2025年5月号
キャリアコンサルタントの資格は必要?不要?
最近、キャリアコンサルタント(以下、キャリコン)は取得しても中々仕事はない、なので、資格の取得は不要なのでは?という声や、せっかく取得したのに5年ごとの更新をしなかった、という声を耳にする事が多くなりました。たしかに、と思うところもありますが、果たして資格は本当に不要なのでしょうか。本日は資格をどう活かしていったら良いのか、皆さんと一緒に考えていけたらと思います。
皆さんがそもそもキャリコンの資格を取得しようと思っている、もしくは思っていた理由は何でしょうか?まずはそこをしっかり確認もしくは再確認していく事から始めてみたらいかがでしょうか(自己理解)。
かくいう私はといいますと、7年前、広告会社の新卒採用担当をしており、なりたかった人事、さらに採用担当の仕事になれた、と思う反面、「なぜ人事、採用の仕事になりたかったか?それが理解できないまま、この仕事をしっかり続けていけるのだろうか?」と思うようにもなりました。そのような中、キャリコンの資格そのものが私の目指している対人支援と直結すると思い、資格を取得しました。それで、仕事にも活かせて、めでたしめでたし!となれば良かったのですが、そうはいきませんでした。最初の受験は業務多忙であったため未受験。その後、実技試験が上手くいかず、3度目でようやく合格しました。その間に組織改編による業務変更があり、労務部門に異動となってしまいました。労務担当者として相談に乗る機会は少なからずありましたが、相手は労務担当者にこれからのキャリアについての本音を話してくれる事はありませんでした。そこで、会社に「キャリア相談室の設置」「キャリア研修の創設」等の上申書を3度も提出しましたが、時期尚早として取り合ってもらえませんでした。せっかくこの資格を取得したのに活かせないと悩んでおりました。
そんな中、出身のキャリコン養成団体からこれから受験を控えている方達に合格体験談を話してもらえないか、との依頼がありました。1度未受験、3度目でようやく合格した私の話がお役に立てるのだろうかと思いつつ、会場では率直に自分の経験をお話させて頂きました。その際に偶然、養成講座で同じ先生で受講されていた方が参加されていて、「クラス全体のロープレ(実技)練習を見て頂けないか」とお声がけ頂きました。それをきっかけとして、長きに亘り同じ先生の方達を支援させて頂きました。途中から、他の先生のクラスからもご縁を頂き、支援させて頂く事となり、また、養成講座時代の同期からの紹介で、キャリコン養成団体での受験生支援にも携わる事となり、現在に続いています。資格を取得された方ならご存じだと思いますが、計画的偶発性理論(プランド・ハップンスタンス・ラーニングセオリー)そのもの、つまり、従来の研究の通り、「人のキャリアに影響を与える偶然の出来事とは、ほとんどの場合人との出会い」だと私は感じています。
ここまでの話を聞いて、「潮さんは実力があったからですよ」と思った方も多いかもしれません。私はもちろん実力をつけていく必要はあるとは思いますが、最初から実力があったから、とは全く思っておりません。資格を取得された方ならWILL(やりたい事)、CAN(出来る事)、MUST(やらなければならない事)をご存じだと思いますが、まずは自分が出来る事(CAN)、そしてそれを楽しむ事、その上で、MUSTが明確になり実践していく事が大切なのでは、と思います。もちろんWILL(やりたい事)も大切ですが、やりたい事「ありき」ですと、やりたい事が出来ていないと思うようになり、「この資格を取得しても何も意味がない」と思うようになるのではないでしょうか。そう思う気持も無理はありませんが、どのように考えていったら、出来る事があるか、をこの後一緒に考えていけたらと思います。
