも人を育てることに注力しながら、人生から問われている問題をひたすら解き続けることなのかもしれません。

キャリアを一筋の歩みとして

私の仕事人生は、与えられた役割や役目を、ただ地道に、じと〜っと諦めずに続けてきた、細く長い一途な歩みだったように思います。何かを成し遂げるために懸命になったというよりは、人やご縁に恵まれたおかげで何とか自分の役割を果たすことができているように思います。そして、ひとたび後ろを振り返ってみると、そこには「人を大切にすること」といった私の核となる思いがあります。これからいったいどんな人生が待っているのか、今の私にはまったく想像もつきませんが、私はこれからも、「キャリア」を自分の主たるキーワードとして、人生に与えられた役割を問い続けながら切磋琢磨してまいりたいと思います。そして、そうした私たちの活動が、社会に生きる方々の輝かしいキャリアの創造に向けた一助になれば幸いです。

最後に、キャリアコンサルティング協議会は、指定登録機関、登録試験機関、技能検定指定試験機関として行政代行の役割責任を担い、クライエント、国、社会からの高い期待に応えて、一層信頼に足る機関として、今年も最大限の努力をしてまいります。同時に、さまざまな環境の中で奮闘されているキャリアコンサルタントやキャリアコンサルティング技能士の皆様に対するご支援と、キャリアコンサルティングの一層の普及啓蒙に努めてまいります。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

キャリアコンサルティング協議会 会長 岡田 昌毅

キャリアコンサルティング協議会 会長 岡田 昌毅

筑波大学人間系教授
人間総合科学学術院カウンセリング科学学位プログラムリーダー
(2020年4月~現在)
国際産学連携本部働く人への心理支援開発研究センター長
(2019年4月~現在)
キャリアコンサルティング協議会会長
(2021年6月~現在)
産業・組織心理学会会長
(2019年4月~2022年3月)


新日本製鐵株式会社(現、日本製鉄株式会社)、新日鉄ソリューションズ株式会社(現、日鉄ソリューションズ
株式会社)において、電気設備技術者、人材育成担当を20数年間経験。
2000年筑波大学大学院教育研究科カウンセリング専攻カウンセリングコース、2007年名古屋大学大学院教育発達
科学研究科心理発達科学専攻修了。博士(心埋学)。専門は「キャリア心埋学」「キャリア・カウンセリング」。

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