マンスリーコラム
2026年 年頭のご挨拶
あけましておめでとうございます。新たな年の初めを迎え、皆様には健やかにお過ごしのことと、お慶び申し上げます。また、キャリアコンサルタント、キャリアコンサルティング技能士の皆様、また養成講習、更新講習実施団体をはじめとする会員団体、先生方、行政および関係諸機関の皆様には、日ごろより協議会の活動に一方ならぬご支援をいただいておりますこと、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
新年にあらためて問う、キャリア支援者の在り方
新しい年の始まりにあたり、本年はあらためて「キャリア支援者の在り方」について、皆様とともに考える機会にしたいと思います。私たちの役割は、個々の面談にとどまらず、組織への働きかけや人材育成を通じて、ときに人が自らの歩みを見失いかける瞬間にも立ち会いながら、「人の成長」そのものを広く支援することにあります。こうした多層的な支援に携わる者として、私たちは何を拠りどころに人と向き合っているのでしょうか。成果や変化が求められる現場に身を置きながら、どのような心構えで自らを律し、専門職としての姿勢を保ち続けていけばよいのでしょうか。
新年という節目にあたり、支援者としての根幹をなす精神や、求められる姿勢について、私なりの問いや省察を手がかりに、あらためてその在り方について考えてみたいと思います。
自己成長と誠実な関わり:支援者自身の成熟という土台
キャリア支援の実践は、知識や技法の習得だけで成り立つものではありません。むしろそれは、支援者自身がどのように生き、働くことをどう受け止めているのかという在り方と、深く結びついています。
私たちは、相談者が職業人生の中で直面する迷いや揺らぎ、そして成長の節目に寄り添います。その一つひとつに誠実に向き合い、その人の内にある力が立ち上がってくるのを静かに支えるためには、支援者自身が自分の内側に目を向け続ける姿勢が欠かせません。
支援者としての自己成長は、ある一点で完成するものではなく、歩みの途中にあり続けるものです。分かったつもりになった瞬間に、見えなくなるものもあります。だからこそ、「まだ分からない自分」を引き受けながら、心の成熟を目指して歩み続けること。それ自体が、キャリア支援者の在り方の土台を形づくっていくのだと考えます。
学び続けるということ:あらゆる経験を支援の糧に
支援者は、なぜ学び続けるのでしょうか。それは知識を増やすためではなく、目の前にいる「人」の成長に、より深く、より誠実に関わるためです。変化し続ける社会や組織の文脈の中で、自らの支援が本当にその人の力になっているのかを問い直し、専門職としての倫理観を磨き続けるために、私たちは学びを手放さず、研鑽を重ねていきます。
その学びは、研修や資格取得に限られるものではありません。実務の中での試行錯誤やスーパービジョンでの対話、日常生活の中で経験する戸惑いや喜び、友人や家族との会話、心に残った書籍や映画、あるいはゼミでの議論にいたるまで、そうした一つひとつが、支援者としての感受性をより豊かに耕していきます。あらゆる経験から何を受け取り、どのように意味づけるのか。その姿勢そのものが、支援の質に深みをもたらしていくのです。
専門性を育むということ:実践と理論を往還する
多様な経験の中から、私たちは何を学び取っていけばよいのでしょうか。キャリア支援の質を支える核にあるのは、人を理解しようとし続ける姿勢です。その土台となるのは、日々の地道な実践を通して培われる経験知であり、一つひとつのケースに真摯に向き合う中で、時間をかけて積み重ねられていく智慧です。
一方で、その理解をより確かなものにするためには、経験や感覚にとどまらない視点も欠かせません。キャリア心理学やカウンセリング心理学、産業・組織心理学、さらには社会学や労働経済学といった学術的知見は、実践を別の角度から照らし直し、意味づけを深めるための手がかりを与えてくれます。
自らの経験知とさまざまな理論とを行き来させながら、その根拠を問い続けること。実践と理論を重ね合わせながら往還し続けること。その絶え間ないプロセスこそが、支援の信頼性を支える豊かな専門性を育てていきます。
言葉と向き合うということ:信頼を育てるコミュニケーション
支援者にとって欠かせないのは、温かさと論理性の両方を行き来しながら人と向き合う力です。その出発点にあるのが、徹底した「聴く姿勢」です。相手の言葉に耳を傾け、評価や解釈を急がずに受け止めること。その積み重ねが、信頼の土台を形づくります。
