キャリアコンサルティング協議会は国家資格「キャリアコンサルタント」の試験機関および指定登録機関と、国家検定「1級・2級キャリアコンサルティング技能検定」の指定試験機関です。

マンスリーコラム

2025年2月号

【ゆるキャリ】第10回 生きづらさの時代とキャリアコンサルティング

■生きづらさを感じている人はどれぐらいいるのでしょう? 

 突然ですが、あなたは生きづらさを感じることがありますか ?
「生きづらさ」というテーマで、10代から70代の一般の方を対象とした調査がありまして、その結果によると「 全く感じない」という人は8%、「ほとんど感じない」は40% でした。そして「頻繁に感じる」は 16% 、「たまに感じる」は 36%でした。

参考:「2人に1人が「生きづらさを感じる」と回答 - それを実感する場所、最多は? 」マイナビニュース2023/11/24掲載(ワンネス株式会社「生きづらさ」に関する実態調査引用)

■生きづらさを感じる人は多いのでしょうか?

 この調査で実に半数以上の方は生きづらさを感じながら生きているということがわかリました。この数字が何を意味するのか、それは価値観によって様々でしょう。
 例えば、生きるというのはそもそもが辛いことなのだ...という人間観であれば、半分なんて生ぬるい!と思われるかもしれません。 私も 昭和の生まれですが、昭和ならそういう価値観があったような印象を持っています。

■ウェルビーイングの時代

 しかし 現代社会はそういう時代でもありません。
ウェルビーイングが世界的な関心事として注目されています。長寿社会に向けてただ長生きをすればいいというだけではなく生き方の質、もっと言えば人生の満足度のようなものが追求される時代になってきました。キャリアコンサルティングもただ生きていけばいいというものではなく、より良い生き方を追求するものです。なので、今現在のキャリアコンサルティングの価値観からすると、半数の方が生きづらさを感じているというのは改善しなくては...と今後の課題として考えていくことになります。

■生きづらさの正体とは

 では、生きづらさの正体は何でしょう?
少し大げさになりますがシンプルに表現すると、私たちの遥かむかしのご先祖が困難な環境を生き抜いた遠い記憶が私たちを 生きづらくしています。
 なぜかと言うと私たちのご先祖はジャングルからサバンナに生存環境を変えた時、サバンナは一箇所でじっとしていると死んでしまうという環境でした。次はどこへ向かえば生き残れるか、それを必死で考え続けなければ死んでしまいます。私たちのご先祖は少なくとも500万年以上は考え続けて生き残ってきたことが近年の人類学的な証拠から明らかになっています。

■生きづらさとこの先の不安はご先祖からの贈り物

 そこで私たちは常にこの先の物語を描いていなければなんだか不安になってくる、つまり生きづらい生き物になったのです。逆に言えばこの先の物語を見つけることはとてもとても大きな喜びになるのです。 この喜びはご先祖からの贈り物だと私は思っています。
 今多くの人が感じている生きづらさは 漠然とした将来への不安ではないでしょうか。この先どうなるかわからない、どうなるかわからなすぎて展望を追いかけにくい 、そんな中で私たちは生きているのです。
この生きづらさと向き合える専門職、それはキャリアコンサルタントでしょう。キャリアコンサルティングとは何かと私が一般の方に聞かれたら、ほとんどの場合でクライアントのこの先の物語をご一緒に描く仕事ですとお答えしています。そして キャリアコンサルタントはそのための専門性を豊富に備えています。生きづらい現代社会で 本当の意味で力になれる、そんなキャリアコンサルティングを私もいつも目指しています。
 生きづらい時代だからこそ、さあこの先の未来を語り合いましょう。そして私たちの展望を描きましょう。その時の喜びがご先祖からの大きな大きな贈り物なのです。

杉山 崇 アゴラAGORA 言論プラットフォーム

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杉山 崇(すぎやま たかし)

杉山 崇(すぎやま たかし)

神奈川大学 人間科学部 人間科学科 教授
神奈川大学大学院 人間科学研究科人間科学専攻(臨床心理学分野演習担当教員)
専門分野:臨床心理学(心理療法・異常心理学・うつ病学), 産業社会心理学・キャリアコンサルティング, 感情・認知パーソナリティ心理学
学習院大学大学院人文科学研究科にて心理学を専攻。在学中から、障害児教育や犯罪者矯正、職場のメンタルヘルス、子育て支援など、さまざまな心理系の職域を経験した。
幼稚園児から高齢者まであらゆる年代のあらゆる心の問題に立ち会ってきた雑草系臨床心理士。並行して人づきあいと心の健康の研究を行い日本学術振興会特別研究員として国費の助成を受ける。
長野大学専任講師、山梨英和大学准教授などを経て、2013年から現職。
現在は、脳科学と心理学を融合させた次世代型の心理療法の開発・研究を行っている。

【杉山崇の目指すもの】
心理学でみなさんがハッピーになるお手伝いをしたくて,心理学研究者/心理療法家を目指しました。
人生は,みんな一人分いただいています。
必然的に,生きていける人生と,生きていけない人生が発生します。
現代社会では,何を生きて,何を生きないか,決めるのは私たち自身です。

自分で決められる現代社会(基本的人権とかいうもの)に感謝するとともに,
自分で決めなければいけない負担も私たちは背負っています。
ここから現代的な格差が生まれてきます。

こんなことを考えていたら,いつの間にか心理療法の仕事にたどり着いて,心理学の研究者をやっていました。
人生を楽しみたおすコツ,世の中をより生きやすくするコツご一緒に探しましょう。

コラムの感想等はこちらまで(協議会 コラム担当)

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