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マンスリーコラム

2024年6月号

【ゆるキャリ】第5回 なぜ、「ひろゆき」が支持される?その① ひろゆき氏を賢者と崇めるZ世代

■ 「2ちゃんねる」ってご記憶にありますか?

突然ですが、あなたは「ひろゆき」についてどのようなイメージをお持ちですか?
彼が有名になったきっかけは、匿名書き込みサイト「2ちゃんねる」。匿名というのが良かったのでしょうか、多くの人が日頃から溜め込んでいたモヤモヤや鬱憤、悪口を吐き出す「毒出し場」としても使うようになりました。

もちろん、毒出し専門に作ったわけではありません。2ちゃんねるというフィールドで、映画「電車男」の元ネタにもなった「ちょっといい話」もありました。困っている人がいて、助けようとする人がいて、そしてハッピーエンドで...、何だかちょっと感動しますね。
また、企業や組織が「内緒にしておきたい情報」や誰かにとって「不都合な真実」も匿名だから書き込めます。もちろん「ガセネタ」もたくさん転がっているわけですが、「隠蔽」についての価値観を変えるきっかけにもなりました。

2ちゃんねるの評価はさまざまですが、私たちの「何か」を変えたことは間違いないでしょう。

■ マツコ・デラックスの次に相談したい有名人

その2ちゃんねるを作ったのがひろゆき氏です。特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会が実施した「キャリアを相談してみたい有名人」についての調査(「相談するということ実態調査2023年」)では、固有名詞が挙がった方としては、なんと、ひろゆき氏がマツコ・デラックスさんに次ぐ支持を集めました。

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いま、彼はZ世代とされる方々から多くの支持を集めています。Z世代とは概ね1990年代後半〜2010年に生まれた世代です。2024年の今でいうと、20代の方のほとんどと30歳前後の方々がここに含まれます。
ひろゆき氏の支持のされ方としては、TVの地上波に彼が登場することは少ないのですが、AbemaTVなどネットメディアでは賢人扱いです。ネット上では彼の発言が大きく取り上げられ、その余波は「東洋経済」や「週間ダイヤモンド」などビジネスパーソンをターゲットにしたメディアにも及んでいます。調査の結果は、このことが反映されたのだと思います。
ここでは、ひろゆき氏が相談したい人として支持される理由を考えることで、キャリアの相談とは何なのか探ってみたいと思います。

■ Z世代のホントのホンネとは?

まずは、ひろゆき氏を支持するZ世代とはどういう世界を見ているのでしょう?彼らが生まれてから今日まで、良く知られているように、日本経済の失われた30年と呼ばれる時代が続いてます。ここで「失われた」と言われているのは経済成長です。ですが、心理学者の私から見ると、日本ではもっと大事なものが失われているように見えます。
さて、心理学者が考える経済成長以上に大事なもの...、あなたは何だと思いますか?その答えをご紹介する前に、今の20代の意識調査を2つご紹介しましょう。
一つは「転職サイト比較plus」が2022年に20代を対象に実施した「出世欲」に関するアンケート調査 です。この調査によると約80%の20代が「出世したくない(役職者になりたくない)」と答えています。その理由は大きくは2つで、「責任のある仕事をしたくない」と「プライベートを大事にしたい」が大部分を占めているようです。要はZ世代とされる人たちは仕事で責任や権限のある立場について組織や社会に貢献することに価値を見出さず、好きなことをやっていることに意義を見出す傾向が見えてきます。
そしてもう一つのご紹介したい調査は、Re就活がプロデュースする「20代の働き方研究所」が2023年に行った調査 です。この調査も20代を対象にしていますが、なんと約半数がFIRE(Financial Independence, Retire Early:経済的に自立して会社を早期リタイヤすること)に興味を持っているという結果になりました。この調査を信用するならば、あなたが一緒に仕事をしている20代の2人に一人が「FIREできたらいいなあ...」と思いながら仕事をしているということになります。

■ Z世代の絶望

さて、2つの調査を併せて考えると、かなり鮮明にZ世代の職業キャリアに関する意識が見えてくることでしょう。Z世代の大半は本音では、勤め先で責任を持つことを嫌がり、役職者なりたくないどころか「そもそも会社勤めなんかしたくない」、「会社生活に人生を取られるより、自分の人生は好きに使いたい」と思っているらしいのです。
もちろん、どちらの調査も独自のリサーチ方法を取っています。その影響で、回答者には何らかのバイアスがかかった可能性はあり得ます。とは言え、この結果はZ世代の実体の一端を表すと言えるでしょう。
失われた30年で私たちが失ったもの...、心理学者の私が思うに日本では若者の働くことへの意欲も失われているように思えます。
もちろん、意欲的な若者もいないわけではありません。しかし、会社の業績が上向いても賃金に還元しない、年金保険料を払って高齢者の暮らしを支えても自分たちは支えてもらえない、稼げば稼ぐほど税金と社会保障費を絞り取られるだけ...、事業ライフサイクルが短い現代においてこの仕事はいつまで続けられる...、などなど、社会は若者の働く意欲を削ぎ落とす要因に溢れています。
 そんな、夢や希望を持ちにくいZ世代にとっては、これまでの価値観や常識を覆してきたひろゆき氏は「新しい幸せを教えてくれるかも」という希望の星に見えるのかもしれません。

 さて、今回はひろゆき氏を賢者と崇めるZ世代について解説させていただきましたが、次回は「ひろゆきは何を壊し、何を創造したのか」考えてみましょう。ここから、現代社会で必要とされている「キャリアの相談」の深層が見えてくることでしょう。どうぞお楽しみに!!

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杉山 崇(すぎやま たかし)

杉山 崇(すぎやま たかし)

神奈川大学 人間科学部 人間科学科 教授
神奈川大学大学院 人間科学研究科人間科学専攻(臨床心理学分野演習担当教員)
専門分野:臨床心理学(心理療法・異常心理学・うつ病学), 産業社会心理学・キャリアコンサルティング, 感情・認知パーソナリティ心理学
学習院大学大学院人文科学研究科にて心理学を専攻。在学中から、障害児教育や犯罪者矯正、職場のメンタルヘルス、子育て支援など、さまざまな心理系の職域を経験した。
幼稚園児から高齢者まであらゆる年代のあらゆる心の問題に立ち会ってきた雑草系臨床心理士。並行して人づきあいと心の健康の研究を行い日本学術振興会特別研究員として国費の助成を受ける。
長野大学専任講師、山梨英和大学准教授などを経て、2013年から現職。
現在は、脳科学と心理学を融合させた次世代型の心理療法の開発・研究を行っている。

【杉山崇の目指すもの】
心理学でみなさんがハッピーになるお手伝いをしたくて,心理学研究者/心理療法家を目指しました。
人生は,みんな一人分いただいています。
必然的に,生きていける人生と,生きていけない人生が発生します。
現代社会では,何を生きて,何を生きないか,決めるのは私たち自身です。

自分で決められる現代社会(基本的人権とかいうもの)に感謝するとともに,
自分で決めなければいけない負担も私たちは背負っています。
ここから現代的な格差が生まれてきます。

こんなことを考えていたら,いつの間にか心理療法の仕事にたどり着いて,心理学の研究者をやっていました。
人生を楽しみたおすコツ,世の中をより生きやすくするコツご一緒に探しましょう。

コラムの感想等はこちらまで(協議会 編集担当)

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