私たちが発する言葉は、想像以上に相手の認知や感情に影響を与えます。人の心に届くのは、正しさよりも、その言葉に込められた「思い」なのかもしれません。だからこそ支援者は、どのような姿勢で言葉を発しているのかを、常に自らに問い続ける必要があります。
また、相談者が直面している状況が、自分自身にとって未経験であることも少なくありません。そのようなときに求められるのは、安易で表面的な理解ではなく、分からなさを抱えたまま、あらゆる可能性を想像し続ける力です。その姿勢が、真の共感を深め、支援の焦点を見誤らないための大きな支えになります。
日々の研鑽を通じて理論とスキルを磨き、自らの関わりを信頼できる状態に保つこと。その積み重ねが生む静かな自己確信が、支援者の態度に安定感と説得力をもたらし、クライエントの安心感へとつながっていくでしょう。
人の成長を信じ、場を提供する役割:変容の先にある未来を見据えて
支援者が立ち返りたい根本的な願いは、「人は生涯成長する存在である」という信念ではないでしょうか。支援の現場ではまず、目の前にある切実な悩みや苦悩に丁寧に向き合うことが求められます。そうした関わりを通じて心の余白が生まれたとき、人は初めて自らの経験から学び、未来へ向かう力を取り戻していきます。
キャリア支援の核心は、問題解決そのものではありません。その過程を通じて、クライエントが主体的に自らのキャリアを構築・再構築していく「変容」を支えることにあります。支援者の役割は、その内なる力が立ち上がるための場を整え、見守り、必要なときにはじっと待つことなのだと思います。
揺るがない軸と、変わり続ける柔軟さ
こうした支援を誠実に続けていくためには、支援者自身の心の在りようが整っていることが欠かせません。大切にしている信念を持ち、自らを律し、言葉と行動に責任を持つこと。一方で、自己の成長を妨げる不要なプライドは潔く捨てる。いかなる時代や環境にあっても、自分を更新し続けることを恐れない柔軟な姿勢は、支援者にとって重要な資質だと思います。素直に学ぶ姿勢と誠実な自己省察、そして慢心しない謙虚さを持ち続けることが、信頼の構築と深化につながっていきます。
支援の現場に立つ私たちは、完成された存在である必要はありません。むしろ、自らを問い直しながら、常に進化し続ける存在でありたいものです。
支援者としての内省と省察:地道な歩みと高い視座
キャリア支援は、支援者自身の地道な歩みによって支えられています。目の前の実践を丁寧に積み重ねる覚悟と同時に、クライエントや組織、そして自分自身の未来を見据える視座を持つことが求められます。
この「今」と「未来」をつなぐものが、他でもない支援者自身の真摯な内省と省察です。自身の強み・弱みの自覚はもちろん、誰の心にも存在する劣等感や自信のなさと向き合う勇気、さらには自己の負の側面や心の奥底にある未熟さを認め、対峙する自己との対話が欠かせません。
自分自身の光の部分だけでなく影の部分にも目を向け、内なる葛藤を抱えながら歩んできた経験こそが、支援者としての奥行きをもたらします。自己理解に終わりがないことを引き受けながら、自らを丁寧に耕し続けることで、私たちはクライエントの複雑な内面にも寄り添い、その可能性を信じ抜くことができるのではないでしょうか。
おわりに:使命を全うする喜び
キャリア支援者とは、人の成長を信じ続けることで、その人が本来持っている可能性に光を当てる存在なのだと思います。それは決して容易な道ではありませんが、人が自らの力を取り戻し、次の一歩を踏み出す瞬間に立ち会えることは、大きな責任であると同時に、深い喜びでもあります。
新しい年が、支援者としての在り方をあらためて見つめ直し、自らの歩みに静かな誇りを持てる一年となりますように。皆様お一人おひとりの実践が、人の未来を支える確かな力となることを、心より願っております。
最後に、キャリアコンサルティング協議会は、指定登録機関、登録試験機関、技能検定指定試験機関として行政代行の役割責任を担い、クライエント、国、社会からの高い期待に応えて、一層信頼に足る機関として、今年も最大限の努力をしてまいります。同時に、さまざまな環境の中で奮闘されているキャリアコンサルタントやキャリアコンサルティング技能士の皆様に対するご支援と、キャリアコンサルティングの一層の普及啓蒙に努めてまいります。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
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