マンスリーコラム
【 キャリなに? 】#1 話をきくということ
キャリアコンサルティングの過程において、最初に取り組むのは、相談者の話を「きく」ことです。そのことを通して、相談者との共同作業によって相談者の姿が二人の間に浮かび上がってくることを目指します。そこには、相談者が認識している現在の状況だけでなく、理想や目標、過去の経験、時には人生観、幸福感が含まれることもあります。
ここでの「きく」には、「訊く」「聞く」「聴く」3つの漢字のどれがあてはまるでしょう。
第1は「訊く」です。これは尋ねる、質問するという意味です。共同作業として、ではなくて、キャリアコンサルタントが専門的な視点で最適解を探し出そうとするなら、正解に導く効率的な質問を重ねて情報収集をして、答えを見つけたらそれを相談者に伝えて指導することがよさそうです。この漢字がふさわしいときもあるかもしれませんが、この場合、相談者の多くは問われるままに答える中で、次第に自分で考える姿勢を徐々に手放していくでしょう。質問の意図が相談者に伝わらなければ一問一答に陥りがちです。導き出された答えが相談者にとってピンとこなければ、キャリアコンサルタントは説得しないといけなくなります。
第2は「聞く」です。これは、音を受け取るということですから、相談者が語る言葉を正確に受け取ることを意味しています。相談者が話したことを一言一句間違わずにそのまま復唱して、正しく聞いていることを相談者に伝えます。言葉で表現されたものを正確に受け取ることで、相談者を理解できるという考え方がその根底には見られます。その前提として、私たちは考えていること、感じていること、体験したことは、すべて言葉で理解して、それを適切に表現できていることが必要です。しかし「確かにそうだ」と自信を持って言える人はあまり多くはないかもしれません。
第3は「聴く」です。これは、相手が「伝えようとしているもの」を受け取るという意味を持ちます。使われた言葉やその意味だけでなく、その言い方や間、声の高さ、表情、しぐさなど、受け取ったもの全てを手掛かりに、相談者が伝えようとしているものを受け取ろうとします。このような聴き方をすることで、徐々に相談者の世界に近づいていくことができます。そのため、相談者の話をきくというときには、「聴く」という漢字を使います。
穏やかな笑顔で相談者の話を聴いている姿を傍らから見ると、大したことをしていないように思えるかもしれません。うなずいたり、発言を繰り返したり、表情が変わったりはしますが、何か特別なことをしているようには感じさせないでしょう。しかし、心の中では相談者に近づこう、相談者を理解しようと、頭も心もフル回転しています。白鳥が湖の上を優雅に滑っているその水面下で、絶えず足を動かして進んでいる姿が思い出されます。
聴いたあと、自分が受け取ったものを相談者に伝えます。相談者がそれを補足してくれたり、修正してくれたりすることを重ねることで、核心に近づいていきます。そうやって正確に理解しようとする誠実な姿勢に、相談者は安心感、信頼感を抱いてくれるでしょう。こうして相談関係は構築されていきます。誠実に話を聴いている人の姿をまねて聴いているふりをしても伝えたいことを受け取ることはできませんし、同じような相談関係が作られることもありません。キャリアコンサルタントにとって最も大切なことは、まず誠実に耳を傾けること、「聴く」ことなのです。
#コラム「キャリアコンサルタントって何をする人?」#1
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