「とにかく実践を積むために無償でもいいので、その場が欲しい」、「せっかく資格を取ったのに無償なのはおかしい、有償であるべきだ。無償にするとプロとしての価値が下がる」といったような声も良く耳にします。どちらも以前私も感じたところでもあるのでごもっとも、とも思いますが、私は資格の活かし方は有償、無償問わず、人それぞれ自由であって良いと思っています。たとえば、PTA等の地域活動や傾聴ボランティア等で活かす事も充分出来ると思います。また、「潮さんは人事だから資格を活かせていいですよね」と仰る方も多いですが、実は人事だとかえって活かせない事のほうが多いです。皆さんは人事の方にキャリアの相談をしにいきますか?答えはノーの方がほとんどだと思います。むしろ人事でないほうが活かせる場はあるようにも思います。今皆さんがいらっしゃる職場でほんの少しでも良いので活かせる場がないか、あらためて考えてみたらいかがでしょうか。私自身は現在中間管理職として部下への関わり方だけでなく、上司との関わりにも活かしています。経営や上司が本当は何を考えているのか、カウンセリング的に関わっていっています。そうする事で聴いてもらえたと思ってもらえますし、自分自身も中間管理職として何をすべきかが明確になるからです。あとは、家族にも活かせると思います。よく多重関係は良くないと言われますし、実際に私で言えば子として夫として父としてという役割があるので、たしかに純粋な意味でのカウンセリングが出来ないというのも分かります。ただ、自身の役割をたまにはこえて、「家族だから」という枠組みを一旦なくして、純粋に話を聴いてみる、のは大変価値がある事だと思いますが、いかがでしょうか。家族の本当の声を聴いていく事で、これからの家族のあり方をどうしていったら良いのか、私自身が考えさせられています。
ここまでの話を理解はしたものの、実際に動くにはどうしたら良いか、と思っている方も多くいらっしゃるかもしれません。まずは身近な方(たとえば、同じ養成団体の同期)に自分は何が出来て、何をすべきで、何をしたいのかをお伝えしたり、逆に聴いてみたりする事からスタートしてみたらいかがでしょうか。また、ブログ、SNS(X、Facebook、Instagram等)、YouTube等で自分自身が何者であるかを発信していくのも良いと思います。その時に注意が必要なのが、あまりにも自分にはこれが出来ます、この仕事がしたいです、欲しいです、と主張し過ぎない事だと思います。自分が出来る事ややりたい事はこんな感じ、ぐらいに留めて、あとは相手にとって有益と思われる情報を惜しみなく流していく事が大切だと思います。皆さんは相手に何か仕事をお願いする際に、見ず知らずの方にいきなりお願いしたりしますか?それは中々ないと思うので、まずは自分がどんな人間かを相手に知ってもらい、信頼関係を構築していく事が大切なのではないでしょうか。あわせて、色々な勉強会、交流会、実践の場に参加してみる事をお勧めします。気に入れば一つのところに留まるというのも良いですが、アンテナを高くはって、より自分に合うところを常に探し続けていって頂けたらとも思います。
最後になりますが、ACCNで活動するメリットについて私なりの見解をお伝えします。ACCNは支部活動の中で交流会だけではなく、著名な方の講演を良心的な価格で受講できる事が出来ます。また、自分の所属する支部だけでなく、別の支部の交流会や講演等にも何ら制約がなく参加する事も出来ます。そして、支部活動とは別にテーブル活動というのが多くあり、それぞれ同じテーマで興味関心を持った仲間と全国規模で活動を進める事が出来ます。ACCNでまずは色々な活動に積極的に参加される事で、この資格の活かし方を感じられると思います。皆さんが皆さんらしいキャリコンになって頂けるよう、心から願っています。どこかで皆さんとお目にかかり、実際にお話できる機会があれば嬉しいです。その日を今から楽しみにしております。ここまでお読み頂き、ありがとうございました。
潮 数馬(うしお かずま)
ACCN神奈川支部 副支部長
【略歴】
大学卒業後、百貨店販売員(2年)、人材派遣会社の営業・コーディネーター(2年)、印刷会社の総務・経理・給与(6年)、外資系ホテルの給与・人事(4年)、広告会社の人事(12年)を経て、現職は建設業の人事・総務・経理(5年)。
外部活動では、オンラインカウンセラー、障碍者就職フェア相談員、キャリアコンサルタント養成講座サブ講師、キャリアコンサルタント試験対策講座講師。
他、うしお塾(①国キャリ受験生無償支援、②2級技能士受検生無償支援③大学生就職支援コミュニティ)塾長、キャリコンの輪 実行委員 等。
【資格】
・2級キャリアコンサルティング技能士
・国家資格 キャリアコンサルタント
・メンタルヘルス・マネジメント検定2種
・第一種衛生管理者
他
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