キャリアコンサルティング協議会は国家資格「キャリアコンサルタント」の試験機関および指定登録機関と、国家検定「1級・2級キャリアコンサルティング技能検定」の指定試験機関です。

マンスリーコラム

2025年12月号

【 キャリなに? 】#5 「質問はしてはいけない」

私がキャリアコンサルティングをしているところをご覧いただいた方から、「質問をしてもいいのでしょうか」と尋ねられたことがあります。答えはもちろん、「構いません、必要があれば質問しますよ」でしたが、少し気になって、なぜそんな確認をされたのかお尋ねしました。すると、養成講座の講師の先生からそう言われて、してはいけないものと思っていたので驚いた、とのことでした。

質問はとても強い働きかけです。少しくらい答えたくないからと言って訊かれたことに答えずにパスっ!とは言えません。「どんな意図でそういった質問をされたのでしょうか」と質問で返すことも難しそうです。結局答えたくなくても自分の気持ちを抑えて訊かれたことには答えることになるわけです。それが、クライエントの問題把握や状況の理解に役立ち、面談が進むもの、ではなく、キャリアコンサルタントの個人的興味に基づくものならば、するべきではありません。講師の先生は質問自体を禁じたのではなく、そういった質問を戒めたのかもしれません。しかし、質問はしてはいけない、しないほうがいいと思っていたこのキャリアコンサルタントの方は、今までずいぶん窮屈な思いをされていたのだと思いました。

質問は、一義的には不明の点を明らかにすることがねらいの働きかけです。話の中でぼんやりしているところ、はっきりしないところを明確にして、共有できるようになることが期待されます。しかし、それ以外にも、これから話題にすること、今からやり取りをするテーマを示す効果もあります。また、話の流れの中で、重要な点を指摘する意味もあります。こういった場合は、答えてもらうこと、答えた内容以上に、その点に着目して振り返り、考えることに意味があります。質問によってテーマを示し、共同作業を進めていくイメージです。当然そこでは、その質問の意図はクライエントにも伝わり、単に答えるだけでなく、そのテーマについて考える姿勢が期待されます。

意図が明確でないまま質問を繰り返すと堂々巡りが起こります。今困っていることはどんなことで、それに近づいていくために何を考えていくことが必要なのか、に基づいてなされた質問は話が進んでいきます。しかし、それがないまま単に不明の点を訊いていっても、広がりも深まりもせず同じことを何度も訊くことになるのです。

意図が十分に伝わらないで、キャリアコンサルタントの考えや興味に基づいて質問をして、状況の確認をしていこうとすると、まるで尋問のような一問一答が続いてしまいます。「訊かれたことには答えますよ」、はやがて、「納得できるいい解決策をお願いします」となり、考えるのはキャリアコンサルタント、この解決策を評価するのはクライエントという関係を生み出すことも起こります。

まるで言質を取るためのような唐突な質問を見たこともあります。「ちなみにどなたかに相談されましたか」これは「相談していない」と答えるとコミュニケーション不足があると推論するための質問なのだそうです。

以前このコラムでも話題にしましたが、「気持ちは主観的な体験であるから推測しても決してわからない。しかし、気持ちに触れないといけないのであれば、質問をすればいい」という考えもあるようです。傾聴の中では、「気持ちは主観的だからこそ、あたかも自分が体験したことのように理解する」という姿勢が大切にされていますが、その考えには与しないということなのでしょう。配偶者をなくされたシングルファーザーの方に、「亡くされた時どんな気持ちでしたか」と訊かれたのを目撃して、悲しくなったことを思い出します。

質問の基本は、クライエントが答えたい、話したいと思うことを訊くことです。クライエントをよく理解して、「よくぞ訊いてくれました」と言ってもらえるような質問をしたいと思います。

#コラム「キャリアコンサルタントって何をする人?」#5

❖ 「キャリアコンサルティング、キャリアコンサルタント」のことをもう一度考えてみるコラム「キャリアコンサルタントって何をする人?」(キャリなに?)は毎月15日に公開されます

キャリアのことをいろいろなテーマで「ゆるやか」に考えたコラム「ゆるキャリ」(全12回)のバックナンバーも併せてお読みください こちら

石崎 一記(いしざき かずき)

石崎 一記(いしざき かずき)

1958年7月埼玉県生まれ

1級キャリアコンサルティング技能士
カウンセリングルーム「ウサギのはらっぱ」主宰
埼玉県スクールカウンセラー
前東京成徳大学応用心理学部教授

平成14年度より23年度まで、厚生労働省キャリアコンサルティング研究会委員、同研究会各種部会座長等を歴任。
発達心理学の視点から、働く人の伴走者として幸せづくりのお手伝いをすることに取り組んでいる。
What a Wonderful Worldの世界の実現がライフワーク。

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