マンスリーコラム
【 キャリなに? 】#4 相談者の悩み、実は氷山の一角?(1)
ーキャリアコンサルティングでまずやることとはー
キャリアコンサルティングの過程でまずやることは、問題把握です。たいていの場合、相談者は何かに困って相談に来ています。この困っていることを正しく理解することから始めます。
その際に、私たちの在り方はとても重要です。相談者の今を正確に理解し、気持ちをありのままに受け止め、何に困っているのかを正しく理解しようとする誠実さが、信頼感や安心感を育てます。その過程で相談関係が築かれていきます。信頼関係を築いていくために何かを特別やるということではありません。つまり、問題把握の過程でキャリアコンサルタントの在り方が伝わることにより、自然と作られていきます。
問題は、問題点や欠点、不足とは違います。まるであら捜しをするように、相談者の話を批判的に聞こうとする場面をよく見かけますが、それでは相談者が安心して悩むことはできないはずです。
まず、困っていることが語られますが、はっきりとはしていないことが多いものです。もし、それが自分の状況を端的に表しているならば、すでに問題は解決しているはずだからです。困っていることを氷山に例えるなら、相談者に見えているのは海上に浮かんでいる一部分だけです。そこで話を聴きながら氷山の全体像を明らかにしていきます。語られたことを手掛かりにどんな状況の中で何に困っているのか、なぜ困っているのかを共有していきます。この過程は問題把握と呼ばれています。
「どうしたらいいかわからなくて困っています」と言われたとしても、何をしたらいいか、何を選んだらいいかを知りたいとは限りません。それ以外にも、「今何が起こっているかが理解できていない」「何を目指したらいいかがわからない」「何を基準に選んだらいいかわからない」「何を大切にしたらいいかわからない」「自分が何を望んでいるのかはっきりしない」「それぞれを選んだ時の結果が予想できない」「別の事情が複雑に絡み合っている」「周囲の人に賛成してもらえないかもしれない」といった時にも、「どうしたらいいかわからなくて困っています」と語られることはよくあることです。
そこで、まず「どうしたらいいかわからなくて困っている」について、どういう状況で、どんなことに困っているのかを共有していくことが必要なわけです。そうすると、他の選択肢との葛藤であったり、合理的にはその選択が正しいとは思うけど不安や不満があったり、自分はそうしたいが周囲の人が反対しているので困っているなど、困っていることがより明確になります。迷っている、納得できない、説得できないのだと、困っていることが共有できるわけです。
これを実現させるためには、私たちが「どうしたらいいのかを考えない」ことです。「どうしたらいいのかわからない」と言われると、つい「どうしたらいいか」を考えてしまいがちですが、これは相談者が考えることであって、キャリアコンサルタントが考えることではありません。悩みもその人の人生の大事な要素です。それを他人が考えて答えていたら、それは「悩み泥棒」「人生泥棒」になってしまうかもしれません。
困りごとは「主訴」や「クライエント視点での問題」、その理由の仮説は「見立て」や「キャリアコンサルタント視点での問題」と言い換えることもできます。これらを総称して問題把握と呼ばれます。何に困っているのかを共有できた後に私たちが考えることは、「なぜ困っているのか」です。
相談の時間は、相談者のものです。なるべく長い時間を相談者のために使えるように、面談を進めていくようにしましょう。
#コラム「キャリアコンサルタントって何をする人?」#4
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