キャリアコンサルティング協議会は国家資格「キャリアコンサルタント」の試験機関および指定登録機関と、国家検定「1級・2級キャリアコンサルティング技能検定」の指定試験機関です。

マンスリーコラム

2026年6月号

【 キャリなに? 】#11
スーパービジョンで指導者が考えていること

様々な指導者がいらっしゃるので一概には言えませんが、スーパービジョンで指導者が考えていることは概ね共通しているのではないかといったところを整理してみましょう。

第1に、スーパービジョンの時間は、スーパーバイジーのための時間であり、それ以外はなるべく時間を取りたくないと考えています。

自己紹介として略歴や学習歴、好みの理論や立場を説明されても、キャリアコンサルタントとしてどこで仕事をしているか以外は、スーパーバイジーにとってはあまり意味がありません。もしもその後のスーパービジョンが特定の理論に基づいて行われるのであればそれも追加する必要はありますが、そうでない限りは、なるべく短い時間で済ませたい、早くスーパーバイジーの話を聴きたいと考えています。延々と説明をした後で、「では早速、ケースについてお話を伺います」などという無神経で不躾な言い方をすることはありません。簡単に済ませてこその「早速」ですから。

第2には、スーパーバイジーが話しているときには、表情やしぐさ、視線、抑揚や間の情報も受け取りたいので、スーパーバイジーから目を離したくないと考えています。

そこには、たくさんの手掛かりや情報が含まれているからです。「ちゃんと話は聴いていたつもりでしたが...」と言っているけど、ちょっと言いよどんでいるのは何かまだ口にしていない気持ちがあるのかな、とか、「つもりでしたが」とはその後なにかあったのかな、など頭と心は休まる暇がありません。分かったつもりも、流すこともできません。資料に目を落としたり、メモをとったりするのもはばかられるほどです。
かといって手元を見ないでメモを取るといったアクロバティックな技を見せてスーパーバイジーを驚かすこともしません。そもそもメモを取らなくても済むようにしっかりと心に刻み、記憶に残す覚悟を持って話を聴きますから、忘れたらどうしようといった不安を覚える暇もないのです。とはいえ実際には忘れることもありますが、その際は正直に聞き直せば済む話です。

第3に、スーパーバイジーがキャリアコンサルタントとして成長することが目標であり、また「そのケースについて、スーパーバイジーがどうとらえ、どう対応したか」だけがテーマであると考えています。

キャリアコンサルタントとしての成長については、スキルに関して協議会のHPでも解説していますのでぜひ参考にされてください。単にやり方のパターンをたくさん手に入れることでも、自分の得意なスタイルを確立することでもありません。ましてや、「似たような」ケースでどう対応したらいいかの正解を得るためではないのです。「似たような」というとらえ方は、概念化、抽象化と言われる心の働きですが、何に注目して概念化するかによって全く異なるからです。
例えば、「シングルマザーで5歳の子どもがいらっしゃる転職希望の相談者」が2名いても、似ているかどうかはわかりません。ここだけは共通しているので、印象は似ていても、性格、スキル・資格、就業経験、親からの支援状況、興味・関心・適性など、むしろキャリアコンサルティングにとって重要な事情はすべて個々に異なるし、それを大切に扱うことこそ、私たちの役割であるはずです。スーパーバイジーが「今後似たようなケースに出会ったときに役立つように、対応の仕方を教えてほしい」と言ってきたら、その考えがまずは指導のテーマになるかもしれません。
同様に、「この場面でどのように質問されたのですか」「なぜそのように進めたのですか」と訊くことはあっても、「普段あなたはどうされていますか」という質問は特別の事情がない限りしないはずです。後者の質問の背景には、「行動は相手とのやり取りの中で決まる」のではなく、「すべてその人の特性によって決まる」という信念が透けて見えます。この考え方は、傾性帰属傾向と呼ばれる歪みを含んでいます。キャリアコンサルティングの過程で見ると「人間関係がうまくいかないのは、概して相談者に不足があるからだ」と決めつける見方にも共通しています。

スーパーバイザーは、スーパーバイジーが相談に来ていることに尊敬の気持ちを持っています。それに応えるべく、スーパーバイジーの成長とクライエントの幸せのために、自分の全力を尽くそうと心と頭を働かせます。自分の一挙手一投足がスーパーバイジーにお手本として受け取られるかもしれないという不安や重圧に耐えながら、笑顔で聴いていきます。水面下では必死に足を動かしながらも優雅に湖面を進む白鳥のようだと言ったら笑われそうですね。

#コラム「キャリアコンサルタントって何をする人?」#11

❖ 「キャリアコンサルティング、キャリアコンサルタント」のことをもう一度考えてみるコラム「キャリアコンサルタントって何をする人?」(キャリなに?)は毎月15日に公開されます

キャリアのことをいろいろなテーマで「ゆるやか」に考えたコラム「ゆるキャリ」(全12回)のバックナンバーも併せてお読みください こちら

石崎 一記(いしざき かずき)

石崎 一記(いしざき かずき)

1958年7月埼玉県生まれ

1級キャリアコンサルティング技能士
カウンセリングルーム「ウサギのはらっぱ」主宰
埼玉県スクールカウンセラー
前東京成徳大学応用心理学部教授

平成14年度より23年度まで、厚生労働省キャリアコンサルティング研究会委員、同研究会各種部会座長等を歴任。
発達心理学の視点から、働く人の伴走者として幸せづくりのお手伝いをすることに取り組んでいる。
What a Wonderful Worldの世界の実現がライフワーク。

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