キャリアコンサルティング協議会は国家資格「キャリアコンサルタント」の試験機関および指定登録機関と、国家検定「1級・2級キャリアコンサルティング技能検定」の指定試験機関です。

マンスリーコラム

2026年4月号

【 キャリなに? 】#9
「どうしたらいいか」を考えるのは相談者。ではキャリアコンサルタントの役割は?

相談者がどうしたらいいのかをキャリアコンサルタントが考えて、答えを探そうとする場面に遭遇することがあります。答えが見つかるとそれを相談者に伝えたくなりますが、相談者の気づきや成長を大切にしたいので、答えを押し付けるわけにはいきません。「こうしたらいいと思いますがいかがですか」と質問して、相談者に「はい」といってもらうようにしてごまかすこともありますが、答えをキャリアコンサルタントが用意することに変わりありません。

どうしたらいいかを考えるためには、詳細な情報が必要ですから、答えが見つかるまで、背景も含めて根掘り葉掘り質問を重ねることになります。徐々に相談者は訊かれたことに答えるだけになっていって、自分でどうしたらいいかを考えないようになっていきます。依存的になってしまっては、目指すキャリア自律からは遠ざかってしまいます。

キャリア自律とは、環境変化に合わせて、個人が自らのキャリアを主体的に設計・構築し、生涯にわたって継続的な能力開発や学習に積極的に取り組む姿勢のことを言います。それを援助するのがキャリアコンサルティングですから、自律性や主体性、積極性はとても大切です。自律的であるとは、他者からの支配や制約を受けず、自分の価値観、規範や考えに基づいて、自分の責任で判断、行動する傾向を言います。自律的な行動の原動力は、自分でそうしたいからという気持ちです。単なるわがままと異なるのは、社会や周囲の規範と自分の欲求とがうまく調和できたときに実現できるからです。周囲の人とのつながりの安心感(関係性)のなかで、自分の意思を活用(自己決定)しながら、周囲に意味のある働きかけが可能である(有能)時、人は自律的な行動が可能になります。

キャリアコンサルタントが考えるのは「どうしたらいいか」ではなく、「なぜ決められないのか」「なぜ行動できないのか」「何が相談者の邪魔をしているのか」であることが多いようです。「情報が不足しているから」なら、情報提供が有効です。「何を考えたらいいかが分からないから」であれば、今の状況を整理することで考えられるようになるかもしれません。ド・シャームスは自己原因性という概念を用いて、自律的な人の特徴として次の6つをあげています。

(1)内的コントロール(行動は自分で決められると考えている)、
(2)目標設定(実現可能な目標を適切に立てられる)、
(3)手段的活動(目標達成のための適切な手段を選ぶことができる)、
(4)現実性知覚(現在自分が置かれている状況を正しくとらえている)、
(5)個人的責任感(行動の結果を自分の責任であると受け止めることができる)、
(6)自信(自分の能力や努力、将来像などを信じることができる)

キャリアコンサルティングの過程は、同時にこれらをうまく引き出して、相談者の自己原因性を高める働きかけになっているはずです。

「どうしたらいいか」を考えてしまう背景に、相談者に対する敬意の不足、つまり、目標も手段も決められない、自己理解も仕事理解も不足していて現実を捉えられていないという見方や、だから、専門家であるキャリアコンサルタントが答えを探してあげなくてはという奢りがないことを信じています。

#コラム「キャリアコンサルタントって何をする人?」#9

❖ 「キャリアコンサルティング、キャリアコンサルタント」のことをもう一度考えてみるコラム「キャリアコンサルタントって何をする人?」(キャリなに?)は毎月15日に公開されます

キャリアのことをいろいろなテーマで「ゆるやか」に考えたコラム「ゆるキャリ」(全12回)のバックナンバーも併せてお読みください こちら

石崎 一記(いしざき かずき)

石崎 一記(いしざき かずき)

1958年7月埼玉県生まれ

1級キャリアコンサルティング技能士
カウンセリングルーム「ウサギのはらっぱ」主宰
埼玉県スクールカウンセラー
前東京成徳大学応用心理学部教授

平成14年度より23年度まで、厚生労働省キャリアコンサルティング研究会委員、同研究会各種部会座長等を歴任。
発達心理学の視点から、働く人の伴走者として幸せづくりのお手伝いをすることに取り組んでいる。
What a Wonderful Worldの世界の実現がライフワーク。

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