マンスリーコラム
整える、踏み出す、つながる
- 整える力が支援力を作る -
"一歩踏み込んだ人が、成功を手に入れることができる"
中国茶の師である棚橋篁峰(たなはし こうほう)先生のその言葉が私の胸に残りました。これはお茶の世界だけでなく、私がこれまで携わってきたキャリア支援の現場にも通じる言葉です。
それは、今年の夏、中国茶の旅で出会った印象的な言葉でした。私は趣味が高じて20年近く学び続けてきた中国茶を深く知るため、中国茶の産地を巡る10日間の旅に出ました。中国では古来より、茶は単なる飲み物ではなく、医療や哲学、芸術とも深く結びついた"文化"として人々の暮らしに根付いています。旅の中で、鳳凰単叢茶(ほうおうたんそうちゃ)を中国全土に広めた文國偉さんにお会いし、地元・潮州でお茶をいただく機会がありました。棚橋先生がそのときにかけてくださったのが、冒頭の言葉です。その一言に、私はキャリア支援者としての自分の歩みを重ねました。
私は18年間、医療機関で医療秘書や人事・労務の仕事に携わってきました。働く人の健康や職場環境に関わる中で、医療現場のストレスを肌で感じ、「働くことを支える人になりたい」という思いが芽生えました。在職中に産業カウンセラーや2級キャリアコンサルティング技能士の資格を取得し、退職後はキャリア支援の道へ。気づけば11年が経ちました。最初は新卒・既卒者支援から始まり、企業都合での離職者、60歳以上のセカンドキャリア支援へと対象は広がり、現在は、就労を希望する無業の方(中には長期のひきこもり経験を持つ方も)やそのご家族の支援に力を入れています。相談者は15歳から49歳と年齢層もさまざまです。
多様な方々と向き合う中で、"心身が整っていなければ、働くことは難しい"と、私は強く実感するようになりました。この実感は、持病の喘息と長年向き合ってきた自分自身の経験とも重なります。もともとは趣味だったヨガも、呼吸法やアーサナ(ポーズ)の学びを深めるうちに、心身を整える大きな支えとなりました。より深く学ぶために、RYT200(全米ヨガアライアンス認定)も取得しました。仕事に取り組む際、心身の健康状態はパフォーマンスに直結します。ヨガは、呼吸と身体の動きを通じて自律神経を整え、ストレスを軽減する効果があるとされています。マインドフルネスの要素も含まれ、「今ここ」に意識を向けることで、不安から心を解き放つ手助けにもなります。現在は、引きこもりの方やそのご家族を対象に地元でヨガクラスを開いており、安心して呼吸を整え、体を動かせる場づくりを大切にしています。また、支援学校の教職員向けの研修でもヨガを取り入れる機会があり、「支援される側」と「支援する側」双方のケアの重要性を改めて実感しています。
一歩踏み出すためには、誰であっても心身のケアが必要です。支援の現場でのこうした経験は、「働く人を全人的に支える」という、キャリア支援において欠かせない視点を育ててくれました。ヨガを通してその一歩を後押しできることも、大切な役割だと感じています。ヨガは「頑張る」ことを求めるものではなく、今の自分をそのまま受け入れ、無理なく向き合うプロセスです。それは、キャリア支援の本質とも重なります。私はヨガを通じて、「非言語的アプローチ」や身体性・居場所づくりの重要性、人とのつながり、自分を整えることの大切さ、そして支援の形は一つではないということに気づかされました。
そして改めて感じたのは、"息を整えることは心を整えること"それが、生きる力につながるということです。中国茶もまた、私にとって「呼吸を深くする」文化体験です。お茶を丁寧に淹れ、香りを味わい、五感を開いて過ごす時間は、心をリセットする豊かなひととき。現地で体験したお茶の奥深さや、人とのつながり、文化の重なりが、私に「一歩踏み出す勇気」が新たな可能性をひらくことを教えてくれました。
キャリアは、仕事だけで語れるものではありません。心身、家族や社会との関係、そして自分自身の在り方すべてが影響しています。だからこそ、支援者自身も「整える」「踏み出す」「つながる」を大切にしながら、健康・呼吸・居場所・文化といったエッセンスを織り交ぜて、これからも一人ひとりの人生に寄り添っていきたいと思います。
コラムの感想等はこちらまで(協議会 コラム担当)
キャリアコンサルタントのさまざまな活動を応援します!「ACCN」のご案内はこちら
